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部活存続のテーマから考える

知人から先日、ある学校の部活動の話を聞く機会がありました。知人は同部活の卒業生なのですが、その部活が位置づけ変更となって同好会になるというお話でした。

同部活は歴史もあり、これまでに全国大会で実績を残すなど活動的な部活です。同部活目当てで入学してくる学生も多いそうです。それが、顧問も置かない、大会出場を前提としないことになり、同好会に変わるというわけです。発端となったのは教師の働き方改革だそうです。

そのお話から、3つのことを考えました。ひとつは、現状で破綻している仕組みは早急に見直す必要があるということです。

2023年12月1日のNHKニュースウェブで、日本教職員組合による調査結果を紹介しています。2023年7月から8月に得られた、小中学校や高校などの教員ら、合わせて5809人からの回答結果です。それによると、1学期の平均的な勤務状況について、持ち帰り残業を含めた1か月あたり実質的な時間外労働の平均が次の通りとなっています。

中学校:116時間28分
小学校:91時間8分
高校:80時間16分

「過労死ライン」とされる月80時間を超える状態が続いています。さらに、一日当たりの平均休憩時間は12分余りで、小中学校では「0分」という回答が4割に上っているそうです。持続可能性がある状態とは言えません。

これは当事者の頑張りや気合いで解決していけるものではなく、仕組み自体を変えないといけないレベルの状態だと思われます。仕組みが成り立っていないものを、その時担当している人の属人的な対応に依存するというやり方は、いつか破綻します。見直しが必要でしょう。

2つ目は、何を目的にするかの視点です。

部活を維持するか、同校のように継続可能な別の形に変えるか、廃部にするか、どれが適切なのかは置かれた状況と当事者の判断になってくるので、一概に言えないと思います。教員にとって部活指導の負担は大きく、教員の働き方改革で主な対象となりやすいのが実情です。上記労働環境の観点からも自然な流れです。

そのうえで、教育効果の観点から部活の意義が語られるのもよく聞くます。同行のその部活も歴史があり、毎年新入生で入部希望者も一定数いて、その部活を目当てに進学してくる生徒もいると聞きました。

十分検討されたうえでの決定だろうとは想像しますが、働き方改革のために業務を効率化するという手段と、建学の理念に沿った教育を実現するという目的とが、入れ替わっていないかどうか、立ち止まって確認してみるステップは必要だと思います。

3つ目は、業務再編と新たな人的リソース活用の視点です。

働き方改革は、単に労働時間を短縮するという取り組みを超えた、生産性の向上の取り組みです。その視点から、業務に対しては主に次のアプローチが考えられます。

・効果の低い業務をやめる
・業務を効率化する(圧縮して減らす)
・業務を再分配する(部活指導を得意とする教員は、部活以外の事務業務等から解放するなど)
・新たな人材を雇う(スポーツの指導者資格を持つ人などを外部から登用するなど)
・外部組織と連携する

部活動の地域移行などを進め、効果を上げている地域もあります。あるいは、単独では部活動が成り立たなくなった学校が、他行と連携しチーム化することで生徒が全国大会に出場できるようにする例もあると聞きます。

先日、コーチ仲間の同窓会に参加してきました。参加者の中には、人を導くことも好きで、昔取得したコーチの資格を有していながら、仕事を引退した後これといって決まった活動をしていないという人材も散見されました。思い付きですが、このような人材も部活をサポートできる存在の候補になるのではないかと思った次第です。

その部活動が、残すべきものであると判断されたとしたら、問題解決の手段を自校の範囲内に限る必要もありません。視野を広げれば、いろいろな問題解決の方策があるかもしれません。

これと同じようなことは、企業の中でも起こっているはずです。

・その事業活動は、続けるべきものなのかどうか
・続ける、やめる、どちらの判断をした場合でも、それが手段と目的の逆転になっていないか
・それを続けるリソースの確保のために、やめてよい別の事業活動や減らしてよい事業活動はないか
・自社内のリソースだけにこだわらず、外部リソースの獲得や連携などで対応できないか

振り返ってみたい視点だと思います。

<まとめ>
自組織にないリソースは積極的に外部リソースを活用する。

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