見出し画像

穏やかに話す社長

先日、ある社長のお話を聞く機会がありました。同社長は、自社をフラットな組織にしていくということにとても強いこだわりを持っています。現場発の質の高い情報が上がる、各持ち場での意志決定が自律的にでき、筋肉質に動く組織でないと、この先生き残っていけない、そのためにはフラットな組織であることが必要と考えているからだそうです。

同社長の考えるフラットな組織とは、メンバーが次のような状態であることを指していました。

・一方通行のコミュニケーションではなく、双方向のコミュニケーションがとれている

・合っているか間違っているかはわからなくても、立場に関係なく思っていることを表に出せている

・最終判断は、そのテーマに決裁権を持っている人物が行う。下位者の意見が採用されず、それとは異なる最終判断だったとしても、下位者は判断の材料を増やしたという点で貢献したと考える

・闇雲に思い付いた意見を上げるのではなく、質の高い情報に基づく意見を出すように心がけている

今よく話題になる、心理的安全性の高い状態の組織が、目指している状態だと言えるのかもしれません。

同社長がこれらにこだわるきっかけとなったのが、新卒時代に入った別の会社での、先輩社員の行動にあったということです。

「当時は、深夜残業が当たり前の職場環境だった。夜になって疲れてくると、先輩社員たちの機嫌が悪くなってくる。当時の主任はその典型だった。失敗の報告、主任の意に沿わない相談などを夜に持ち込むと、怒号やごみ箱を蹴散らすなどの行動に出る。次の日に持ち越すともっと態度が悪くなる。それを見て反面教師とし、自分は絶対にああいう風にならないと決めた。もし時間が夜になるのであれば、夜だからこそ相手へのリスペクトが必要ではないか。

今経営者として、役員や管理職など特に立場が上の人に対しては、厳しい注文もしていると思う。しかし、絶対に声を荒げるなどはしない。指示命令も対話も、常に淡々とするようにしている

同社長と別の社員と私が一緒にいる時に、社員から「双方向のコミュニケーションを活発にするうえで、心がけていることはあるか?」という問いがなされたのですが、上記はその問いに対する回答の一部だった内容です。社員の前で言い切るぐらいですので、普段から徹底しているであろうことが伺えます。

同社様は、海外を含む多拠点、多くの従業員を有しながら、成果を上げてきた会社です。同社長は海外経験も豊富です。上記の反面教師体験だけではなく、いろいろな経験も踏まえた中からたどり着いた考え方なのだろうと思います。

同社長とは時々お会いする機会がありますが、確かに感情の起伏をあまり感じません。力強い物言いをする場面もありますが、それは1対多で何かを語りかける時などです。1対1の場面で、相手に向かって強い口調で何かを言い放つなどは、これまでに一度も見たことありません。同じトーンで淡々と話をします。同社社員の方にお聞きしても、同じ印象のようです。

先日の投稿では、吉田松陰氏が弟子や子どもに対して穏やかに接し、決して声を荒げることはなかったことも参考に、威圧的な言動自体は指導の本質ではないのではと考えました。まさにそのことを体現している方だと感じた次第です。

ボトムアップ、双方向のコミュニケーション、フラットな組織、心理的安全性、、、いろいろ言っていながらも自らがそれを阻害する言動となっていないか、振り返ってみたいところです。

<まとめ>
反面教師からの学びを、本質的な考え方にまで高めて徹底する。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?