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デジタル化を考える

先日、経営者の集まる勉強会で、デジタル化について話題になりました。事業や業務のデジタル化はDXなどと呼ばれ、課題テーマになっている会社も多いことと思います。

意見交換で印象に残った点を3つ挙げてみます。ひとつは、紙の工程を圧縮することによる効率化の効果は予想をはるかに超えて大きい、ということです。

中小企業を中心に、現在でも受発注などFAXでやり取りされている情報があります。参加者様の中には、取引先とFAXでやりとしていたものをすべて電子データ化・メール添付送信にしてみたという単純な置き換えをするだけでも、全社員の残業時間が半分になったそうです。

そして、FAXでやり取りしていた情報の保存先も、紙ファイリングからサーバ上のフォルダに変わりました。これまでは、後日その情報を閲覧しようとすると、書類棚まで行く、紙ファイルを開く、紙をめくっていく、という工程が必要でした。今は、PC上でキーワード検索をするだけで電子ファイルが出てきます。

同参加者様いわく「いつかはやらなきゃと思っていたが、今までの作業への慣れもある。緊急度も低いテーマなので放置してきた。しかし、やってみたら、1日でも早くやっておけばよかったと実感している」とのことでした。

職場によってはとっくの昔に実施済みで、何をいまさらというところも多いかと思います。そのうえで、例えば「ほとんどの紙工程はなくなったが、請求書だけは印刷して郵送している」といった組織も多いのではないでしょうか。

ある参加者様からは、「請求書は紙がよいという取引先様もあるため、そのような取引先様に配慮して請求書は紙印刷・郵送していた。しかし、方針を変えて、「請求書はPDFのメール添付送信にします。紙での印刷・郵送をご希望なら個別にご連絡ください」という対応にした。その結果、紙で郵送を望む取引先様はほとんどない。希望される取引先様は例外として覚えておけるぐらいの件数」というお話がありました。

小さなことですが、「言ってみれば通る。やってみれば相手もそちらのほうが便利と気づく」ということも多いのだと思います。

2つ目は、すぐできること、今使える資源を生かすということです。

「DX」などと大上段に聞くとたいへんで、何をどこから始めたらいいのか分からなくなります。自社にとって必要なこと、できることとして何があるのかを考える視点も大切だと思います。

同勉強会では、「RPA」(アールピーエー)が話題になりました。RPAとは「Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)」の略です。作成したシナリオに沿って作動するロボットによって業務を自動化するものです。エクセルやWebブラウザー等で行うことが多いルーチン業務について、ロボットによって自動化する仕組みを言います。

処理ルールが明確で、人間の判断や介入の必要がない業務、正確性が求められる業務などが対象となりえます。例えば、データ照合の確認業務、複数のアプリケーションやソフトにまたがって検索、複製、入力など行う業務などに向いているとされます。量が少ないとさほどの効果は望めませんが、定型の処理内容の業務が大量に発生している場合は、RPAの導入によって工数や人力の削減が見込まれます。

同勉強会では、RPAについて知っている経営者は少数派でした。大きなデジタル変革などを必要としないビジネスプロセスや組織規模であれば、DX戦略というよりRPAの導入のほうが実践的で効果も高いということが当てはまる場合も多いものです。成果を上げるために、「自社に合った今できること」を探していく視点が大切だと思います。

3つ目は、自社の商品・サービスにとっての、人が介在することの意味を明確にする必要がある、ということです。

店舗関連の事業を営む経営者様からは、どこまで無人化すべきかが今後大きな課題になるだろうという問題提起がありました。店舗で自動精算機の導入を進めているそうですが、何百万円の商品のお買い上げ時には、これまではカードや領収書を丁寧に手渡しし、最敬礼でお見送りするというのが習わしでした。これが、自動精算機で機械的に領収書が出てくるという、重みのない精算方法でいいのだろうかというわけです。

そのうえで、このことも杞憂なのかもしれません。そもそも、若手世代は店舗よりスマホでの買い物を好む人も多いものです。ある経営者様は、息子が店舗で実際に見ることが一度もなく、ネットで数分調べただけで新車を購入・決済しているのを見てあまりの価値観の差に驚いたと言います。こうした流れは今後も強まると想定されます。今後も店舗で実物を見て意思決定するのを好む人の割合は一定数いると想定されますが、それでも自動精算機への心理的な違和感は特に持たないかもしれません。

一方で、AIが出力したデータ情報を機械に処理されたり機械的に読み上げられたりするだけでは納得できないようなサービスもあります。例えば医師、カウンセラー、学校教員、スタイリストなどが担っている機能です。

自社が提供している商品・サービスにおいて、何をどこまで人が介在することに意味があるのかを、改めて問いかけることがこれから求められるのだと思います。

<まとめ>
紙工程を圧縮するだけでも、相当な効率化が見込める。

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