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外国人労働者200万人超を考える

1月27日の日経新聞で、「外国人労働者200万人超 特定技能、伸びけん引 昨年10月12%増」というタイトルの記事が掲載されました。日本の外国人労働者が200万人を超えたのは初めてということです。

同記事の一部を抜粋してみます。

厚生労働省は26日、日本で働く外国人の数が2023年10月時点で204万8675人だったと発表した。前年から22万5950人増え、初めて200万人を超えた。伸び率は12.4%で6.9ポイント上昇した。新型コロナウイルスの影響による入国制限が緩和され、感染拡大前の水準に回復した。

国籍別ではベトナムが最多の51万8364人で全体の25.3%を占めた。次いで中国が39万7918人、フィリピンが22万6846人だった。

在留資格別に増加率をみると、特定技能や高度人材を含む「専門的・技術的分野」が最も伸び、24.2%増の59万5904人だった。

なかでも特定技能(13万8518人)の伸び率は75.2%と顕著だった。そのうちベトナムが6万9462人、インドネシアが2万5589人を占めた。インドネシアの場合、特定技能が前年比で2倍以上に増え、同国からの労働者全体の伸び率も56.0%と国籍別で最も高くなった。

特定技能は技能試験や日本語試験の合格などを条件に、人手不足が深刻な業種で就労を認める仕組みだ。高度人材は研究者や技術者、経営者などが対象で、職歴や年収で判断して認定されれば在留管理上の優遇措置が受けられる。

円安に伴って日本で働く魅力は薄れるとの見方もあったが、引き続き右肩上がりで増えている。主な要因は送り出す側の国と日本の賃金格差が依然大きいことだ。最大の送り出し国であるベトナムは22年の平均賃金が月320ドル(およそ4万7300円)にとどまる。

国際通貨基金(IMF)は1人当たり国内総生産(GDP)が7000ドル程度になるまで先進国への移住は増えると指摘する。ベトナムは22年に4163ドル、インドネシアは4788ドルで、それぞれ7000ドルを大きく下回る。就労目的の来日は引き続き高水準で推移することが見込まれる。

高度人材などは家族帯同が認められている。在留資格「家族滞在」の外国人は23年6月時点で24万5000人と、この10年で2倍に増えた。

文部科学省は外国出身の子どもらを対象に、通常授業に代えて日本語を教える仕組みを14年に導入した。21年度の調査では対象の子どもの2割超が教員不足などで受けられていなかった。

政府は23年6月、特定技能のうち家族帯同が可能な「2号」の対象分野を2分野から11分野に広げた。来日する労働者やその家族のさらなる増加が見込まれるなかで教育環境など受け皿の整備が急務となる。

同日付の別記事では、従来の製造業など12分野に加えて、関係省庁が「自動車運送業」や「林業」など4分野を追加する方向で調整に入ったことを紹介しています。数万人規模の新規就労が見込まれるとあります。

同記事から3つの観点で考えてみます。ひとつは、日本での外国人労働者数は依然としてまだ多くはないということです。

日本の労働力人口は、約6900万人です。そのうち200万人ということは、約2.9%です。首都圏のコンビニや飲食店で外国人従業員しかいないような景色を見ると、既に多くの外国人が就業しているかのようなイメージを持ちますが、全就業者数で見るとまだわずかな割合だということです。

例えば、GDPが日本と入れ替わると言われるドイツでは、労働力人口は約4,556万9,000人、うち外国人労働者は約706万人となっています(労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2022」)。外国人労働者の割合は約15.5%です。この数値と比較しても、2.9%は多いとは言えません。

昨年対比で伸び率12.4%などと聞くと、大幅に増えているように感じますが、元の絶対数が限られていることを前提で捉える必要があります。今後進んでいく労働力人口の減少を移民で補おうとすると、これまでのスピードではまったく足りないということになります。人材難が続くことは、引き続き見込む必要がありそうです。

2つ目は、送り出し国の経済環境の変化に伴う移動の今後です。

同記事には、「GDPが7000ドル程度になるまで先進国への移住は増える」とあります。逆に言うと、7000ドルを超えてくると自国内での就業にとどまる価値が高くなり移動が鈍るということです。

新興国の経済拡大のスピードは速く、それに伴う賃上げペースも速くなります。経済が5%成長であればベトナムは2033年、インドネシアは2030年、7%成長であればベトナムは2030年、インドネシアは2028年に7000ドルを超えることになります。イメージとして、あと10年程度で移住へのニーズが低下していくということかもしれません

一方で、労働力人口が減っていく他国の移民受け入れニーズは高まります。外国人労働者を受け入れて人材戦力化できるインフラ、考え方を定着するには、今後10年程度が勝負どころかもしれません。

3つ目は、自社の雇用状況と比較してみるということです。

国の政策や社会全体の価値観として、日本で人口減少分を移民ですべて補うという考え方は、今のところありません。そのうえで、受け入れペースが今より増えていくことは確実で、減ることはないだろうと想像されます。

例えば自社で100人従業員を雇用していれば、2.9%は約3人です。単純な物差し化はできませんが、ひとつのイメージとしてそれぐらいの割合で外国人従業員を雇用していれば、日本の社会経済の平均的な動きと同じということになります。下回っていれば、自社の準備状況が遅れているのかもしれない、と評価することができるかもしれません。

いずれにしても、自社のミッション、ビジョンに合っている人で、自社の事業活動に貢献してくれる人材は、国籍に関係なく有力な人的資源です。改めて、外国人労働者の雇用という方法に向き合っていくのは有意義だと言えます。

<まとめ>
今の主要な移民送り出し国による移民のニーズは、今後10年までがピークかもしれない。


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