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「アバター近藤が解説する業界史~逆タイムマシン経営論469」

みなさん こんにちは アバター近藤です。

「逆タイムマシン経営論」として、業界唯一の経営情報誌であるフィットネスビジネス誌のバックナンバーを引用しながら、それぞれの年のトピックスや記事について、示唆することは何かをアバター近藤なりに解説していきます。

「歴史に学ぶ」とは良く使われる言葉ではありますが、フィットネス業界史について、詳細に検証した文献は恐らくないと思いますので、これから良い歴史を作るために何かしらのお役立てになれば大変うれしく思います。

~Fitness Business通巻第11号(2004.3.25発行)「コラボレーション」9~※名称等は当時、一部文章省略

5.コラボレーションの実際

(1)病院・医師とのコラボレーション

クラブと病院・医師とのコラボレーションではスポーツプレックス・ジャパンも先進的かつ積極的な取り組みをしている。
クラブの入居するビルにクリニックを付帯し、医師と連繋して患者(顧客)をケアするスタイルは、同社が2001年11月に開業した「SPJ荻窪」からとっていて、確実な成果が出ている。
荻窪店は現在3,400名の会員を抱えているが、このうち7%にあたる約240名(ハイリスクのお客様)がクリニックからの紹介により会員になっている。
この会員群は退会率が極めて低くなっている。

同社はクリニック付帯の効果が確認できているため、全てのクラブにそれを設置していきたいと考えていたが、営業継承などにより新たにチェーンに加わったクラブは、物理的な制約から併設できないところもあった。
そうしたクラブにどのようにメディカルの機能を導入していくかという課題を同社はITにより解決しようとした。
ITを活用することで、そうしたクラブの会員に対しても、遠隔地から医師がカウンセリングをスムーズに提供できるようにしたのだ。
これは同時に医師の生産性アップにも大きく寄与することに繋がった。
この仕組みはシンプルで、分かりやすく言うと、英会話スクールの「NOVA」や総合ディスカウント店の「ドン・キホーテ」が活用しているようなWeb利用のテレビ電話システムを用いて双方向でコミュニケーションを図るのである。
だがそのポイントはこのITを活用したシステム自体にだけあるのではない。
予約~診断方法、カウンセリング時に画面に表示される帳票の編集フォーマット、フィットネスに精通した医師の3要素がきちんとしているところにある。
同社はこれらをシステム化して「メディフィット」と名付けている。

診断は主にコンピュータに対座し、タッチパネル方式で行う問診(全30~40問)、採血診断(リージャー製)、体成分分析により行われる。
結果はとても分かりやすく編集され、コンピュータ画面上にビジュアライズされて表示される。
これを会員が対座するモニターの向こう側から、自らもフィットネスの指導をしていて、しかも運動処方に詳しい医師がきちんと説明するのである。
この時のモニターには、医師と会員の顔、それに編集済みの帳票が写し出されるようになっているわけだが、この画面には医師と会員のコミュニケーションを確実なものにするため指先でマーカーが付けられるなどの機能が備えられている。
また同社は、会員のプライバシーに配慮し、こうしたコミュニケーションを行う専用の「リ・コンディションルーム」(約20坪)を用意している。
同社はこのサービスを新規入会者のうち希望する会員に年1回限り無料で提供している。

2003年4月に開業した「SPJたまプラーザ」は現在2,700名の会員が在籍しているが、うち36%が入会時にこのサービスを受けている。
サービスを受けた会員群(50~60代が中心、男女比35:65)の開業から8ヶ月までの退会率はほんの0.7%である。
医師によるカウンセリングの効果のほどがよく分かる。
Web上でカウンセリングの予約もできるというこのテレビ電話システムの開発に要した費用が1,000万円程度というからコストパフォーマンス的にも優れている。

~ここまで~

記事に出ているスポーツプレックス・ジャパンはわずか8年で、コナミスポーツに譲渡され、消滅してしまった為、事業的には上手くいかなかったと評価されます。

恐らく当時のIT運用コストやIT技術レベルの問題、医師への委託料含めた高コスト構造を支える割高な月会費などの要因で、損益分岐点を超える会員数維持がままならなかったのではないかと推測されます。

ただ取り組み自体は理にかなっており、パンデミック下で議論された遠隔診療の機運やITコストの軽減によって、現在であれば、うまく運用できる可能性を秘めたコラボレーションであったと歴史的には評価できるのではないかとアバター近藤は考えます。

本日もお読みいただきありがとうございました。


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