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試合中における柔軟性の重要性(レバークーゼンに見た、敵陣でのプレッシング)

20/21 ブンデスリーガ 第2節
レバークーゼン vs ライプツィヒ

~レバークーゼンに見た、試合中の高い柔軟性~

 サッカーは複雑系であり、それゆえ試合中には突発的な変化が起こります。そのため、その変化に対応するために安定したレジリエンスが求められます。例えば、相手が試合中に配置を変更してきた場合や自分たちが準備したものが上手くいっていない時に、その変化や状況に対応するためにはチームや選手の柔軟性がとても重要になると思います。
 そんな中、ブンデスリーガ第2節に行われたレバークーゼンvsライプツィヒで見られたレバークーゼンのプレッシングにおける柔軟性にとても関心しました。


スタメン(home : レバークーゼン)

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(away : ライプツィヒ)

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結果 : レバークーゼン 1 - 1 ライプツィヒ
( 前半 1 - 1、後半 0 - 0 )


レバークーゼンの守備
(プレッシング)

 レバークーゼンは敵陣でのプレッシングの局面において、前半34分ほどの前後でプレッシングの構造を変化させていた。そのため、前半34分の前後で分けて分析する。

【前半34分まで】

① 開始点
 レバークーゼンは敵陣でのプレッシング時、原則として下図のエリアがプレッシングの開始点となる「超攻撃的プレッシング」を行っていた。
※ミドルプレス(守備的プレッシング)も行っていた。

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② 陣形
 陣形としては、下図のように「4-1-2-3」となる。具体的には、相手のアンカーの位置に立つ相手CBと相手ボランチ(ウパメカノ、テイラー・アダムス)に対してインサイドMFのデミルバイとヴィルツがマークし、アンカーのアランギスは相手のトップ下に立つ選手をマークする。また、前線の3枚は相手のサイドのCB(以下ハーフDF)とGKに対してそれぞれが監視する。

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③ スイッチと追い込み方
 プレッシングのスイッチとなる選手はウイングのベララビ(右)とディアビ(左)で、相手GKから相手ハーフDFにボールが入ったところをアプローチする。
 このとき、左右のサイドで対応の仕方が多少異なっていた。
 まず、右サイドでは、下図(2枚目)のようにスイッチとなるウイングのベララビが、相手アンカーの位置に立つ選手へのパスコースを消しながら相手ハーフDFにアプローチし、サイドに誘導する。このとき、インサイドMFのヴィルツが大外に立つ相手WBとアンカーの位置に立つ相手のどちらにもアプローチできる位置に立つ。
 そして、下図(3枚目)のように、ボールが大外のWBに出るとインサイドMFのヴィルツが寄せ、全体がボールサイドにスライドし、ボール周辺のエリアでは、CFのシックが相手ボランチ(相手CB)を、SBのラース・ベンダーが相手ウイングを、アンカーのアランギスが相手トップ下に立つ選手をマークする。

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 一方、左サイドでは、スイッチは右サイドと同様で、下図(2枚目)のようにウイングのディアビが相手アンカーの位置に立つ選手へのパスコースを消しながら相手ハーフDFにアプローチし、サイドに誘導する。
 ここで、右サイドと異なる点は、大外の相手WBに対してSBのシンクフラーフェンが寄せる点と、インサイドMFのデミルバイ(このシーンではヴィルツ)は相手アンカーの位置に立つ相手と内側に立つ相手ウイングをマークできる位置に立つという点である。
 そして、下図(3枚目)のように、ボールが大外のWBに出るとSBのシンクフラーフェンが寄せ、全体がボールサイドにスライドし、ボール周辺のエリアでは、CFのシックが相手ボランチを、インサイドMFのデミルバイ(このシーンではヴィルツ)が相手ウイングを、アンカーのアランギスが相手トップ下に立つ選手をマークする。

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【前半34から】

① 開始点
 開始点は前半34までと同様に「超攻撃的プレッシング」を行う。


② 陣形
 陣形としては、下図のように、相手の陣形に合わせるように人を配置する。具体的には、左インサイドMFのデミルバイがCBの左側に下りて3バックとなり、また、CFのシックがトップ下に下りて、右インサイドMFのヴィルツと共に相手ボランチの位置に立つ2枚の相手をマークする。
 そして、全体としてマンツーマン(監視マンマーク)となる。

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③ スイッチと追い込み方
 プレッシングのスイッチとなる選手は、ここでもウイングのベララビ(左)とディアビ(右)で、相手ハーフDFにボールが入ったところをアプローチする。
 このとき、ボール周辺のエリアではそれぞれが対応するマーカーへのマークの強度を高める。

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④ ロングボールへの対応
 相手がロングボールによるダイレクトなビルドアップを行う時は、下図のように3バックに可変した左インサイドMFのデミルバイとCBのタプソバ、スベン・ベンダーに加えSBのシンクフラーフェン(左)、ラース・ベンダー(右)の5枚で最終ラインを形成し、数的優位を保つ。

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 レバークーゼンは、前半の序盤では前者の「4-1-2-3」のプレッシングが上手くはまっていたのですが、CFのシックが相手GKを監視していたため後方では数的不利になってしまい、第1プレッシャーラインを越えられると簡単にゴール前まで運ばれてしまうというシーンが多く見られるようになりました。そこで、すぐにプレッシング時の人の配置を変更して全体がマンツーマンとなることで、後方での数的均衡を保ち、プレッシング時の後方の強度を高くするという狙いがあったと思いました。
 特に、プレッシング以外の局面では攻撃的なインサイドMFとしての役割を担うデミルバイを最終ラインに落として3バックを形成したのは驚きでしたが、とても機能していたと思います。
 以上から、事前に相手を分析してゲームプランを準備することはとても重要ですが、それと同様に試合中に起こりうる変化に柔軟に対応することも重要であることを学びました。
 そのため、チームのゲームモデルやプレー原則を考える際は、レジリエンスの向上を意識して考える必要があるということを改めて知ることができました。

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