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ローマの秋~シーズン開幕

 イタリアでは、というかおそらくヨーロッパの国はたいてい似たようなものではないかと思うが、音楽や劇場は、学校などと同様に秋から春を1シーズンとしている。最近はやや変わってきているものの、基本的には映画も同じで、夏の間はさまざまなフェスティバルなどあるけれど、古い映画を見たり、そのシーズンの話題の映画が改めてかかったり、ということが多い。

 ローマのサンタ·チェチリア国立アカデミー交響楽団のシーズン開幕公演が、レスピーギの「ローマ三部作」だというので、これは!と聴きに行った。同交響楽団のホームは、ローマ北部にある、レンツォ·ピアノの設計で2002年に完成した複合施設「Parco della Musica(音楽公園)」のメインホール。新しい建物だけに、さすがに広々として設備もまあまあだし、音響も良い。何より、旧式のオペラハウスと異なり、どの席でも舞台が見えづらいとか、そういった問題はない。
 オーケストラのバックというか頭上に、大きなスクリーンがあって、青空に雲の映像が映っていた。何だろう?と思っているうちに、指揮者入場、拍手。···スクリーンには、だたっ広い野っ原に何かを建設している様子、やがて「古き良き」時代、モノクロ時代のイタリア映画の、どうやら撮影風景らしき映像が続々と流れている。···どうやらローマ南部にある撮影所「Cinecittà(チネチッタ)」の建設の様子だった模様・・・と、何となく、まさにそれが映画的内容だったこともあり、まるで映画館で予告編を見ているかのような気分で見入っていたのだが、その間に音楽がどんどん進んでしまっていることに気がついた。・・・!!!一番聴きたかった「ローマの松」が、いよいよハイライトにかかろうとしていた。・・・ガーン・・・。
 「松」を終えるとどこからともなく聞こえる合唱。リストの 「O Roma Nobilis(おお、気高きローマ)」、「Dall’Alma Roma(恵み深きローマ)」を、レスピーギの「ローマの松」、「ローマの噴水」、そして「ローマの祭り」の間に挟んで聞かせるという変わったプログラム。全面ローマ礼賛というべきか・・・(笑)。合唱団はステージに姿を表さずに後方にいて、その合唱の時だけ、ステージ左右上方の客席の扉が開き、その奥から声が流れてきていた。
 「噴水」の時に流れていたのは、何やらカウボーイ風の青年が、馬とともに大自然の中を旅する···といった映像。音楽に合うふうでもなく、ひたすら???だったのだが、映像アーチストで、一昨年のヴェネツィア映画祭には、ヴェネツィアのドキュメンタリーで参加していたユリ·アンカラニ監督の新作だったらしい。数日後に開幕したローマ映画祭とのコラボ上映であったことを後から知った。「祭り」も映像があったはずなのだが、いったいどんなだったか、よく覚えていない。お祭りっぽい映像ではなかったことだけは確かだけど···。

映画祭準備中・・・

 ローマ·オペラ座のシーズン開幕は、ヘンデルの「エジプトのジュリオ·チェーザレ(ジュリウス·シーザー)」。馴染みのない演目だし、ローマのオペラ座は昨年「トスカ」を観に行って、もう、いっか、と思っていたのでスルーしていたのだが、カウンターテナー3人の競演で、それはもうすばらしい!と聞いて急遽、出かけた。最終日の土曜日で、ほぼ最後の1席をゲット。仕事の疲れも溜まっていたし、億劫になりかけていたけれど、これがほんとに、行ってよかった!
 「エジプトのシーザー」と言うからには、もちろんとクレオパトラのロマンスありきなのだろうと思って臨んだが、そこはそれ、もちろんお約束のロマンスもありつつも、カウンタテナーの3人が次々と、折り重なるように出てくるのが美しく豪華で、なんといってもドキドキ、ワクワクすばらしかった。以前「トスカ」でちょっとがっかりしてしまった(失礼!)オーケストラも、何だか今日はいいじゃないの!(偉そう···。)バロック音楽の方が、あ、つまり人数が少ない方がいいのかも???などと推察したり。
 唯一残念だったのは、現代風の衣装。サラリーマンのようなスーツのシーザー、文字通り膝小僧を出した場末の娼婦のような(古い···)ペラペラの服装のクレオパトラ、アメリカ中部の牧歌的高校生みたいなポロシャツ姿のセスト(ポンペオの息子)、小学校の卒業式の校長先生のような(よく言えばエレガントなある程度の年齢の)その母コルネリア···。ミニマムなステージは、それはそれで悪くない。所詮、どの時代も民族も変わらない、人と人とのドラマと言ってしまえばその通りなのだが、なにせ、シーザーだのクレオパトラだのと言えば「壮大な」歴史物語の中の人というイメージに慣れすぎているし、ビジュアルのイメージも持っている。必ずしも時代考証に沿った衣装にする必要もないと思うけれど、もう少し違った提案を観てみたかった。

機会があったらまた鑑賞したいヘンデルのオペラ

 ローマ色たっぷりで開幕した今シーズン、これからまたどんな出会いがあるのか楽しみにしている。

Roma
DIRETTORE Iván Fischer
VIDEO ARTISTA Yuri Ancarani
Respighi Pini di Roma
Liszt O Roma Nobilis
Respighi Fontane di Roma
Liszt Dall’Alma Roma
Respighi Feste Romane
Accademia Nazionale di Santa Cecilia

Giulio Cesare in Egitto

DIRETTORE Rinaldo Alessandrini
REGIA Damiano Michieletto
SCENE Paolo Fantin
COSTUMI Agostino Cavalca
LUCI Alessandro Carletti
MOVIMENTI COREOGRAFICI Thomas Wilhelm
 
PERSONAGGI INTERPRETI
GIULIO CESARE Raffaele Pe
CLEOPATRA Mary Bevan
SESTO POMPEO Aryeh Nussbaum Cohen
CORNELIA Sara Mingardo
TOLOMEO Carlo Vistoli
ACHILLA Rocco Cavalluzzi
NIRENO Angelo Giordano
CURIOPatrizio La Placa
ORCHESTRA DEL TEATRO DELL’OPERA DI ROMA
Teatro dell’Opera di Roma
https://www.operaroma.it/spettacoli/giulio-cesare-in-egitto/

28 ott 2023

#ローマ #ローマ生活 #ローマ三部作 #レスピーギ #リスト #ヘンデル #エジプトのジュリウスシーザー  #ローマの秋 #音楽 #演奏会 #エッセイ  

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