見出し画像

フードテック革命~代替プロテイン~


「どうやって世界100億人の胃袋を満たすのか?」

2050年、そう遠くない将来に世界人口は19年の77億人から急増し97億人に達するという国際連合の予測がある。

世界の人口が爆発していく中で、現状のままの食料、特にプロテイン生産体制では持たないという強い危機感がある。

動物を育てるには、飼料、水、空調管理など膨大なエネルギーを必要とし、植物に比べて環境負荷は非常に高い。
地球上で暮らす人間全体:1日に水200億リットル、食料10億トン消費。
地球上にいる家畜としての牛15億頭:1日に水1700億リットル、食料600億トン消費。

だから、代替プロテイン市場が盛り上がっているのだ。

1、代替肉の進化

レベル1:肉の代用品
豆腐ハンバーグなど肉を他のもので置き換えており、味わいからして自分が食べているものが肉でないことが明確なもの。

レベル2:肉もどき
肉の食感を中心に再現したもの。肉っぽさはあるものの、肉の香りなどはせず、感想した食材を戻して調理するなど、肉とは異なる体験が残る。
乾燥大豆ミートなど。

レベル3:肉に近い喫食体験
ベジバーガーなど、肉の食感だけでなく味も再現しようとしたもの。ただし肉の香りはせず、ベジタリアン向け。肉好き人々を満足させるには至らない。

レベル4:肉と同じ調理〜喫食体験
インポッシブルフーズやビヨンドミートに代表される植物性代替肉。鮮肉としての状態で販売され、調理すると赤みが茶色く変化し、肉汁とアロマが広がるなど調理体験まで肉と同じにしているもの。味わいや食感も本物の肉と大きく変わらず、肉好きの人々にとっても満足度が高い。

低カロリーやゼロコレステロールなど、機能として肉に勝る部分もあるものの、塩分が多いなど健康的な食品とは言えない面がある。

レベル5:肉以上の機能性
最先端プレイヤーが目指しているレベル。
調理、喫食体験が本物の肉と変わらないうえ、肉以上の栄養素や保全性を実現したもの。もちろん健康的な価値も担保されている状態。

2、原料・製造手法の視点から見た代表的なカテゴリー

①植物性プロテイン
植物性原料から作り出される。原材料になじみがあることから生活者の抵抗感は少ない。代替肉スタートアップの代表格であるインポッシブルフーズやビヨンドミートはいずれも植物性プロテインを使っている。(→2社の詳細はこちら)

②マイコプロテイン(糸状菌)
マイクプロテインとは、土壌から得られる糸状菌を培養し、加工したもの。欧州では30年以上前から流通している「QUORN(クォーン)」が代表的な商品。

無題のプレゼンテーション (2)

③昆虫食
生産の効率性が昆虫食の魅力。昆虫食は文化によってはなじみのない地域も多く、人間が食するのには心理的なハードルは高い。

④培養肉
牛や豚、鶏などの細胞を培養して肉を製造する手法。肉以外にも魚やエビなどの培養技術も発達しつつある。環境負荷も倫理面の負担も下げられる。

⑤微生物・発酵
微生物を使って発行を促すことでプロテインを組成する手法。植物性代替肉と培養肉に続く「第3の波」と呼ばれる手法。

商用としてすでに市場によく出回っているのは植物プロテイン、マイコプロテイン、昆虫食である。

3、日本企業と代替肉

日本でも18年に大塚食品が大豆ベースの代替肉ハンバーグ「ゼロミート」を発売するなど、代替肉市場は動き出している。

画像2

他にも、日清食品と東京大学がタッグを組み、厚みのある培養肉ステーキの開発を進めている。

無題のプレゼンテーション (3)


また、日清食品の「カップヌードル」に使われるサイコロ状の具材「謎肉」は大豆由来の素材と豚肉などを掛け合わせた「大豆ミート」である。

そもそも「日本では代替プロテインは必要なのか」という意見も多い。
日本の食生活における食肉の存在感が他国より小さいのだ。

ユーロモニター社の調査によると、米国、中国、ドイツ、フランス、ブラジル、イタリアなど欧米と中国ではプロテインの摂取源の1位が肉である。続いて乳製品が続く。

しかし、日本のプロテインソースの第1位が米・パスタ・麺類となっており、これらが肉を上回る。

和食には大豆をベースにしたものが多く、もともと植物性プロテインをいろいろな形で摂取してきた。
わざわざ代替肉のレベル4まで引き上げる必要があるのかと、疑問に思う人も少なくない。

日本は、代替プロテインよりも日本に合った食生活のアップデートが必要なのかもしれない。

※この記事は「フードテック革命」を参考に作成しています。





この記事が参加している募集

推薦図書

一人暮らしをするためにお金を貯めています。サポートしていただけると、とても嬉しいです。