顧客志向・長期的視点で不祥事を減らす
先日まで、日経新聞で「企業の不祥事と倫理」というテーマで連載がありました。企業犯罪や不祥事と企業倫理の関係を、法・経済・心理などから考察した内容です。
1月30日の「企業の不祥事と倫理(9) 信頼への投資が利潤を生む」は、次の内容でした。
上記には、不祥事に対して私たちがどのように向き合うべきなのか、よい組織文化と、よい文化に根差したよい行動が、不祥事のない適正な組織活動につながるという本質が凝縮されていると感じます。つまりは、顧客志向であること、長期的視点であることです。言い換えると、内向き志向でないこと、短期的視点でないこと、です。
上記記事に関連して、2点考えてみます。ひとつは、不正はいつか必ず顧客に伝わるということです。それも、以前より伝わりやすくなっているということです。
上記記事では「1回だました分だけ得をする」とありますが、見えにくい不正であれば1回だけではなく複数回続くかもしれません。
例えば、以前から時々問題化し指摘されながらもなかなかなくならない、品質不正問題があります。本来守るべき基準に達していない状態であることを認識していながら、意図的にそのまま出荷することなどです。基準を少し下回るぐらいであれば、本来あるべき品質に未達だということに気が付かない顧客も多く、その場合は1回だけでなく継続的に不正が可能になるかもしれません。しかし、何かのきっかけで必ず気が付かれるものです。
また、内部の人材を含め、その問題にかかわっている人が「何かおかしい」と感じたことが広がることで、不正問題として認識されることになります。以前の環境と比べて、SNSなどを含めた情報伝達手段が発達していますので、こうした事象も拡散されやすくなっています。不正はいつか顧客に認識されるという原理原則を改めて認識することが大切で、それに加えて、より早く、より広くそれが実現されるようになっているということも、認識すべきなのだと思います。
もうひとつは、組織文化に根差した不正行動は、理由もなく自然発生的に湧き上がって出てくるものでもないということです。言い換えると、不正行動や、不正行動を促す文化につながる仕組み、あるいは仕組みの欠陥があるということです。
このことに通じるヒントを、2月4日の日経新聞記事「アフリカ、権威主義望まず」に見ることができます。ナイジェリアの鉱業相や世界銀行副総裁を歴任したアフリカ屈指のエコノミストであるオビアゲリ・エゼクウェシリ氏が、次のように語っています。(一部抜粋)
「あの会社では不正が起こる。そういう会社だ」というのは、表面的な事象をとらえた言い方としては合っているかもしれませんが、本質ではないということです。それを起こさせる仕組みや仕組みの欠陥が問題の真の要因ということです。
そして、どんな組織であっても、時間の経過とともに仕組みが劣化していないかを振り返る必要があると思います。
同時に、上記記事が示唆するように、内向き志向・短期的視点の現状から、顧客志向・長期的視点で仕組みの整備・運用によって、不正のない状態へと変えられるという認識も大切なのだと思います。
<まとめ>
顧客志向・長期的視点で、組織活動に必要な仕組みをつくる
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