出産経験者か否か。カフェイン話題でもわかっちゃうのかもしれない。
#20231213-317
2023年12月13日(水)
エレベーターの扉が開き、人の流れに乗って下りようとしたところを攫われた。
「はい、お茶しに行くよぉー」
下りようとした私を乗り込んできた人たちが再度エレベーターのなかに連れ込む。そのスムーズで、かつ親しげな流れに思わず頬がゆるんだ。
ノコ(娘小4)をこのビルの上の階にある習い事先に預け、下りてきたところだった。
待機時間に近くでお茶をしようとした私をさらったのは、同じ習い事のクラスのママさんたちで上階へ向かうお子さんたちとはここのエレベーターホールで別れたようだ。このまま同じビルの下の階にあるフードコートへ行くという。
ここにいるママさんのお子さんたちは学年の違いもあって、後からノコのクラスに上がってきた。ママさんたちはお子さんが幼稚園もしくは低学年からのつきあいで、この輪では私は新参者になる。それでも気軽に接してくれるので、助かっている。
「下にフードコートがあるから、そこで子どもたちを待とうかと思って」
このビルは習い事で何度か訪れているが、毎週通っている場所ではないのでまだ勝手がわからない。
ありがたく、混ぜていただく。
めいめいが食べたいものを注文しては、陣取ったテーブルに戻ってくる。
習い事先のこと、それぞれの小学校の違い、子どもたちの家庭での様子。話は尽きない。
ママさんたちの年齢は知らないが、おそらく私が一番年上だと思う。
1人が体力の衰えを訴えると、年長らしき――といっても私よりは下だと思う――ママさんがふふふと悟ったように笑う。
「それは老化よ、ロ・ウ・カ」
「えええええ、そうなのかなぁ」
相手が慌てふためくと、早くこちら側へいらっしゃいとばかりに笑みを深めた。
コーヒーが飲みたい。
ママさんたちと過ごすのは嬉しいが、1人ならカフェインレスコーヒーを扱っているカフェへ行き、飲むつもりでいた。フードコート内を見回すがカフェインレスコーヒーを扱っている店舗はなさそうだ。炭酸飲料は飲みたくないし、カフェインレスとなるとコーヒーはもちろん紅茶やウーロン茶もダメだ。
一歩外に出ると、結構飲むものに困る。
眠りの質がどうこうという話題に移っていたので、カフェインレス生活をしていることを口にした。以前はいつ何時コーヒーを飲んでも睡眠に支障がないと思っていたが、いざカフェインを遠ざけた生活をした上でカフェインを摂ると影響があることがわかった。
「夕方とかにコーヒーを飲んじゃうとね、夜眠いんだけどなんだか頭の芯だけが冴え冴えしている感じがするんだよね」
充電タイムの入浴時以外、腕につけているフィットネストラッカー(Fitbit)で睡眠の質がわかるが、やはりカフェインを摂取した日の睡眠スコアは低く出る。
「前は夜コーヒー飲んでも眠れないなんてことなかったんだけど、カフェインを摂らなうようにしたら、かえってカフェインの効き目がわかったよ」
睡眠の話になっていたので、コーヒー飲みたさもあり、カフェインの話をしたが、ふと話してから出産体験者はすでに実感していることではないかと思った。
妊娠中はカフェインを控えるよう、医師からいわれただろう。ここにいるママさんたちは望まない妊娠をしたわけではないと思う。それなら、妊娠期間はお腹の子を想って、さまざまなことに気を配って暮らしていたに違いない。
いや、妊娠による自身の体調の変化もあるし、カフェインだけでなく、お酒(アルコール)や煙草(ニコチン)などの嗜好品も控えただろう。たくさんのことを変えたことで、生活習慣のどれを変えたからという関係性がむしろわからなくなったかもしれない。
今の私のようにほかのことは変えずに「カフェインを抜いてみた」→「こんなふうに変化した」と気付けなかったかもしれない。
カフェイン抜きの生活を体験したものの、カフェインだけを見ていたわけではない。
そのせいか、「確かに妊娠中、そうだったかも」という声は挙がらなかったが、さもはじめてカフェイン抜き生活をしたという私の発言は妊娠経験者なら不自然だったことに気付いた。
このママさんたちには告げてないが、里親であることを隠していない。
ここで「妊娠中だってカフェイン抜かなかった?」と問われても動揺はしない。
ただ意外とこういう些細なお喋りのなかに、違和感を感じる人がいるのかもしれない。
そう思っただけの話。
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