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コマ切れ時間で働く

2月3日の日経新聞で、「インバウンド第2幕(4) 日曜朝だけホテルマン」というタイトルの記事が掲載されました。日曜朝だけのコマ切れ時間で働くアルバイトについて取り上げた内容です。

同記事の一部を抜粋してみます。

東京都港区の高級ホテル、コンラッド東京。1月下旬の日曜日朝、レストランで配膳を担う大沢俊は慣れた手つきで来店客を案内した。大学の保健医療学部で理学療法を学ぶ大沢が働くのは、日曜日を中心に週1~2日程度。「国家試験の勉強と両立できて助かる」と話す。

運営する米ヒルトンは昨年、平日夜や週末だけ働けるようにアルバイトの採用条件を緩和した。コンラッド東京では原則週3日から、週1日でも働けるようにし、大学生や専門学生らの応募が増えた。単発で仕事を受ける「ギグワーカー」の受け入れも解禁し、これまで働いたギグワーカーは数千人を超える。

高級ホテルはサービスの質向上へ従業員の経験の蓄積が欠かせないとされるが、ヒルトンの人事担当、ジェイコブス・テリィは「年末年始はギグワーカーがいないと回らなかった。既存の考え方を壊す必要がある」と話す。オンラインを使った接客の研修などで質を維持しながら、人手を確保する模索が続く。

新型コロナウイルスで打撃を受けた観光業。宿泊関連業だけで19年比で2割の人材が減り、一度去った人材は簡単に戻らない。発想を変えなければ、需要は取り込めない。

運転手不足に悩むタクシー業界では、配車アプリ「GO」を運営するモビリティテクノロジーズ(MoT、東京・港)と日本交通グループが協力し、パートタイマーの運転手の募集を始めた。狙いは子育て中の女性だ。1日5時間程度、GOで配車依頼があった利用客を請け負う。人工知能(AI)で最短経路を計測するナビを備えたGOなら、経験不足をカバーできる。「選択肢が広がり、採用できる人材が広がる」(MoT会長の川鍋一朗)。

先週九州へ出張する機会がありました。往復の航空便はいずれも満席、空港も人の多さが目立ちました。航空便数がコロナ禍前まで戻りきっていない影響もあっての混雑かもしれませんが、観光目的での人の移動が戻っている印象です。今後外国人旅行者の移動が本格的に加わってくると、混雑ぶりはさらなりと思われます。

一方で、一度人材流出した観光業関連の労働市場に、元のように人材が戻るのは簡単ではありません。人手不足という問題の本質は、観光業に限らずどの業界にも当てはまると思います。

同記事からポイントだと感じたことを2つ挙げてみます。ひとつは、仕事によっては範囲や時間の単位を区切り、これまでにない雇用の考え方でギグワーカーを含めた多様な人材を活用することです。

同記事にもある日本交通グループについて、先日の投稿でも取り上げました。配車アプリからの予約客に特化して、車を走らせながら乗客を探す「流し営業」を業務から外し、シフトの時間を細切れにすることで、女性パート運転手という新たな雇用を開拓しています。

こうした取り組みによって、従来は対象だと考えられなかった人材も雇用の対象にすることができます。ギグワーカーであっても、工夫次第で商品・サービスの質を維持できるものもあるということを、同記事にある接客研修の例が示しています。

もうひとつは、業務の目的を意味づけし、その意味に合った人材に訴求することです。同記事の例にある、理学療法を学ぶ人材にとって、一流ブランドでのアルバイトで接客を学ぶ経験は、理学療法士になった時の診療等に必ず役立つはずです。

労働力を時間で切り売るするだけのアルバイトを必要としている人もいます。それに加えて、募集するアルバイトを、職を探している人にとっての本業や今後のキャリアに生きる意味づけをして打ち出せれば、正社員などの定職を持つ人材も副業として雇用可能な対象者になりえるかもしれません。

ワークライフバランスという言葉がありますが、この概念はワークとライフを二項対立のように見ている一面があります。本人が望むのであれば、ライフの時間一部に細切れのワークをさらに投入することが、本人にとってのワークライフバランスを高めることになります。

必要は発明の母と言われますが、観光業界等でコロナ禍とそこからの回復でより人材不足が顕著になったことは、雇用に関するさらに進んだやり方を見出していく機会にできるかもしれません。

<まとめ>
仕事の範囲や時間の単位を区切り、より多様な人材を活用する。

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