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【マネジメント】社内アンケートが、逆に「チームの空気」を悪くする!?

こんにちは。
フォレスト出版の森上です。
 
現場に入って、目標を絶対達成させる超人気コンサルタントとして知られる、アタックス・セールス・アソシエイツ代表取締役社長の横山信弘さんは、「組織を変えよう」と思ったときにとってしまいがちな「間違った対策」があると言います。
 
その間違った対策の1つに「社内アンケート・意識調査」を挙げています。
 
アンケートを通じて、構成メンバーの意見を吸い上げることによって、その意識や意見を取り入れたマネジメントに生かしていく。実に理想的にも思えるこの対策ですが、そのやり方や、そのアンケートを実施する側の設問設定や回答に対する洞察力不足で、逆にチームや組織の空気を悪くするケースが多いと言います。
 
具体的にどういうことなのか?
 
横山さんは、著書『「空気」で人を動かす』の中で間違った「チームの空気」対策を複数紹介しているのですが、今回は、その間違った対策の1つ「社内アンケート・意識調査」について解説している箇所を一部編集して公開します。
 
▼【参考】間違いだらけの「チームの空気」改革対策①――「にわかコーチング」

アンケート・意識調査の実施──間違った対策②

 行動変革が物足りないチーム構成員たちに、「組織診断」「意識調査」と称したアンケートを実施する企業も多いようです。コーチングと同じく、もしアンケートを実施するのであれば、経験豊富なプロに任せるべきです。
 例えば、以下のような設問があったとします。
「今の仕事にやりがいを感じているか?」
 5段階評価で「3」にチェックをした人がいたとします。
 なぜ「3」にチェックしたのか?
 答えは「3」にチェックしたからです。なんとなくそう思ったからであり、明確な理由はありません。チェックしてから、その理由を探すのです。
 なぜ、自分は「3」にチェックしたのだろうか。今の仕事にやりがいを感じていないのだろうか。確かに、そんな気がする。それはどうしてだろう? 若いときから自動車が好きで、自動車関連の会社へ行くつもりだった。にもかかわらず、知人のすすめで金融関係の仕事を始めた。そこに問題があったのだろうか……。
 このような作話が始まります。
「会社の理念やビジョンに共感を持てますか?」
 このような設問に「2」とチェックしたとします。
 なぜ「2」にしたのか? 単純に、理念やビジョンのことをすぐに思い出せないからかもしれません。
 追い打ちをかけるようにこんな設問があったとします。
「会社の理念やビジョンをいつも覚えていますか? 覚えていないという人は、それはなぜですか? 文章で記入してください」
 え? なぜ覚えていないか、だって?……うーん、どうしてだろう。なんて書けばいいんだ? 「単に覚えていなかっただけです。申し訳ありません」などとは書けない。会社の理念やビジョンは社長から何度も言われているので、自分の意識が低いからなのかもしれない。なぜ意識が低いか……。うーん。何だろう? 強いて挙げれば人事考課か。自分は生え抜きなのに、途中から入社した人のほうが評価が高いと、やる気を失う。そういうことなんだろうか。
 答えがないものを探し始めると、中途半端な理屈を探し当てたりするようになるのです。特にチームの状況が悪い場合、このような意識調査をされると、
「意識調査アンケートか……。何が言いたいか、わかってますよ」
 と、ネガティブに受け取る人が多くなります。
 ネガティブに受け取った人が、アンケートの設問によって中途半端な理屈を探し当てると、士気は逆に下がっていきます。

アンケート調査が、逆に空気を悪くする!?

 アンケートで意識調査し、それを集計して、チーム構成員の意識レベルが低いとわかると、リーダーや幹部クラスは「やっぱりな」と思うでしょう。
「これほど意識が低いとは思わなかった」「この状況を社長に報告しなければ」と感じるに違いありません。
 私は現場に入り込むコンサルタントです。コンサルティングに入る前に、よくこのような調査結果を見せられることがあります。そして、
「横山さん、当社の従業員はとても意識が低いことは、こちらのアンケートに目を通していただければ一目瞭然です。なぜ後ろ向きにしか考えられないのか、その原因を突き止めてもらいたいと思います」
 このように言われることが多々あります。
 一応、言葉では「かしこまりました」と返事をしますが、原因の追及などしません。私がコンサルティングする理由は、原因追及ではありません。結果を出すことです。それに、存在しない原因など探し始めても、私自身が「作話」しなくてはならなくなります。
「意識が低い」「やる気が見られない」
 このように見られているチームにばかり、私は入っていきます。
 しかし、何事も「現地現物」です。ペーパーの束でチームの状況を正しく理解することなどできません。
 実際に現場へ入ると、意識レベルが著しく低いチームと遭遇することはあります。ただ、それは稀なケースです。
 多くの場合は、アンケート結果と実態がかけ離れていることが多いのです。
 それに、意識が低かろうが、行動を変えることはできます。行動が変わることにより成果が生まれ、成果が安定的に手に入ることで「場の空気」が変わっていきます。
 以前、こんなことがありました。ある企業にコンサルティングに入り、1年ぐらい経過した後、従業員の皆さんと飲みに行きました。そのときに、経営企画室の人が、
「お前ら、1年前はこんなアンケートを書いていたの、覚えてるか?」
 と言って、そのアンケートを1人ひとりに配ったのです。
 そのアンケートを見た従業員の皆さんは、
「え〜! こんな調査、あったっけ?」
「提出した覚えがない」
「深く考えずに書いた覚えがあります」
 などと、口々に言います。当時は「場の空気」が悪かったため、意識調査に対する姿勢も真剣ではなかったということです。
 こういった発言を聞いた企画室の人は、「お前ら、そのアンケートを見て、社長はかなり落ち込んでたんだぞ。知ってたか?」とこぼしていましたが、こんなものです。
 にわかコーチングと同じです。アンケートによる意識調査は、意味がないどころか「場の空気」を悪くすることさえあるのです。
 もしどうしても実施したいのなら、せめて専門の会社に任せるべきでしょう。

いかがでしたか?
 
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