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文月 煉
2018年6月30日 20:29
高台にあるその部屋には、無音の時間が存在しなかった。 いつでもはっきりと聞こえるのは、窓の下に一面に広がる海の、波の音。 それは「潮騒」というのだと、夏希(なつき)は教えてくれた。潮の流れが、騒ぐと書いて潮騒。 耳を澄ませてみれば、なるほどそれは海の水の中に無数に溶け込んでいる潮の粒たちが、賑やかにおしゃべりをして騒いでいる様子にも聞こえてくるのだった。 拓海(たくみ)は、通っている中学
2018年6月23日 00:19
ジャスミンは久しぶりに上機嫌だった。 ママが、ジャスミンに新品の靴をプレゼントしてくれたから。 もこもこした布でできた、ふわふわな手触りの真っ赤な靴。靴の横に縫い付けられた、小さな黄色いボタンがとってもおしゃれ。 ママは今日はとても機嫌がいいらしく、鼻歌なんかを歌いながら、久しぶりにジャスミンの髪の毛をお団子に結んでくれている。 こういうときのママは大好きだ。 機嫌が悪いときのママは、
2018年6月20日 16:04
どこかの時代。 世界は、闇に包まれていました。 そこでは、どんなに待っても朝はやってきませんでした。 というのも、世界を照らし、朝を生み出すはずの太陽がどこかへ隠れてしまったのでした。 生き物たちは手を取り合って、再び朝が来ることを願いましたが、太陽はもう戻ってはきませんでした。 長い長い夜が、世界を包み込みます。 厳しくも優しい朝の光を失った世界では、全ては眠りにつき、