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手書きの「手紙」は最強の営業ツールである~銀行の「マーケティング」と「営業企画」の教科書~

先日、あるSaaSベンダーの営業の方(面識なし)から、7枚にもわたる長文のお手紙をいただきました。
「お役に立ちたいので、ぜひ面会してほしい」とのこと。
正直、心を動かされました。

文末には、「近日中に担当が電話するので、回答してほしい」と。
そして、1週間たち、2週間たち、1ヵ月たち・・・
あれ、連絡がない??なぜなぜ??


手書きの「手紙」の威力はすごい!

① 銀行員貸付係Kさんの事例

この手紙をいただいたとき、優秀な若手行員だったKさんのことを思い出しました。昔々、約20年前の話です。

当時、営業店の貸付係で、消費者ローン(マイカーローンやフリーローン)の推進を担当していたKさん。本部は、ターゲティングリストを営業店へ提供し、電話セールスを指示。しかし、指示通りのことを愚直にやっても、なかなか結果がでませんでした。

そんな中、Kさんは本部の指示を無視し(笑)、自分なりのやり方で推進をしようと心に決めました。
それが「手書きの手紙作戦」です。

Kさんは、窓口業務が終わった16時から18時、毎日会議室にこもり、ひたすら手紙を書き続けました。今どき、上司がこんなことを指示したら、「パワハラ」認定間違いなしですよね。しかし、彼は、自分の意思で1日10~20通、来る日も来る日も手紙を書き続けたのです。
そして2つの変化が現れます。

ⅰ)電話を受けるお客さまの反応が全然違う

電話セールスをしても、依然はこんな感じでした。
Kさん:「〇〇銀行のKと申します。今日は○○ローンのキャンペーンのご案内で・・・」
顧客A:「ローンは興味ないわ。今、忙しいから・・・」

これが手紙を出した相手だと、こう変わります。
Kさん:「先日お手紙を差し上げておりました〇〇銀行のKと申します。」
顧客A:「あー、Kさんね。先日はお手紙ありがとう。そうね・・・私は借入れの予定はないけど、甥が車買うって言ってたから紹介してあげるわ。」

ⅱ)お客さまから声をかけてもらえる

銀行窓口にて
顧客B:「こんなお手紙いただいたのだけど、今日はKさんいるかしら」
Kさん:「はじめまして、Kと申します!」
顧客B:「あら、Kさん。今どきあんな手紙いただくことなんてないから、お会いしてみたかったわ。今日は娘の教育資金のことで・・・」

いかがですか?Kさんに、劇的な変化が訪れました。
Kさん、現在は当行のトップ営業の1人です。若いときに、お客さま一人ひとりに寄り添った手紙を書き、想像力を養ったことが、きっと今につながっているのだと思います。

② 大手Web広告代理店Aさんの事例

私自身、手書きのお手紙を仕事で頂戴したのは、今回で2回目でした。
1回目は、某大手Web広告代理店の福岡のトップの方からでした。この会社、今ではすごい会社になっていますが、当時は平均年齢20代のまだまだ若い会社でした。
Webマーケティングの専門家ですから、当然デジタルが強いはずですよね。にもかかわらず、あえて手書きの手紙というアナログな手法を使われたことに興味を持ち、お会いしたい気持ちが芽生えました。
その後、いくつかのプロジェクトで協業させていただくことになりました。

手書きの手紙をどう活用するか?

事例は、いずれも新規顧客開拓のものでした。
しかし、確度の低い新規顧客開拓で、やみくもに手紙を書いてしまうのは時代に合わないようにも思います。
やはり、一度商談を行った後、「ここぞ!」というときに活用するのがもっともよいのではないでしょうか?
ライバルと受注を争っているときは、心情的に「どちらが自分の会社に寄り添ってくれるか」が採用の決め手になるからです。

手紙の内容も重要です。

具体例として、NISAの契約を当行でするか、ネット銀行でするか、迷っているお客さまへお手紙を書いてみます。

○○さま

先日は、数ある金融機関の中から、私ども○○銀行にご来店いただき、誠にありがとうございました。

○○ちゃん(←3歳のお子さん)の教育資金についてのお考えをお聞きでき、大変うれしく思いました。将来のことも、しっかりと考えてもらえてる○○ちゃんがうらやましいです。

その後、積立のご検討はいかがでしょうか?
当行でNISAをご契約いただきますと、何かご不明なことやご心配なことがあっても、いつでもご相談いただけます。
残念ながらネット証券のようにポイントはお付けすることはできません。
しかし、その分、いつでも○○さまに寄り添い、目標に向かって伴走させていただくことができます。

ご案内したキャンペーンは4月末までとなっておりますので、それまでにまたお立ち寄りいただけるとうれしいです。

PS:幼稚園の入学式は、いかがでしたか?○日はお天気もよく、素敵な1日になったことでしょう。今度はぜひ、ご家族そろってご来店ください。○○ちゃんへ入園のプレゼントもご用意してお待ちしています!

いかがでした?
私が工夫したポイントは次の通りです。
① はじめはポジティブに(うれしい・うらやましい)
② お客さまのプラベートに踏み込み、親近感を演出(堅苦しく書かない)
③ 「子どもの名前を覚えてくれている」というサプライズ
④ ネガティブなこともあえて伝える(ポイントはつかない)
⑤ 追伸で心を動かす

お客さまに手紙を書くときも、ラブレターのような感覚で書くことが大切ですね!

悪魔のロボットを発見!

ここまで、昭和の人間が、アナログのすばらしさを語ってきたのですが、先日恐ろしい話を聞いてしまいました。

それが、こちら「手書きロボット」(汗)

これ、開発した人、ほんとすごいですね・・・
印刷されたものは、なんとなくわかりますが、ロボットがボールペンで書いた文字は信じちゃうよなぁ・・・
というわけで、みなさん、企業から手書きの手紙が届いたときは、ちょっと疑ってみましょう(笑)

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