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吃音芸人の笑いが是か非かについての論争があまりにずれている理由と、隠された問題点を解説

毎週、多様性に関するニュースをピックアップし、我流に解釈&解説をすることで、多様性を考えるきっかけになり、人と違うのが当たり前の世の中になってほしいと奮闘中のマガジン『Accept』。
毎回一週間かけてネタになるニュースを、
「今週こそは見つからないんじゃないか」
とヒヤヒヤしながら探しているのですが、何だかんだで見つかってることに、記事ができることへの安心とともに
「なんだかなぁ」
という気持ちになります。
記事に取り上げられるということは、まだまだ多様性は当たり前ではないということですからね。

そんな今回は、こちらの記事についてです。

『水曜のダウンタウン』という番組内、先輩芸人が後輩芸人を、“起こり散らして帰らせる”というドッキリ企画で、後輩芸人に吃音芸人と言われているインタレスティングたけしさんが出ており、その内容が吃音者への差別的表現が含まれているとして、日本吃音協会から抗議があったということです。

その後も波紋は続き、今度は吃音協会へ
「吃音者は芸人になってはいけないということか」
等と言った抗議が相次ぎ、全体的に炎上騒ぎになったとか。

なぜ、半年以上前の話が今になってニュースになっているのかというと、
下記のYouTubeで、朝日新聞が独自の取材をしたからだそう。

半年前の炎上騒ぎ以降、インタレスティングたけしさんがテレビに出る機会がなくなりました。
それを取り上げ、半年たった今、あの時どういう状況だったのか、今どう思うかという両者の考えを中立的に取材されています。

そして、これをもとに、是か非かの論争がSNSでは行われています。

■今回の問題点は2つ
この論争はいくつかの問題点があると思われますが、今回はこの2つに絞って持論を述べたいと思います。

1、感情論では論争ができない

個人的な話ですが、私は障害だけでなく、容姿など個人の特徴をネタにして「笑われる」というお笑いが好きではありません。
特徴をきっかけに、知的で気の効いた切り返しをすることで笑いに繋げるのは好きです。しかし、ただ単にその事実を笑うのは差別的なニュアンスが含まれていると思っています。
ただ、これは私の好みの問題なので、
「笑われるというのは本当の笑いではない」
なんて主張は違うと自覚しています。

今回の論点も、それと同じではないでしょうか?
「吃音で笑うのは是か非か」の論争は、ただ単にお互いに好みを言い合っているだけで、そこに論理的な理由は存在しないように感じます。
「吃音で笑うのは是か非か」ではなく、それぞれにとって面白いか否か、そして面白いと思う人が多数いればその人は人気者になる、ただそれだけの話であり、笑いを是か非かで論じようとするのは、ナンセンスな話です。

YouTubeなどで個人が作品や意見を配信しやすい昨今では、テレビに出ていない芸人さんもたくさん活動しておられ、その中には障害当事者の方もたくさんおられます。知るきっかけ、興味を持つきっかけとなることは大変よいことです。
しかし、「芸人」を名乗る以上、良いか悪いかのジャッジは「面白いか面白くないか」です。
面白いか面白くないかはそれぞれの好みでジャッジされ、面白いと思う人が多数派になれば知名度が上がります。(忖度とかは横に置いています)

障害があるということで、知るきっかけとしてはほかの方よりもハードルが低くなっている分、そこから「面白い」と思ってもらうまでのハードルは高くなっているかもしれません。しかし、今「芸人」の障害当事者の方には、ぜひそのハードルを越えていただきたいです。

2、腫れ物にさわる扱いが1番の問題

今回、一番残念だったのが、炎上後インタレスティングたけしさんが番組に出演することがなくなったことです。
たけしさんは何も悪くありません。出演がなくなった理由が吃音だということも想像でしかありません。
もし、仮に炎上がきっかけとなったのならば、出演をなくしてしまうのではなく、吃音協会の方々のサポートを受けながら、吃音者と笑いを共存する方法を模索していただきたかったです。

先週、アメリカでの多様性あふれるバービー発売の紹介をしました。バービーの販売元マテル社は、当事者とともに人形を作り上げていました。日本でも、映画やドラマでいわゆる「マイノリティ」を題材にしたものを取り扱う際は、その専門家や当事者が所作指導や協力という形でスタッフとして入っていることが多々あります。
炎上が起こったことは事実として受け止め、その炎上を肥しとして、新たな風景を作っていただきたいです。

■“マイノリティメガネ”を外させるのが今後の課題

人は、知らないものや、個人基準の「フツー」の外にあるものに、警戒心を感じる生き物です。しかし、知っていくことにより、対象に対して好意を持つようになります。これを「ザイアンスの法則」「単純接触効果」などと言われ、マーケティングの世界では有名な法則です。
私たちが今、LGBTQや障害者など、いわゆる「マイノリティ」の方に対し過剰な反応を起こし、是か非か論争にまで発展してしまうのは、その当事者を「知らない」というのが大きな課題としてあるからではないでしょうか?
知っていくことにより、マイノリティは特別なものではなく、当たり前に存在する対象となります。そしてその時、『多様性社会』になるのです。

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