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ファッションビジネスに変革の風を。~新時代を共創するブランドコラボレーション~【O0u+MOONRAKERS】

FRACTAではブランドの持続的な成長における活路として本質的なブランドコラボレーションの可能性を探っています。
今回は大手ファッション企業から生まれたブランド「O0u(オー・ゼロ・ユー)」と大手素材メーカーから生まれたプロジェクト「MOONRAKERS(ムーンレイカーズ)」によるコラボレーショについて、FRACTA 新規事業開発室の狩野がMOONRAKERS 代表 西田誠さんO0u 営業部長 穂積さんへ深掘りインタビューを実施。
FRACTAとプロジェクトをともにしてきた2社だからこそ話せるリアルな言葉と熱意、そこから見えてきた大企業変革へのヒント、ひいては社会をも変革するその先進的な取り組みについてお届けします。


MOONRAKERS 代表 西田誠さん(写真左)とO0u 営業部長 穂積さん(写真右)

O0uとMOONRAKERSとは

狩野:まずはそれぞれどのような想いをもつブランドなのか教えてください。

穂積さん:O0uは、2021年3月にアダストリアグループからサーキュラーエコノミーの実現を目指して設立した子会社ADOORLINK(アドアーリンク)からスタートしたライフスタイルブランドです。素材の選定や製造工程、販売後のサポートに至るまで、あらゆる段階でサステナブルな観点を取り入れています。個別よりもユニバーサルに、多様性に加えてそれを包み込むやさしさを持ち、自身が服に合わせるのではなくありのままの自分自身に合わせることを価値観に持つ、地球にも自分にも誠実でやさしいブランドです。

西田さん:MOONRAKERSは、「先端テクノロジーによる未来のファッション」の創造を目指すプロジェクトです。最新の先端素材とみなさまの生活をダイレクトにつなぎ、快適で便利で美しい「ミライの生活」を提供することを目指しています。東レグループのアパレル事業会社であるディプロモード社が、東レグループ各企業と世界に誇る技術を持つ日本の繊維有力企業メンバーと連携して既存の繊維・ファッション業界の抱える問題点に正面から向き合いそれらを解消した未来図となる「モデルケース」の創造に挑戦しています。

狩野:今回のコラボレーションに取り組んだ2ブランドはFRACTAもかねてより繋がりがあり、事業を推進されるお二方はまさに推進者ならぬ挑戦者でもあると捉えています。本日はぜひお二人からコラボレーションという形の新たな挑戦について、赤裸々なお話を伺いたいと思っています。

コラボレーションでこそ生まれた意外性を持つプロダクト

狩野:早速ですが、まずは肝心なコラボレーションの象徴ともなるプロダクトについて教えてください。今回のコラボレーションは、O0uのデザイン性とMOONRAKERSのもつ高機能素材「MOON-TECH®(ムーンテック®)」をかけ合わせたアイテムを販売されるそうですが、実際のコラボレーション商品について改めて教えていただけますか?

西田さん:まず、素材となるMOON-TECH®ですが、これは東レの最新の先端素材である「Fieldsensor®EX(フィールドセンサー®EX)」をベースに、JAXAと東レが共同開発した極限の環境である宇宙空間でも快適に過ごせる宇宙技術も搭載し、合計12個もの「過剰なほどの機能性」を持つ素材です。

穂積さん:今回のコラボでは、そのMOON-TECH®素材を使用することで、吸汗、速乾、消臭、防汚、汗ジミ防止、抗菌、UVカット、ストレッチなどの機能性で日常で感じる不快感を軽減し、加えて洗濯やアイロンなど面倒なお手入れの手間暇も減らし、快適で便利な生活をユーザーに提供するジャケット・パンツ・Tシャツのセットアップ商品をつくりました。機能性だけでなく、とても仕立て映えする素材で美しい商品にもなったと考えています。

狩野:仕立て映えというのは?

西田さん:MOON-TECH®は軽量性やストレッチ性は非常に高い素材ですが、一方で適度な肉厚と一定の張り感を持ちます。この特殊な素材感で、Tシャツなどでも非常に心地よい着心地ですが、ジャケットやパンツなどで使用した場合でも縫製が非常に綺麗に仕上がり、見栄えが非常に良いのです。ジャケット見えするけど、着心地はカーディガンのような感じというとイメージしやすいかも知れません。MOONRAKERSの素材開発では、快適性・利便性はもちろん最も重視しているポイントですが、一方で美しい商品になることも同様に非常に重視しています。

穂積さん:ミニマルなかっこよさと着心地が共存するものを作り上げたところに、今回O0uが取り組んだ意義があると感じています。このアイテムさえ持っておけば日々を快適に過ごせるというものを作らせていただきました。「Dailywear meets Technology(デイリーウェア・ミーツ・テクノロジー)」という感じでしょうか。信頼できる素材でつくられているので、シワになりにくかったり汗じみができにくかったりと、その機能性のおかげで毎日でも着ていただけますよ。

西田さん:今回はO0uさんの素晴らしいデザインもあり、MOONRAKERSのベーシック/スタンダードな商品とは異なる「快適で便利で楽なのにファッションとしても非常にカッコよく見える」アイテムになったと感じています。MOONRAKERS的に表現すると、「無敵のセットアップ」と言う感じですかね(笑)

異なる視点が交わり発現する化学反応。

狩野:今回のコラボレーションで得た新たな気づきなどはありましたか?

西田さん:今回のコラボレーションによって生まれたのがMOON-TECH®の裏面の「濃色」の活用でした。合繊素材というのは、どうしても色の濃度が出にくい特徴があるんです。特に「MOON-TECH®」は表面に汗ジミ防止の特殊な原糸を使用しているのですが、その特性で黒でもやや浅めのチャコールのような色合いが限界です。だけどコラボ商品の試作品が上がってきて、O0uのみなさんに「裏側のほうが濃いんですね。こっち表に使えないんですか?」と言われて。
秋の商品だから汗対策をそこまで意識しなくてもいいのでは?となったとき、じゃあファッションとしての完成度の高さを優先しようと。MOONRAKERSだけでは生まれなかったアイディアで、これぞコラボレーションの妙味だと思います。

穂積さん:今回の「O0u+MOONRAKERS」コラボレーションでは、特別に濃色が表になるように使っていただきました。そこに気づけたのも、O0uはブランドの軸にミニマル・モードカジュアルを定めていて、白と黒の明度がブランドにとって非常に大切な要素になるということもあります本来は真っ白、真っ黒でありたい。でもうちも再生ポリエステルを使っている素材は基本色が浅いんですよ。ネイビーにも見える色なのでなかなか真っ黒とはいかない。それを西田さんとも話していて、ふと裏側をみたときにみんなで「あれ、こっちの黒すごく良くない?」という感じで。

西田さん:僕たちも確かにいいなと思ったので、いまは黒の濃度をさらに上げる開発を進めています。しっかり意識してテーマを明確化して取り組むことで、技術サイドも挑戦しやすくなるんです。お互いがコラボすることで新たな気づきを得て、そこからまた新たな開発の方向性や新しい商品が生まれていくというのは、「共創」の素晴らしさを感じる瞬間ですね。

狩野:コラボレーションの試作品から出たのは、まさに化学反応ですね。

穂積さん:それぞれ得意分野が尖っている二つのブランドが出会ったら飛躍的に良くなったという、コラボレーションとしてけっこう典型的だとは思うんですけれど、でもやっぱりそのケミストリーが生まれた瞬間は盛り上がりますよね。

狩野:偶然の発見でもそれをすぐに行動に移して採用できるのは、やっぱりイノベーティブな2ブランドだから可能なことだなと感じます。

価値観の共鳴からはじまるコラボレーション

狩野:今回のコラボレーションのきっかけはどんなところにありましたか。

穂積さん:コラボレーション自体は自然に始まっていった、という感覚です。現アドアーリンク 取締役で当時O0uのマーケティングディレクターを勤めていた高橋から西田さんを紹介してもらったんですが、初めてお会いして話したときに、ブランドの規模だったりスタンスだったり、はたまた営業畑出身の人間ということやおしゃべりなところとか。笑 とにかく共感できる部分がとても多かったんですよね

西田さん:会って話を重ねるたびに「そこも一緒なんだ」という共通項がみつかって。やりたいことが殆ど一緒だね!という実感が積みあがることで期待感も広がっていきましたね。特に価値観への共鳴は、コラボレーションしていく上でも非常に大きなポイントでした。

穂積さん:今回MOONRAKERSさんのショールームでお話ししていますが、ここは私が西田さんの熱意に感化されて一緒に取り組みたいと思った始まりの場所でもあるんです。

西田さん:感化(笑)よく教祖っぽいとは言われますが(笑)。

先ほど穂積さんからも話がありましたが、僕がO0uさんとして最初にお話ししたのはアドアーリンクの高橋さんでした。印象的だったのは「先端技術の開放」という思想に強く共感してくれたこと。
東レのような大規模な素材メーカーは生産に一定以上のロット数が必要なので、取引先も大手アパレルや大手小売り店というケースがほとんどです。

でも、ファッションビジネスって膨大な中小ブランドから成り立つ産業ですよね。ファッションビジネス全体をより良いものに変えようとするならば、大手とだけやっていてもだめだという思いもあり、そうであればまず自分たちの持つ先端技術/先端素材を誰にとっても使いやすいものに変えていけないかと考えていました。

小さいブランドからすると最新の先端素材を使うことがブランディングになりえる。僕たちとしてもそういうブランドに素材を提供して、ある種のブランド支援をしていきたいと考えていました。もちろんそこには、「先端技術を解放することで、ファッションビジネス全体を変えていきたい」という自分の大きな夢も込められていました。

穂積さん:西田さんたちの”自分たちのもつ要素を必要なところに必要な分だけ届ける”取り組みをみて、まさにやりたいことを具現化している!と感じました。無駄を省く、サステナブルな仕組みをつくることがO0uのコンセプトなのですが、それを最も体現する取り組みは受注生産。最終的にはほしいと言われたものをほしい分だけつくる事業をやりたいと考えています。

私たちはD2Cブランドと言われることも多いですが、一方で母体が大きいゆえに何かをやりたいと思いついたとき素早く人員を揃えることが可能です。でもそれはD2Cらしさーー少数精鋭でやるべきことに集中することからは遠ざかってしまう。西田さんは大企業にいるのにD2C的な少数精鋭を貫き、細かい動きができている。そうした動きも見ていて、参考にもしたいし、ぜひ一緒にやりたいと感じました。

大企業からスピンアウトした挑戦者の成功例へ

狩野:2ブランドとも大企業からのスピンアウトというかたちでローンチしていますが、そうした背景も共感の多い一因ですよね?

西田さん:そうですね、大企業の新規事業担当者はみんなとても孤独です。大企業は管理基準が厳しいので、どうしても新規事業で新しいことをやると管理スタッフとぶつかり悩みます。大企業あるあるですね(苦笑)。O0uさんとも最初はそこで盛り上がりました(笑)

いまの日本は、海外に比べて新しい産業の創出が少ないと言われます。ベンチャーも徐々に増えてはいるけれど米中から比べるとまだまだ非常に少なく、その増加を待つだけでは日本は衰退しかねない。人とか技術のリソースを持つ大企業が変わることが必要だと感じています。

新規事業に挑戦しようとする人は、大企業変革におけるキーパーソンです。既存事業をやっていくほうがラクなのにも関わらず、そこであえて挑戦していく行動力と志のある人たち。そういう人を集めて、一緒に産業を始めるとか、異なる業種で共創するとか、新たなムーブメントが生まれる場をつくりたいなとも考えていて、このコラボレーションはその試金石だとも感じています。

狩野:彼らの熱量は非常に高いですよね。ゼロからのスタートアップよりも、スピンアウトのほうがビジネスのノウハウもありますし日本の産業を勢いづけるためには適任だと思います。親会社の七光りを使いつつ、アイデアなどは自分たちないしは同志でつくりあげていく手法は、日本のスピンアウト型のスタートアップが効率的に成長する鍵にもなりえますね。

西田さん:親の七光り。全然使ったらいいと思うんですよ。大企業はリソースの宝庫です。そこを使って新たな事業をつくる。それはゼロスタートよりも速く確率高く新たな産業を生む可能性があると感じています。後はスタートアップと同様の「社会をより良く変えていく」という熱量を持つことだけです。

個人的には考え方が共通している先であれば、どんどん一緒に事業を進めてもいいと思っています。まさしく「共創」ですよね。コラボレーションは一社でやるよりもできることがはるかに多いんです。そこがやっぱりコラボのいいところだし、逆に言うとコラボはそうあるべきなんじゃないかなと。

今回のコラボも最高の成功例にして「あれを真似したらいいんだ」「同じことをやってみたい」と思ってもらえるようにしたいですね。
先ほども申し上げたとおり、アパレル業界は膨大な数の中小企業の集まりなので、大企業だけが変わる、いちブランドが変わるというだけでは意味がない。全体が変わるためにはどうしたらいいのか、どうあるべきかを考えていく必要があります。

穂積さん:O0uは社会課題解決のために立ち上がったブランドですが、事業として始めたからには売り上げを立てなければならない。でも立ち上げ後数年の数値として現れるのは、親会社からするととても小さなもの。親会社の枠組みのなかで運営すればすぐに達成できる数字なので、前進していることが伝わりづらいんです。ときには後退しているようにすら見えてしまう。

西田さん:わかります。うちもPoC(事業化検証)の時期は同じでしたね。伸びていても数字が小さいと「こんなものか」と言われてしまいます。ましてや停滞、後退しているイメージになると大企業での新事業は即座に存続の危機を迎えます。
そこで対策でもないですが、「一週間でこれだけのことを仕掛けました」という趣旨で、毎週活動レポートを親会社に送って数値的な成果とは別に事業としては前進しているんだということを伝え続けていました。自分自身の思考整理やリマインダーにもなりましたし。
それをやることで「ああやれ、こうやれ」みたいな反応はなかったですね。逆に「一週間でこれだけ仕掛けるなんて超人的」と言われて、身体の心配をされてました(笑)。そして、実際に数字がついてくると周りの反応も変化していきましたね。

穂積さん:大企業ではすでにブランド運営の知見が豊富にあるので、社内にはなぜやっているのかが伝わりづらい部分があります。特に認知獲得や売り上げの達成などは親会社のブランドとして展開すれば解決しやすい問題なので。スピンアウトとしてやってみて、ゼロから売り上げをつくるのがいかに大変かを実感しましたし、なぜスピンアウトとしてやっているか、どんな想いでやっているのかは社内にも共有していきたいですね。

失敗を恐れない、挑戦することそれ自体が価値

西田さん:何かを始めるとき、失敗それ自体を恐れる必要はないんです。だって新事業は千三つと言われる世界で、1000の挑戦で997は失敗する世界。つまりほとんどが失敗するんです。

でも3つのとんでもない成功を生む可能性がある。いま「なぜ新たな産業が日本から生まれないのか?」とか言われてますよね。それは「失敗を悪」とする思想が原因ではないでしょうか。いま日本に必要なのは、新事業の健全な多産多死です。失敗を悪とする文化からの決別です。挑戦すること。そしてその結果を検証し次に活かすこと。それ自体に価値があるのです。

狩野:仮に挑戦して結果がうまくいかなかったとしても、そういう結果が手に入ったことに価値がありますよね。

西田さん:トライアンドエラーを高速で重ねることですね。それをいかに重ねて続けていけるかが大きいと思います。「これ売れそうだな」という感覚でヤマをはるようなやり方のほうが100倍怖いですよね。

狩野:スピンアウトベンチャーだからこそできる部分もありますよね。確実に成果を出すために綿密に設計するよりも、まずは出して反応を見てみるという考え方。

西田さん:従来型のアパレル事業において売上という成果を出すためには、在庫をつくる必要がありました。でもそれで売れなかったら、大量の在庫を抱えることになってしまう。ある意味ギャンブルビジネスですよね。従来のそうした世界観とは本当に決別したいなと思っています。今回公開したクラウドファンディングもそこからの脱却を意識しています。MOONRAKERSではこれまで最低限の在庫販売とクラファンを活用した受注生産販売を組み合わせて商品を提供してきました。この販売方法によって「定価でいいからすぐほしい」方には一般販売で、「数ヶ月先でも待てるからお得に買いたい」方にはクラファンで購入いただくことが可能になりました。

穂積さん:新しい選択肢ですよね。セールではないけどお得に買える。

西田さん:セールはファンをがっかりさせてしまうんです。定価で買ったものが2か月後にセールになっていたら「もうセールでしか買わない」って思っちゃいますよね。「お好きなほうを選んでください」と選択肢を提供するほうが、ファンに対して誠実だと思う。それに企業側も、それぞれの売れ行きをみて生産数量の調整もできるので、無駄な在庫も持たずサステナブルですよね。

また、現在では日本の縫製工場との取り組みで、2週間で補充生産を行う仕組みを構築しようとしています。これが出来れば必要とされるものを必要なだけ生産するという理想に近づけます。こういうシステムを組めるのも親会社の持つ強力なサプライチェーンの力だし、その七光りは活用しつつ、自分たちや一部の大企業だけのものとせず、多くのコラボレーション先にもそのシステムを解放し、使ってもらいたいと考えています。

最高のコラボレーションは、ブランドが集う場所の創出

狩野:実際にコラボレーションしてみてどう感じましたか?

西田さん:お互いの基本的なブランドスタンスが一緒というところはとてもやりやすかったですね。例えばトレーサビリティの観点から生産工程や生産地などを開示したいと提案したときに、自社から積極的に情報を展開したいと考えていないブランドもあります。それぞれのブランドのあり方なので、それ自体を否定するつもりはありませんが、そういうスタンスの食い違いというのはコラボをしていると非常に悩む場面です。その点、O0uとのコラボは考え方が同じなのでやりたいことにもフルパワーを出せるし、それぞれの未来に向かって伴走できるのが良いなと感じました。

世の中いろんなコラボがありますが、その一瞬で話題をさらい、その後はまた各々ブランドを運営していくことがほとんどだと思います。でもO0uとのコラボはずーっと伴走して、お互いに成長していけるコラボだと感じています。パートナーのようにその先の未来に向けて共創し続けるというのは、実はあまりない。意見の違う部分が出てきても、目的とする場所が一緒だからこそうまく補完できるところも強みですね。

穂積さん:O0uは今までもいくつかのコラボレーションをやってきていますが、継続的なものは少ないと感じています。そういう意味でMOONRAKERSとの取り組みはわたしたちの中でも特別なものです。それは西田さんのいう「目的とする場所が一緒」ということももちろんなのですが、今回の「Darkside of MOON-TECH®」のように、1+1=2のコラボではなく、一緒にやることでユーザーに渡せる価値観が3倍にも4倍にもなるような感覚が他にないものだと感じたからです。

先ほども少し話に出ましたが、やっぱり事業であるからには売れないといけない。でもMOONRAKERSとの取り組みでは、売上の結果よりも先に自分たち全員、企画から生産から広報にいたるまで全員が、次は何が生まれるんだろう?一緒に何を仕掛けられるんだろう?とワクワクしているように思います。

狩野:プロセスのトレードというのはコラボレーションならではですね。

西田さん:コラボレーションとは、違うもの同士が組み合わさって、新しい世界観を創ること。でも最高のコラボレーションは集う場所をつくれることなんではないかと思うのです。目指す世界が一緒でさえあれば、出入り自由で「あなたたちもおいでよ」と開かれている場所。それが生まれたら、今より絶対に良くなるはず。あらゆることを持ち寄って、それぞれのブランドが磨かれていって、より良い世界になっていくのが真のコラボレーション、「共創」の姿だと思います。

共創を通じて自社を見つめなおす

狩野:利用し合うのではなく、協力し合う。ネームバリューや大きい資産を利用して相手の存在を消してしまうのではなく、お互いがお互いの存在を対等に広めていける関係というのは非常に理想的ですよね。

西田さん:そのためにも目指す世界が一緒であるのは非常に重要です。世界観や思想に共感できて、コアになる部分に共通性があること。ブランド名をプリントするだけのようなコラボレーションはしたくないなと思っています。

狩野:いまの生活者は宣伝や広告に対して非常にセンシティブなので、ライセンスを利用するだけと捉えられてしまうと信頼を失いかねませんよね。

穂積さん:私は、今回のMOONRAKERSとのコラボレーションで自社の魅力や本来あるべき姿を見つめ直せたことに意味があったなと感じています。

西田さんは、もともと素材メーカー(BtoB)なのにすごくお客さま(BtoC)視点で考えられてるんですよね。自分がお客さまの感覚でものごとを見ている。私たちは最初から小売で、最初からお客さま視点のはず。でもそれをずっとやってきたからこそみえなくなってしまった部分があるなと、MOONRAKERSの展開をみていて気づいたんです。

長くファッションビジネスの世界にいると、ファッションビジネスの常識に染まってしまい、強いブランディングを展開しているブランドがかっこよく見えてしまったりする。一方でMOONRAKERSが、そうしたファッション文脈を一切気にせず、わたしたちの感覚から言うと過剰なほどのお客さま視点で一からお客さまとの関係を築いていくのをみて、本来やってきたはずなのにできなくなっていたことにもう一回気づいた、というのはすごく感じますね。

孤独を打ち破り、共創のムーブメントを巻き起こす

狩野:お二人は今回のコラボレーションをどう捉えていますか?

西田さん:仲間に出会えた喜び。これに尽きると思います。O0uもMOONRAKERSも大企業からのスピンアウトでの新事業という立ち位置でも、ファッションビジネスを変えていくという目標においても、まるで「双子の兄弟」のような存在です。

でも大企業組織の中でも、ファッション業界においても、ベンチャーの世界でも異端児であり、だからこそ孤独です。

孤独は非常に怖くて、前に進む気力を削いでいきます。今回のコラボレーションはそういった意味でも、自分たちにとってほんとうに重要なものになったなと感じています。

穂積さん:西田さんの意見に同感です。そしてこのコラボレーションの意義は、業界を変えるためには手を取り合うことが重要だという気づきと、ここに仲間がいるということを多くの悩める挑戦者に伝えていけることです。全体を変えるには小さなブランドも変わっていけるための場所と仲間が必要です。熱意に共感してくれる輪を広げて、ムーブメントにしていけたらと思います。

キーワードは「挑戦心」。世界を変える熱意の拡張

狩野:最後に、新規事業で奮闘しているブランド担当者へ向けて一言お願いします。

西田さん:僕たち2ブランドに共通しているのは挑戦の気持ち。いろんなブランドと話をしてきましたが、そうした挑戦心を感じられないことも少なくありません。特に大企業系で起きがちなのは「やらされてる感」。大企業の中でもしがらみやルールに捉われず進んでいけるかは、自分自身が挑戦する気持ちをもっているかどうかに帰結する気がしています。

僕たちは、ブランドの規模に関わらずこの気持ちを持っているならぜひ一緒に世界を変えていきましょうと伝えたいですね。

狩野:一緒に挑戦しましょう、ということですね。

西田:まさしく。個々の取り組みでできることには限界があります。日本において、かつての縫製業は家内制手工業でした。自宅で手仕事をして、家族もそれを手伝い、それを取りまとめていく人たちがいる。分業と協業の世界です。大きな工場なんてない時代に知恵を絞り、日本は日本ならではの産業を創ってきました。

でもいつしか日本は豊かになり、それぞれの企業も大きくなり、サイロのように単独で事業を行い個別企業最適のような形で角突き合わせるのが普通になってしまいました。そうした中で「共創」、ともに手を携え新しいものをつくる感覚が失われている気がします。

だからもう一度、一緒につくっていく必要がある。そのキーワードになるのが「挑戦心」だと思うんです。僕たちは常に門戸を開いているので、その心をもつ人たちはどんどん話にきてくださいと言っているし、目指す場所が一緒であればどんどん参加してほしいと考えています。

穂積さん:共創という観点で、今でこそアパレルブランド同士のコラボはよく見かけますが、これまではほとんどありませんでした。同じ業界の競合はまさにライバルであり、手を取り合うなんてことはなかった。同じ会社のなかですら、隣の部署が競合という状態でした。だからこそ気づかないこともたくさんあって。自分たちのやりたい領域が隣の部署の得意分野で、聞きたいけど聞けずに探り探りで進めるという非効率的なこともありました。何より、お客さまからしたら同じ会社から出ているブランドはどれも等しく好きという可能性も高い。だったら、そこが手を取り合ってくれたほうが嬉しいはずですよね。

今はブランドの境界がなくなってきていることもあり、その動きが広がっていると思います。コラボも挑戦の一つ。敵じゃなくて仲間として、業界全体で盛り上がるような取り組みをもっとフレキシブルにできるといいなと思います。

狩野:ひとつの会社、ひとつのブランドでの成長限界は絶対にあるという肌感覚は私にもあります。一社では当然さまざまな化学反応を起こすことはできない。だからこそ、成長限界を突破する手立てはコラボレーションにあるんだ、と改めて感じました。

穂積さん:アパレル業界自体も限界が近いのだと思います。今回のコラボでは、フレキシブルにお互いの強みをかけ合わせて商品も出せたと感じているので、柔軟性は非常に大切かなと思います。挑戦するにも、凝り固まった思考や方法は障壁になりかねないので。

狩野:挑戦は必ずしも一人じゃなくていいんだよ、と。

穂積さん:O0uが同じジャンルであるサステナブルブランドとコラボしたっていい。そういう垣根のない、フレキシブルな考えをもてるといいなと思います。

インタビューあとがき(FRACTA’s Perspective)

2ブランドはFRACTAがかねてからお付き合いのあるブランドでしたが、私達も今回のインタビューを通して、2社の新しい一面や更に深い内面を知ることができました。

このコラボレーションは2ブランドにとって、商品開発という言葉だけでは言い表せない多くの価値と成長要因を手に入れたように思えます。

特に、洋服に裏使いされていた生地への着目。こうした新たな発見こそ、一ブランドだけではなし得ないコラボレーションならではの視点の拡張です。また、商品改良に寄与するだけでなく、開発工程やブランド同士のコミュニケーション、双方のメンバーの交流など、多くの価値が内包されていることが伝わってきます。

コラボレーションの工程を共創するからこそ、知識や技術、経験やアイデアという様々な要素がブランド間で複合的かつ多発的に交わっていく。お互いを磨きあうような時間を経て、ブランドは短期的に成長因子を得ることができる。今回のコラボレーションでそのような共創関係が描けたのは、2ブランドの思想や挑戦する意思に親和性があり、共感という絆が互いを結びつけたからにほかならないと考えます。

革新技術を独占するのではなく、広く開かれたものとして普及させたいという想い。必要とされる洋服を必要な分だけ届けようとする想い。そのいずれもが丁度良く交わる交差点。ただものづくりを行うという以上に、考え・つくり・届ける人の想いが消化ならぬ昇華されたプロジェクトだと感じました。

ひとえにコラボレーションといっても様々な形式がありますが、今回はまさにFRACTAが考えるブランドとブランドのコラボレーションの象徴的な取り組みだといえます。ブランドが乱立する時代に競合として敵対するのではなく、同志として共創する未来を描くブランドに今後も注目していきたいと思います。

今回のインタビューを通してO0uとMOONRAKERSにご興味が沸いた方は、ぜひ以下より2ブランドの活動をご覧ください。

(撮影/ナルトン 由璃子 取材/狩野 雄 文/花沢 菜摘 編集/CSV局)


FRACTAはブランドの立ち上げから強化、DX、体制構築まで企業の成長に寄り添い伴走するトータルブランディングパートナーです。ブランドの挑戦をテクノロジー、クリエイティブ、ビジネスの力で支えます。

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