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感謝されない支援

被支援者から感謝の手紙。

福祉の仕事をはじめた頃に
よく先輩相談員へ届いた。

支援のおかげで立ち直れたこと
どれほど支えになったか
どんなに嬉しかったか
あふれる感謝の言葉。

すごいなぁ。
おれにもこんな手紙が
くるくらいじゃないと
一人前とは言えないんだろうな。

そう思っていた。

あれから8年。

おれ宛てに
手紙がきたことは
ただの一度もない。

ある時期から
担当する被支援者が
自立したときに、
できるだけ
喜ばないようにしていた。

自分の担当した人が
就職したり
生活を立て直せたら
そりゃ嬉しい。

でも過度に
それを表現しない。

なぜか。

人に喜ばれることは嬉しいものだ。

だからこそ
相手に喜ばれるために
自分の進路を選んでほしくない。

相談員と被支援員と言えども
何度も顔を合わせれば
身近な存在になる。

人生の選択の理由に
少しでもおれが入ってほしくない。

支援中における
さまざまな本人の選択。

その際にどちらを選ぼうが
私は喜びもしないし
落胆もしない。

そうすることで
選択を誘導したくない。

そして支援の結果。
就職や自立の報告を
被支援者がしてくれる。

決まったよ、就職。

おぉそうですか、よかったね。

うん、よかったよ。

完全に本人が選択した進路を
完全に本人の力で成し遂げた。

だからその後に続く
人生の選択にも
私が喜ぶことによって
少しでも影響を与えたくない。

支援には
いろいろなアプローチがある。

私に感謝の手紙がきたことは
ただの一度もない。

今はそのことを誇りに思っている。

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