外国人労働者200万人超を考える
1月27日の日経新聞で、「外国人労働者200万人超 特定技能、伸びけん引 昨年10月12%増」というタイトルの記事が掲載されました。日本の外国人労働者が200万人を超えたのは初めてということです。
同記事の一部を抜粋してみます。
同日付の別記事では、従来の製造業など12分野に加えて、関係省庁が「自動車運送業」や「林業」など4分野を追加する方向で調整に入ったことを紹介しています。数万人規模の新規就労が見込まれるとあります。
同記事から3つの観点で考えてみます。ひとつは、日本での外国人労働者数は依然としてまだ多くはないということです。
日本の労働力人口は、約6900万人です。そのうち200万人ということは、約2.9%です。首都圏のコンビニや飲食店で外国人従業員しかいないような景色を見ると、既に多くの外国人が就業しているかのようなイメージを持ちますが、全就業者数で見るとまだわずかな割合だということです。
例えば、GDPが日本と入れ替わると言われるドイツでは、労働力人口は約4,556万9,000人、うち外国人労働者は約706万人となっています(労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2022」)。外国人労働者の割合は約15.5%です。この数値と比較しても、2.9%は多いとは言えません。
昨年対比で伸び率12.4%などと聞くと、大幅に増えているように感じますが、元の絶対数が限られていることを前提で捉える必要があります。今後進んでいく労働力人口の減少を移民で補おうとすると、これまでのスピードではまったく足りないということになります。人材難が続くことは、引き続き見込む必要がありそうです。
2つ目は、送り出し国の経済環境の変化に伴う移動の今後です。
同記事には、「GDPが7000ドル程度になるまで先進国への移住は増える」とあります。逆に言うと、7000ドルを超えてくると自国内での就業にとどまる価値が高くなり移動が鈍るということです。
新興国の経済拡大のスピードは速く、それに伴う賃上げペースも速くなります。経済が5%成長であればベトナムは2033年、インドネシアは2030年、7%成長であればベトナムは2030年、インドネシアは2028年に7000ドルを超えることになります。イメージとして、あと10年程度で移住へのニーズが低下していくということかもしれません。
一方で、労働力人口が減っていく他国の移民受け入れニーズは高まります。外国人労働者を受け入れて人材戦力化できるインフラ、考え方を定着するには、今後10年程度が勝負どころかもしれません。
3つ目は、自社の雇用状況と比較してみるということです。
国の政策や社会全体の価値観として、日本で人口減少分を移民ですべて補うという考え方は、今のところありません。そのうえで、受け入れペースが今より増えていくことは確実で、減ることはないだろうと想像されます。
例えば自社で100人従業員を雇用していれば、2.9%は約3人です。単純な物差し化はできませんが、ひとつのイメージとしてそれぐらいの割合で外国人従業員を雇用していれば、日本の社会経済の平均的な動きと同じということになります。下回っていれば、自社の準備状況が遅れているのかもしれない、と評価することができるかもしれません。
いずれにしても、自社のミッション、ビジョンに合っている人で、自社の事業活動に貢献してくれる人材は、国籍に関係なく有力な人的資源です。改めて、外国人労働者の雇用という方法に向き合っていくのは有意義だと言えます。
<まとめ>
今の主要な移民送り出し国による移民のニーズは、今後10年までがピークかもしれない。
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