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【異次元の少子化対策】について。そもそも日本・世界の現状と課題を踏まえて具体策を検討してみた。


【はじめに】

異次元の少子化対策とはなんでしょう…

具体案が見えない提示は評価することもできません。ただ、この方針によって改めて【少子化対策】について国民が関心向くのは間違いないと考えます。僕の立場を述べると、少子化“対策”自体に疑念があります。なぜなら、少子化対策は国民の不公平感を高めるからです。

しかし、少子化は日本だけでなく、世界的にも深刻な現状です。将来的には国を支える労働力が減少し、社会保障や医療制度などが崩壊する可能性もあるからです。だからこそ、無視できない。対策する/しない以前に向き合って理解を深めることは大切だと考えます

データや研究結果・他国の対策をもとにした現状把握とそれを踏まえた具体的な対策(仮説)を提示することで皆さまの考える機会に繋げられたら幸いです。

もしも

「少子化回復が絶対善であるならば、、、」

【目標値】

日本の出生率は現在、「人口維持」するのに必要な水準である2.06〜2.07に達していません。2020年には合計特殊出生率が1.34であり、そのためには年間約46万人増加する必要があります。このような水準を達成するには、長期的で効果的な政策が必要です。また、合計特殊出生率は一つの指標ですが、近年ではBBMなど複数の指標を活用した分析が重視されています。ただ、日本だと研究データが限られているため合計特殊出生率を基本の指標で考えていく。

【現状分析】

日本の出生率は20世紀以降最低水準に達しています。1940年代〜1950年代と1964年代〜1975年代には、日本でもベビーブームがありましたが、それ以降は出生率は減少傾向にあります。

国際的にはどうでしょうか。OECDを対象に精密な調査を行った研究によると、ベビーブーム後はどの国も必ず急速な少子化を迎えるという結果が示されています。つまり、世界(OECD)の国々は全て少子化傾向です。現在の差はブームの持続・ボリューム数が現在の各国の人口動態を現しているという状況です。

日本は海外と比較すると

・ベビーブームが早い時期に起こっている
・持続期間が短く他国同様に抗えなかった

さて、少子化対策を考えるアプローチとして
国際比較過去の比較 二つの比較から考えましょう。

=国際比較=

まず、結論から述べると似た環境で目標値達成してる国はありません。また、特定のロールモデル政策は現状あまり当てにならず、フランスや北欧など日本よりいいところの政策を真似すれば良くなるというのは難しいと考えます。

先程も伝えましたがOECDや一部その他30ヶ国ほど1960年代以降の推移を調べたところ国際的には全て少子化傾向にある。その中で“一時的に”抗うことに成功したのがフランスとスウェーデンである。日本でも大々的に注目集めたのはこの異例があるからです。しかし、現状どちらも低下していて、効果を現したのはあくまでも過去の成功事例です。現在もその点で通用するとは限りません。これは日本の産業が過去に成功したからと言って、今から真似しても成功するわけではないのと同じ話で、ハッキリ言えば過去の遺産で現在もたまたま高い位置にいる国が殆どだということになります。

また、世界(OECD)トレンド的にはコロナ以前の日本は2010年以降OECD平均に少しずつ近付いているという点です。これは他国が急激にシフトチェンジしたわけでもなく、良い政策と謳われている政策を継続し続けているにも関わらず日本と差が開くどころか少しずつ狭まっている点も踏まえると、日本は現在、多くの国より下回っているが、自国より合計特殊出生率が高いロールモデルを採用すれば上手くいくとは言い難く、逆効果に繋がる可能性が考えられます。よって、他国のロールモデル化は推進するべきではないでしょう。このような悲観的な話をしたのは、「新たな少子化対策は無駄」という諦念の中から来る否定ではありません。他国の現状を踏まえて神話的に扱う捉え方を一度停止させなければ具体策に突き進められないという主張です。

「少しでも良くなるならやるべきだ」という主張は理解できますが、実際には複数の因子が影響を及ぼしており、単純に特定の要因だけを取り上げて分析すると正しい結論を得ることができません。例えば、「ヨーロッパや北欧はGDP対の家族社会関係支出が高く、合計特殊出生率が高い」だから支出を増やそうという結論は、正しく見えます。しかし、これは統計の罠で実際はアメリカや中東など都合の悪いデータを提示しない疑似相関です。このような一度立ち止まって考える姿勢は特定の国が「成功してる」と思い込めば思い込むほど、疑えなくなります。

それでも日本が少子化を回復する
異次元な対策を取るのだとするなら、、、

ロールモデルではない抜本的で極端な方策を打ち出して、個別具体的な対策を実施して国民全体で検証していく必要がある。

=国内比較=

日本では、1972年が2.13で目標値を超えている。それでは、過去に立ち返ることで少子化回復の糸口を見つけられるのではないだろうか。主に結婚の変化(婚姻/未婚率)出産の変化(合計特殊出生率)を検討する。

※コロナという特殊要因を省くために2018年を基本的な指標にする。


《結婚の変化》

日本では、15〜49歳の女性の未婚率が高いことは、少子化問題の一つの要因とされています。2018年で14.1%(2020は更に上昇)なので338万人の女性が未婚ということになる。この未婚率を下げることは、少子化問題を解決する可能性があると考えられます。また、仮説として移民(生産人口)を積極的に受け入れる・定住してもらうことは、日本の人口が増えてるのはもちろん、少子化問題に対しても有効になる可能性があります。

《出産の変化》

合計結婚出生率とは、結婚して子どもを持つ女性の割合のことを指します。合計結婚出生率は1970年(2.3)から2010年(1.9)の間に減少しましたが、その後は上昇傾向にあります。また、合計結婚出生率の第一子の割合が戦後最大水準であるということは、日本では結婚すると同時に子どもを持つことが一般的であるということを示しています。


合計特殊出生率と合計結婚出生率の変化を確認すると

荒川和久さん作成

低下しているのは子どものいない家族世帯ではない。
合計結婚出生率の内訳を確認すると

第一子1.02→0.97 
第二子0.92→0.7 
第三子0.4→0.25

上記のような指標となる。確認してもらえれば分かる通り、大きく下がってるわけではない。強いて言うなら、出産問題は第二子以降を如何に増やすのかが重要となる。日本では婚姻率自体が国際的に見ても低い水準であると思われているかもしれないが、OECDで比較すると日本の結婚特殊出生率は国際的にも高い水準であることがわかります。

※フランスや北欧など5割は婚外子という事実がある。つまり合計結婚出生率は国際比較の指標としてはアジア圏など限られた地域にしか使えない尺度となる。言い換えれば日本は国際的に婚外子が異様に少なく、フランスや他の国を考えるなら婚外子の制度設計は出生数の下支えとなることは考えなければならない。

※懸念要因として1972年から2010年あたりの比較は子供を生まない世帯の直近の変化に対応できていないため、この辺のこどもを持たない世帯も考える必要がある。つまり、第一子を持たない世帯は若い世代を見れば増えている。もしくは増大する可能性がある。


その前に
1970年から50年経って何が変化したのか?
この社会背景についての考察を述べたい。

社会が高度化するにつれて晩婚化・晩産化・未婚化は世界的にも抗えない自然現象である。平均寿命も医療技術も発展してるので、必ずしも晩婚化によって第二子が時間的理由で産めないとは言い難いだろう。

では、なぜ産まないのか?

合理性に反するからだ。まず、子ども一人当たりにお金をかける際限のなさ(選択肢の充実)が高度社会には存在する。そして、お金と時間をかければかけるほど経験・教育などはこどもの投資効果として、ある程度相対的に上げられる。そして、その効果は将来の子どもに高い確率で影響を与える。子どもの環境(投資効果)を良くするなら複数より一人にかけたほうがいいのは明らかである。発展途上国の場合、経済発展が出生率に繋がるのは、産業の中心が農業をはじめ労働集約的かつ家族経営が主体の産業で労働力として子供をもうける必要性が強く働くからだ。高度化すれば、その合理性は低くなるので出生率も鈍化する。もっと言えば、キャリア設計含めて第二子とか結婚以前よりも自分に投資した方がいいと考える人もいるだろう。これは抗えない自然の摂理だ。

「先進国は生活水準が上がって、子ども一人当たりにかける負担も大きい。だから経済的余裕がなくて結婚できない」という言説は日本でも多く見受けられる。これを踏まえるなら大衆の経済的余裕・生産人口の所得を増やすことは少子化対策に繋がると考えられる。しかし、そもそもこれは大きな落とし穴がある。まず、それなら他国は成長率や景気に伴って少子化回復してもおかしくない。先ほども伝えたが、発展途上国などある段階までは経済と出生率は大きく影響を与える。しかし、一度、社会が高度化すると多少の相関は短期的・部分的にあるにしても、全体的に見れば経済と合計特殊出生率/婚姻・同棲率はあまり直結しないのではないだろうか。

海外だと更に乖離してる

ちなみに、日本とアメリカの比較調査によれば結婚/出産に対する差は経済的な条件で差が開いてるのではなく、心理的な不安で差が開いているという研究がある。もちろんこの調査を鵜呑みにするわけではないが、経済的な事情だけで左右されるわけではないのは間違いない。ここで強調したいのは、高度化社会で伴うのは「産めない」よりも「産まない」という要因が強く働いてしまう点である。

対策として子どもがいる世帯にお金を掛けることも、国民が生活に余裕を持つことも何一つ間違っていない。特に子ども世帯にお金をかけることは日本の急務である。現状は人口比率の差もあるけど、高齢者が全体の7割という試算も出ている。これは大幅に変える必要がある。しかし、ここで考えなければいけない点は、そのような経済的余裕を作っても、高度化された社会では、産まない選択肢を選ぶ方が合理的だということである。ここを変えない限り、少子化は大きく変わらない。

では、どうすればいいのか?

【具体策】


今までの話を整理すると少子化対策の軸は三つある。


母数の問題・結婚の問題・出産の問題


もう一つ前段階の恋愛の問題も挙げることは出来るけど、今回は割愛する。基本の立場として直接的な優遇政策を推奨する立場を取る。選択の自由を国家的にコントロールする設計を目指す。選択しないものを処罰するのではなく、選択するものに大量の飴を渡して少子化を取り組む方向が基本的な立場となる。

=母数の問題=


「移民の数を増やすことで結果的に少子化は回復するのか?」

外国人女性が増えると合計特殊出生率が上がるかどうか検討した先行研究は多くある。ヨーロッパ圏では移民の数が出生率に大きく関わってるという研究は数多くある。例えば、最近だと移民の受け入れが出生率の底上げに大きく影響与えてる可能性が示唆されている。(2010年代後半のイギリスとドイツの比較)

日本でも同じように確認すると残念ながら、ベトナム女性以外基本的に出生率は下がるそうです。また、急な人口増加で生じる上昇時の出生率も確認したところネックとなる第二子には繋がらないことが確認取れています。よって、合計特殊出生率に繋がる可能性は現時点で薄い。しかし、移民はここ20年で1.9倍(293万人)参加している。更なる少子化傾向も踏まえるなら、移民拡大を目指す必要はないが、移民した人たちに向けた環境整備は必要だと考える。ここで、一つフランス・スウェーデンの婚外子制度に注目していきたい。

上記のグラフからも分かるように日本(アジア)の婚外子は極端に少ない。その事から、少子化対策としてフランス(PACS)やスウェーデン(サムボ)などの制度を日本だと少子化対策の一つとして取り上げられることが多い。ただ、カトリック教会であるフランス、婚外子の格差問題があるとされるスウェーデン、それらの制度が制定された背景は、少子化問題とは関係ない婚外子の問題、信仰の自由、地域的文化の問題が成立背景にあるとされています。結果的には潜在的な問題意識を抱えていた一定数がいるから少子化にも効果を示したのであって、そのような問題意識が少ない日本だと少子化対策としての影響は小さいと考えられます。思想的に制度を見直す意義はありますが、少子化対策としてあまり大きな影響を与えることはないと考えます。なぜ、移民政策の流れでこの話をしたのかと述べると潜在的に社会から受容されていない層(外国人・信仰者)が多い場合は政策を通して社会が受容することが大切だと考えられます。つまり、出生率に繋がる可能性があります。日本だと在留外国人数は増加傾向にあるものの、技能実習制度を通じた一時的な流入が大半であり、出産増加に結びつくような定住という形での外国人の流入は限られています。今後、日本でも潜在的に社会から受容されていない層が増える可能性は高く、一時的な滞在ではなく、中・長期を目指した定住化の環境整備(学歴・居住・労働条件)を今から取り組むのは重要ではないでしょうか。 無論、フリーライド問題は考えないといけません。ただし、移民が増えることは少子化対策関係なく止められない流れであり、それなら上記の環境が整えて合計特殊出生率にプラスに繋げていくことを推奨します。しかし、これは目標値だけで比較した場合、あまりにも小さな要因なので今回の趣旨としては補助的な対策として扱う。

注意点は地域が大きく違う日本が移民比率を上げても
出生率が上がるのかは怪しい。


=結婚の問題=

1970年で比較した場合、婚姻率の低下こそ合計特殊出生率の変化で一番大きな要因となる。「如何に未婚率を下げるか」こそ解決しなければいけない課題である。しかし、何度も伝えているが日本に限らず高度化された社会は未婚率が上がるのは自然の摂理である。それでは、未婚率の推移を確認してみよう。

確認すれば分かる通り、日本の未婚率は2020年まで上昇し続けている。ただしわ2000年以降は若い世代では鈍化していて、2010年以降は横ばいになっている。それでも、上昇してるのは上の世代のボリュームの方が多いからだろう。離婚率でも確認してみる。

荒川和久さん作成

離婚率を見てもわかる通り、2000年以降は下げ止まりが起きていて、徐々に上昇ではなく下がっている。つまり、日本のリアルな状況は上昇ではなく現状維持という段階だということ。これが冒頭に述べたOECDと比較しても日本は必ずしも悪い状態とは言えない理由にも繋がっている。ただし、この記事で求めるのは更なる変化である。下記のグラフを見れば結婚の問題では二つの対策の方向性が考えられる。

荒川和久さん作成

未婚率の対策は「婚姻率の上昇」と第二子出産にも繋がる「婚姻の長期化=離婚率の低下」が少子化対策の鍵だと考える。

また、結婚モデルについても確認しておく必要がある。
「婚外子制度」「多夫多妻制度」について。

ー婚外子制度ー

母数の問題でも上げた婚外嫡子率を大きく上げる可能性も具体的に検討しなければならない。長期・全体的に見れば日本とは違う合計特殊出生率が右肩下がりではない推移を見せたのがチェコ(1.7)、スウェーデン(1.7)、フランス(1.85)デンマーク(1.7)である。結婚問題で検討した場合、4カ国は婚外子が5〜6割で極めて高い。その理屈で、婚外子制度に可能性を感じてる人も多い。OECDの中で婚外子が低い下から四つの国を確認すると韓国(0.91)、日本(1.36)、トルコ(2.05)、イスラエル(3.01)である。2カ国は合計特殊出生率がトップクラスである。その点からも必ずしも、婚外子制度を取り入れる必要はない。ちなみに、国内の婚外子研究によると約2%の内、6割が人種・貧困・その他の理由であり、4割が内縁的な関係という調査結果が出ている。結婚できない・したくないというネガティブな背景に関わる子どもは全体の約1.2%で1万人となる。ここのボリュームが制度成立で急増するとは考えにくい。

ー多夫多妻制度ー

少子化対策の話になると一夫多妻/一妻多夫制の結婚モデルを社会的に受容する。市民権の獲得を唱える論者も毎回現れる。このモデルが未婚率・出産に影響を示せる可能性は考えられる。しかし、これは前提としてサムボのような相続の一定制限や母親/父親養育権を条件に入れなければ成り立たない問題がある。また、先ほどの研究の内縁のボリュームを考えてもミクロな対策になる。一夫多妻/多妻多夫の法整備で経済学的な効果最大モデルを検討している研究があるけど、理論としてはまだ曖昧で具体策にはほど遠いのが実情である。

これらの結婚モデルは少子化対策の文脈ではなく選択自由・マイノリティ問題で捉えたほうがよく、今回の具体策を掲げるうえでは否定的な立場を取る。しかし、結婚・家族モデルの新たな再考は現状維持を超える可能性として検討余地がある。日本の1970年代からの推移を対象にした場合、少子化の主要因は未婚率の問題である。よって、婚姻率の上昇と離婚率の低下は重要な対策となる。しかし、欧米は未婚率・単身世帯は基本的に日本より高い。よって、欧米はロールモデルを参考にせず、未婚率解消となる独自の方向を見つけなければならない。

=出産の問題=

1970年と比較した場合、二人目以降の低下も大きな要因である。ここが回復すれば合計特殊出生率は1.5~1.6まで伸びる可能性がある。また、第二子を産みたいという環境は早婚化や婚姻率/婚姻維持率にも繋がると考えられる。先ほども伝えたが、「産まない」選択は合理性に基づく判断だ。経済的な変化(所得水準・成長率)などの相関性は低く、いくら収入が安定して余裕が出来ても、その余裕は出産に目が向かない。子どもを産むにしても、1人の子どもにお金も時間も集中させる方が合理的である。教育無償化なども出生率との相関性は疑わしい。日本では、少子化問題〈2人目の壁〉が深刻化しており、これを解決するために、多産を奨励する政策が必要です。そのためには、多産優遇のインセンティブを設けることが重要です。高度化(多様化)社会とは個人の選択肢が増えます。多様化された社会では、優先順位を明確にすることで、選択肢に差を生み、より効果的な方向に繋げられると考えます。これらの問題は、近年の国際状況を反映して検討する必要があります。また、出産問題と育児問題は区分けしてどちらも同時に対策する必要があります。

【具体策①】

世帯累進課税制の抜本的導入
特別税額控除と社会保障給付の拡大

この二つを組み合わせる。最初にここでいう家族を【年齢制限付きの民事連帯】と定義付ける。民事連帯はスウェーデンのサンボから用いている。一方で基本的にスウェーデンとは真逆の立ち位置を取る。スウェーデンは個人の自律を強調するために配偶者控除を廃止しているし、単身世帯という家族に縛られない関係をつくる。その結果、単身世帯は止まらない勢いとなっている。日本がこれを模倣したら婚外子の文化のない日本は少子化を推進するだけとなる。次に、世帯累進課税制とはフランスなどが有名で、世帯の成員の所得の合算を世帯人数で割って、それに対してここに課税するものだ。つまり家族が増えるほどその世帯の課税負担が大きく変わる。これは家族形成のインセンティブになる。一方でデメリットとして、中低所得世帯は分割しても適用税率が変わらないので軽減効果が期待できない。また、配偶者間で所得に大きな差がある場合はパート労働に高い税率が適用するために抑制効果に繋がる事も考えられる。共通するのは所得が少ない世帯には効果が薄い&マイナスの可能性があるということである。そこでマイナス面を防ぐ対策をセットで導入する必要がある。端的に言えば課税最低限を上回る世帯は税額控除、課税最低限を下回る世帯は補助金を年齢制限付きの扶養人数に応じて手厚く対応する。

1. 世帯累進課税制 多産>産まない

2. 累進課税だと収入で効果の格差が生じる

3. 格差を埋める中低所得世帯に扶養親族の人数に応じた特別税額控除・社会保障給付


この対策の効果・懸念点をイギリスとフランスの導入と導入後の現在の状況で確認する。しかし、重要なのはこの制度導入による比較検討ではなく実際どのように優遇されているモデル化こそ大切だと考える。モデル提示は3つの点を強調する。一つ目は「産む人数によってどれだけ効果あるのか」「産む/産まないでどれだけ差が生じるのか」「財源をどのように用意するのか」これをいくつかのモデルを顕在化させて認知することで、選択設計に大きく介入する。しかし、ここでぶつかるのが繰り返し伝えている<中立性>の消失である。「産めない人間はどうなる」「相手がいない人間はどうなる」「一人を選択する自由」この三つの懸念点を無視して推し進めることはできない。その点の対策を簡単ではあるが考えよう。


[ 産めない人間はどうなる ]
→この問題については最大限支援・補助する。まず身体的な事情がある不妊治療などの税額控除・検査の無償化はもちろん、その治療期間の就労手当などできる限りの対策を打つ。しかし、それでも産めない人間は存在する。この問題については出産の問題で詳しく述べる。


[ 相手がいない人間はどうなる ]
→恋愛問題やパートナー選びのマッチング問題はある。この点もルッキズムや収入格差など中立性を欠くことは否めない。自治体の婚活支援が有効とはならないのは自明であるように、恋活・婚活の国家介入は基本的に愚策だと考える。状況を確認すると2003年の法整備から結婚支援は明示的に少子化対策に組み込まれており、2008年から婚活支援需要・利用率は急増している。ただし、婚姻率は回復していない点からも効果が示せていない可能性は高い。ただし、これは世界的なトレンドであり、合計特殊出生率の国際比較を踏まえると婚姻率低下を抑えている可能性は少なからずある。先ほどの優遇政策は恋愛から結婚・家族形成の経済的インセンティブを<優遇化>することで引き上げる方策だ。しかし、その前段階のパートナー探し(恋愛の問題)は別で論じる必要がある。一つ考えておかなければいけないのは、機会提供だと回復するほどの効果を見込めないという点だ。これは結婚・出産の問題にも通じると考える。よってパートナー探しも機会提供や相談で留まる形ではなく、優遇化が必要である。しかし、恋愛という自由度が最も要される対象に優遇化はミスマッチである。できることは恋愛機会の促進ではなく、恋愛と家族形成の強烈な因果性を分離する。そして、恋愛や嗜好の自由を確保した上で家族形成(民事連帯)を優遇化することを今回の方策の軸として扱う。つまり、恋愛・パートナー〈できない〉問題を〈できなくても家族形成できる〉法整備を整えた上で、その家族形成の選択肢を優遇設計することでこの問題を少子化対策の直接問題として切り離す考えである。


[一人を選択する自由]
→上記二つは<できない>対象に国家的にどのように対応するのか話してきた。次は<選択しない>対象の公平性をどのように対応するのか。この点については対応しない。前提として公平性は優遇性と相反する。よって不公平性による不満は間違いなく起こる。だから制度設計や方策を推進する上ではこの優遇化されない対象とコンセンサスを結ぶ必要がある。これも合わせて設計しなければ具体策としては弱いだろう。ただ、立場を改めて説明すると現状日本では公平性を強く置いているので結婚・出産・育児による負担感を他の選択する者と<同等レベル>を目指して取り除く動きである。(フランス・スウェーデンもこの問題にぶつかっている)しかし、その同等レベルだと子どもを産む選択を選ぶ傾向が低くなる。だから、圧倒的な優遇設計で個人の選択を社会でコントロールするのが本論の立場である。そういう点で倫理的な批判は必ず起きる。しかし、蛇足を自覚した上で記述すると世界(OECD)は絶望的に解決できない状況にあるということだ。その現状を分析するなら、この問題は冷静に受け入れる必要がある。また、なぜ世界(地球)は多産傾向にあるのか?という点である。発展途上国は国民をコントロールしているわけではなく、自然発生的に起きている。つまり、個人にとって多産であることの益が大きく合理的であるからだ。(動機の自覚は置いといて)これは発展途上国と先進国の世帯収入と家族の人数の相関で傾向的に証明されている。逆にいえば社会のシステムが発展すると多産の経済的合理性はなくなり、むしろ負担感は増大する。この負担感の問題は現状の負担感ではなく未来からくる負担量と責任量の問題になるので、取り除くことが根本的にできない。よって同等程度なら未来の負担感を踏まえるなら傾向的に選択しないことになる。この自然発生を国家で抑えるというのが本論である。国家で抑制するあり方は暴力を取り除いた非自然的な民主主義の導入と類似性を持つ。よって、自然発生の傾向是正は国家の在り方としては必ず否定はできない。これは倫理的批判を打ち消すわけではなく、問題性がないということを伝える意味にはならない。ただ、倫理批判に思想的な対抗を提示することによってこの本論を検討余地として<取扱可能>レベルに引きずり込むことが目論見である。

【具体策②】

家族形成主義を推奨する

 先ほど、家族の定義を民事連帯と説明した。民事連帯とはスウェーデンのサンボなど宗教・法律婚と区分けする通称であり、「異性あるいは同性の自然人たる二人の成人による共同生活」の意味付けとする。平たく言えばフランスや北欧など「家族になる」を婚姻という儀式・法的手続きと結びつけない。性別に限らず恋愛などに固執する形でもなく共同生活に重心を置く。そして連帯を<形成・維持する事実>に対して優遇していく社会を家族形成主義とする。しかし、この優遇対象は年齢制限付きの扶養人数の形成である。連帯の強度を扶養人数の数で区別して、より多く連帯形成する家族(=共同生活)を累進的に優遇する。このような捉え方は東アジアなど特定の文化圏から抵抗があると考えられる。その点はコンセンサスをつくる手段が必要となる。一方で今までスポットライトに当たりづらかった養育者なきこども達、性別や恋愛観の規範的抑圧に縛られない方向に焦点が当たる可能性は見受けられる。これを踏まえて家族形成主義における出産・育児それぞれの方策を提示する。

=出産=

 二人目の壁は肉体とお金と時間の問題がある。出産・育児負担を下げることは重要となる。まず、肉体の問題として不妊治療は現在47万人存在しておりこの問題が解消されると復産も計算したら50万人以上の潜在性がある。毎年50万人という試算ではないので、この問題が解消されたら少子化が解決するというわけではないが、生殖補助医療の出産が推移的に増加していることから不妊治療助成や負担軽減、男女含めた企業の両立支援等助成金の拡充を増やす。つまり、企業や自治体もあらゆる社会問題がある中で少子化問題に対して優遇化させる形を設計する。また、晩産化が進んで身体的事情で産めない人も増加している。だから産む事実ではなく<扶養する事実>を重要視する。具体的には里親・特別養子縁組の拡充と補助を切り替える。現在扶養対象のこども達は約4.5万人で全体的に見れば少ない数である。ただし、現在は虐待の人数が10.8万人いる。だから潜在的な扶養を必要とする対象は数字以上の意味があると考える。まず、ここで確認しなければならないのは出産と育児を支援・補助の一本化された伝統的な制度を壊す。それぞれの支援・保障を個別的に拡充する必要がある。そして、出産・育児を私的領域/特定の属性・国家だけの自己責任問題に還元する制度設計ではなく、公的保護領域として全ての制度を扶養人数の優遇政策から設計する必要がある。しかし、これらは少子化対策のミクロの問題で具体策としてはすぐに大きな改善に繋がらない。長期的な土台設計となる。あくまでも、穴の開いたバケツを塞ぐという意味である。

=育児=

 合計特殊出生率を考えるなら<産めない>問題よりも<産めるけど産まない>問題が重要となる。二人目の方が一人扶養するよりインセンティブが強く働くことを打ち出さなければならない。一人目にも還元される日本は一人目と二人目の手当・保障が基本的に同じ仕組みである。ここに差を設ける。優遇するのはあくまでも連帯を形成・維持する立場である。そのため、累進型の手当・保証型に切り替える。税額控除という負担だけではなく、手当も差を設ける。これは[具体策 1]で述べた内容なので割愛する。

【おわり】

 まずは家族の定義を変える。具体的には血縁の集団から[小規模な共同生活]という意味にする。その新しい意味を基盤に法制度・環境を作り替える。そして、家族が年齢制限付きの子どもを扶養すること(家族形成主義)を推進する。扶養する事実が大切なので、出産・養子は問わない。また、1人の扶養ではなく2人以上の扶養に抜本的な収入別の優遇政策(世帯累進課税制・特別税額控除と社会保障給付の拡大)を設ける。これをロールモデルにして目標値の懸念点であった、婚姻率・2人目の出産の壁を乗り越える。中・長期的には移民の環境や経済対策を国内外に示しながら、少子化対策の回復に努める。この提案は先行事例がない総合的な提言のため根拠が薄弱となる。そのため、親父がクダ巻いてるのと大して変わらないのが本音である。だから、これを部分的にも検討していく詳細な調査が必要となる。

長文にも関わらず拝読して頂きありがとうございます。


【参考文献】

『配偶者控除のあり方と少子化・子育て対策 ~望まれる一体的視点からの見直し~』

『少子化問題と税制を考える』
森信茂樹

『結婚と家族のこれから 共働き社会の限界』
筒井淳也

『社会保障負担の増加』
内閣府 子ども・子育て本部

『これからの社会保障を展望する』

※追記予定。グラフ・画像も後ほど追加します。

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