百貨店 外商の活路
9月2日の日経新聞で、「百貨店外商、40代以下に的」というタイトルの記事が掲載されました。ユニクロなどの専門店が台頭する中で百貨店という業態が衰退し、コロナ禍以前から売上低迷が指摘されていました。その百貨店で新たな活路を見出そうという内容です。
同記事の一部を抜粋してみます。
「三越伊勢丹では旗艦2店の合計売上高の2割が外商」とあります。外商強化の取り組みのみをもって会社全体の収益問題が解決するほどのインパクトの大きさでもないはずですが、店の存在意義とお客さまへの付加価値を高める有力な方策のひとつだろうと思われます。
冒頭の顧客層の伸び方を見ても、30~40代の若い富裕層は開拓余地の大きさが感じられます。関連記事を見ると、改めてそのことが認識できます。(以下一部抜粋)
日本が経済成長していないため、日本国内の家計資産の合計も他国との相対比較で増えていないことが改めて分かります。その中で、富裕層は着実に資産を積み上げていることが想像できます。意外にも、国の人口全体に対する100万ドル保有者の割合では、日本(365万人/約1億2千万人)は米国(746万人/約3億3千万人)より高くなっています。想像以上に資産格差が広がっている印象です。
逆に言うと、富裕層に満足いただくことで消費を引き出し、社会に還元する余地は大きいということです。冒頭の30代女性医師の例は、そのイメージの典型です。
このような起業家などの若手富裕層のニーズとしては、「スピード」「選ぶことへのこだわり」「費用はあまり気にしない」といったことが挙げられるのではないかと想像します。中高年の富裕層以上に時間の制約がより大きいため、「何かの購入になるべく時間をかけたくない」というニーズは高いでしょう。また、高級感もさることながら、ESGの観点からも「自分が納得できる商品を選びたい」というニーズも高いのではないかと想像します。
こうしたニーズに対して、百貨店に出向く必要なく家まで来てくれて、オンライン検索の必要もなく、自分の嗜好や意図に合ったピンポイントの商品を説明し提案してくれるサービスは、有望ではないかと考えます。
100万ドル保有者の365万人がつくる富裕層市場のうち、外商が既に取り込めているパイはごく一部のはずです。拡大余地はまだまだありそうだと思われます。外商で今後の課題のひとつは、基幹店舗から離れた地方の若手富裕層にまでどこまで安定的にサービスを届けることができるのか、でしょうか。
百貨店業界を、従来の「1等地に出店し様々なアイテムを集めて売る」という業態の枠や「中高年が主なターゲット」という顧客の枠で捉えたままだと、じり貧が続いていくのでしょう。業態や顧客はだれかの定義、商品・サービスの在り方の見直しで打開の余地があるということの好例ではないかと感じました。
<まとめ>
業態や主な顧客の定義を見直し、強みを生かせる領域を探す。
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