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指示命令やアドバイスの前に事実確認

先日、仲間内で研鑽するコーチングの勉強会に参加する機会がありました。その日は、部下から問題やトラブルの報告が上がった時にどう対応するかについても考えました。

例えば、お客さまから何かの苦情をいただいてしまった、何かのプロジェクトが遅延して進捗が悪いなど、好ましくないと思われる事象についての報告を受けたら、自分が指導者や上司の立場としてどう反応するでしょうか。

話を聞いてすぐに、「何やってるの。○○しなきゃだめじゃないの/だから普段から○○するように言ってるじゃない」などと、すぐに指示命令やアドバイスに走っていないか?という振り返りをしたわけです。

ここで大切になってくるのが、「まず事実を確認する」ということです。

他者に対するフィードバックでは、「事実の通知」が大切だとされています。相手に事実を十分把握してもらった上で、今後どうしていきたいか、どうしていくべきかを考えてもらうことで、行動変容につながるというわけです。

効果的で的を射た事実の通知を行うにあたっては、アメリカのCCL(Center for Creative leadership)が提唱した「SBI法」というやり方が参考になります。Situation(状況)、Behavior(行動)、Impact(結果や影響)を具体化させて言及し、相手に伝えるということです。

Situation:フィードバックの対象となる行動が起きた時の状況
Behavior:相手がとった行動の具体的な内容
Impact:その行動がもたらした結果や他者に与えた影響

本人以外の人がSBIを事実ベースで伝えることで、本人がとったどんな行動が周囲にどんな影響をもたらしたのか、新たな気づきを得るというわけです。そして、事実をしっかりと把握した上で、今後自身が何をどう改善すればよいのか考えることにつながっていきます

本人が事実を認識できていると思い込んでいても、実は周囲が見たらその認識がずれている場合があります。よって、他者による事実の通知は意味があります。

加えて、本人の事実認識が正確な場合でも、他者からの通知は、その事実に対する認識を深め、問題を自分事として捉えて今後の課題形成につなげることを促す効果があります。冒頭の「まず事実を確認する」というのは、このことに通じます。

それでは、指導者や上司などがこの流れに乗れず、いきなり自分の決めた結論=指示命令やアドバイスに走ってしまいたくなるのには、どのような背景があるのでしょうか。その大きな要因として想定されるのが、「自分には事実が見えているという思い込み」です。

部下に事実が十分に見えていない可能性があるのと同様に、指導者や上司にも事実が十分に見えていない可能性があります。しかしながら、部下の断片的な報告を聞いて、「その場合はおそらくこう」と、これまでの経験などが固定観念となって、事実を類推してしまいがちだということです。

実際には状況は千差万別です。
お客さまに対してとるべきだと会社が掲げる方針に沿った、ほぼ同じ行動だったとしても、昨日のお客さまからは評価され、今日のお客さまからは苦言を呈された、ということもあり得ます。上司・指導者が想像できないような、どう考えても部下に落ち度がなく、社会的におかしいカスタマーハラスメントに部下が遭っているかもしれません。

・「何があったのか、詳しく聞かせてほしい」と言って、「いつ」「だれが」といった5W1Hで事実を明確にしていく

・「その時そう考えてそのような対応をしたわけだね」と言って、相手の話を受容し、認識の違いがあれば、その違いについて問いかける・・・など

その時何が起こっていたのか「SBI」を明確にすべく相手から十分な話を聞き出し、そこから事実を整理して相手と共有することで、自分の話を相手に受け止めてもらえる準備につながります。もちろん、相手が当該業務の相応の経験値がある人材だったり、主体的に考えて対応してもらうのがよい場面だったりする場合は、指示命令やアドバイスを伝えるのではなく、問いを投げかけて相手にどうすべきか答えを出してもらうことも有効です。

私自身も、思い当たるところがありますが、事実の確認のプロセスを飛ばして、すぐに指示命令やアドバイスに走ってしまうと、相手にとって納得感のない物言いになってしまいかねません。また、納得感がないばかりか、事実に基づかない、的を外した物言いになる可能性もあります。同勉強会の参加者間でも、ありがちだということで話題になりました。

事実の確認、留意して取り組みたいことです。

<まとめ>
まず事実を確認する。

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