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【超短編】透明人間



とうとう完成した。



これが『透明人間になれる薬』だ。



透明人間になったら何をしようか。



どこからかお金を盗んだり、あんな事やこんな事も出来る。



どれも犯罪まがいの事だが、それが浪漫というものだろう。



そのために、10年間、寝る間も惜しんで研究に没頭し、やっと出来たのがこの薬だ。



仕組みは簡単である。



体の細胞全てが光を反射させず、屈折させずに通してしまうため、透明になる訳である。



では、そろそろ飲もうか。



私は薬を飲み干した。



見ていると、胃の辺りから徐々に透明になって来た。



全部透明になったら何でも出来る。



楽しみだ。





そんな事を考えていると、突如光に包まれた。







盲点だった。







全ての細胞が光を通してしまうという事は、角膜や水晶体や網膜に至るまで、見るために光を取り入れる部分までが透明になってしまうという事に気づかなかったのだ。




私は目が見えなくなった。




やりたかった事のほとんどは、目が見えてこそだったのに。




誰にも見えないし、何も見えない、世界一孤独な人間になってしまっただけであった。







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