見出し画像

組織変革は指揮官先頭・率先垂範で行う

3月27日の日経新聞で、「役員が動いて会社変える リスキリング、隗より始めよ」というタイトルの記事が掲載されました。リスキリングの号令をかけていながら、社員任せになっていないかを問いかける内容でした。

同記事の一部を抜粋してみます。

デジタルトランスフォーメーション(DX)を重要課題ととらえ、社員のリスキリング(学び直し)に力を入れる企業が日本でも増えてきた。欧米への遅れを挽回したいところだが、気になるのは経営層の関与の度合いだ。「学ぶのは社員」と考え、現場任せになっていないだろうか。

情報処理推進機構(IPA)が2022年6~7月に日米の企業に実施したアンケート調査によると、IT(情報技術)分野に見識のある役員が3割以上いる日本企業は27.8%にとどまった。米国は60.9%にのぼり、その差は大きい。経営層のITへの理解が不十分なことが、DXの取り組みを阻害しかねないと同機構は指摘している。

「『我が社もDXをやれ』とトップが部下に丸投げする話をよく聞く」。一般社団法人、ジャパン・リスキリング・イニシアチブ(JRI)の後藤宗明代表理事は苦笑する。

後藤氏は米国の人工知能(AI)関連の展示会で、リュックにジーンズ姿の米大手企業の役員と会って驚いたことがある。意思決定の判断基準を持つために、スタートアップの技術動向を自ら定期的に情報収集するのだと聞き、日本との違いを実感したという。

情報システムへの投資判断や、マーケティングなどの戦略立案でも一定レベルのITの知識が今や不可欠だ。「デジタルが分からない経営者のもとからは、どんどん優秀な人材が逃げていく。プライドを捨てて、社員からでも学ぶべきだ」。後藤氏は呼びかける。

ファンケルの島田和幸社長は21年1月、情報処理技術の国家資格「ITパスポート」を取得した。社員教育に使いたいという幹部の話を聞き、「それならDXを推進する自分がまず取ってみよう」と思い立った。

技術的には基礎レベルの資格だが専門用語や略語も多く、「覚えた先から忘れることもあった」と笑う。約3カ月間、土日に参考書を読み込んで受験し、一発で合格した。

社長の率先垂範はいい刺激になっている。資格取得を推奨したところ、昨年12月時点で役員の83%が合格。部長・本部長職では50%、課長は37%、一般社員は20%が取得している。

新型コロナウイルスの流行でインバウンド需要が蒸発し、同社にとってデジタル戦略の重みが増していた時期でもあった。「DXという言葉に振り回されるのではなく、本質を見極めて当社ならではのデータの活用を意識する必要がある。幹部がITが分からない、では仕事にならない」。島田社長はこう言い切る。

丸井グループも経営幹部が率先して学び直す。21年12月に2日かけて社長を含む役員がデジタル研修を受講。プログラミング知識が不要な「ノーコード」でアプリ開発も実践した。「役員から変わらないと会社全体が変わらない」という考えからだ。その後社員にも同様の研修を広げている。

先日、AIについて特集しているテレビ番組を見ていたら、シリコンバレーにあるバーの風景が紹介されていました。

(記憶があやふやですが、確か)ChatGPTについて毎晩雑談するバーになっていて、企業経営者などが意欲的に参加して意見交換している様子を取材していました。「ここに来ていないと最前線の動きが分からないので、やってきた」と、ヨーロッパなどから参加している人もたくさんいて、印象に残りました。上記記事の「米大手企業の役員が、自ら定期的に技術動向を情報収集する」に通じるものを感じました。

私は「DX」や「IT」などと聞くと即座に思考停止してしまうような、それらの領域が苦手な人なので、記事中の島田氏や丸井グループの経営幹部の事例には、尊敬しかありません。。部下の立場でそうした行動を見ると、当然影響を受けることになります。その結果が、資格取得率に表れているのだと思います。

合格率も、職位の高い階層から順に高くなっています。職位の高さは、ある程度年齢に比例しているはずです。この結果を見ても、以下のことが言えると思われます。

・学びに年齢は関係ない
・社長に近い立場の階層から影響を受けている
・組織の最下層に届くまで時間はかかるが、じわじわ届くことで組織全体が変わっていく
・社長の行動なしにこの取得率はなかったであろう

先日の投稿では、組織活動で成果を上げるには、リーダーがその活動を指揮官先頭・率先垂範で行うことが不可欠だと言うことを考えました。もちろん、その組織活動のテーマに関する細部の作業、個別具体的な業務まで、リーダーが行うことは物理的に無理です。それぞれの立場によって期待される役割は異なります。細分化された業務プロセスの実行部隊になることを率先垂範する必要はないはずです。

そのうえで、その組織活動の統括や、当該テーマに関する知識を身につける(これもどこまでの範囲を対象とするのか、テーマや場合によりますが)、活動の必要性を訴えるなどは、指揮官先頭・率先垂範でできるはずです。

隗(かい)より始めよ:大事をなすには手近なことから着手せよ。言い出した者から始めよ。組織を抜本的に変えるような大きな取り組みにおいては、特に意識して実行したいことだと思います。

<まとめ>
リーダーの意気込みと取り組みの度合いが、組織全体の意気込みと取り組みの度合いとなる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?