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【mid90s】男児かくあるべし。理想の少年時代。

郷愁と憧れと嫉妬のミルフィーユ

90年代を過ごした人も過ごしていなくても思春期特有の子どもの気持ちを上手に表現した作品でした。

自分の事を見透かされているようで、観ていてピリピリと痺れるような感覚に何度もなりました。特にみんなで車道をスケートボードで走るシーンなんて、色んな感情が混ざってもうビリビリボッカン来ちゃうくらいです。

13歳の頃を振り返ると、年上に可愛がってもらう事も多くて、勉強はポンコツだったけど部活は楽しめていたし、そこそこ人気者で常に笑って過ごしていました。

一言で言えば、幸せ者だったのだと思います。

そんな自分でも85分間とは思えない程の濃厚な時間を映画の中の彼らと過ごすと、いかに自分の幼少期が薄っぺらいものだったか思い知らされて少し寂しい気持ちなりました。

それと同時に、自分の息子には彼らのように自由に・自分に正直に・いきいきと過ごしてほしいと強く感じました。

さらに言うと、学校以外に安心できる場所があるというのはすごく大事だなとも感じます。家族ではあまりに近過ぎて言えない事もあるでしょう。そんな中で頼れる兄貴分がいれば親としても心強いです。欲を言えば、もう少し彼らと連携を取りたいところですが。


4人の頼れるお兄ちゃん


4人が4人それぞれ人間味があって素敵なキャラクターをしています。あえてひとり選ぶとしたら誰か。自分ならファックシットを選びます。

えー、やっぱレイじゃなーい?って思いませんでした??もちろんレイが一番誠実で仲間想い。先輩にいたら最高です。もうあんなん誰が見たって憧れるスーパーヒーロー。でも自分にはちょっと眩しすぎて選べませんでした。

フォースグレードはというと優しいし温厚だし、なにより最後にみんなの最高の時間をきちんと形に残していたんだから好感度爆上がりです。30代の自分からしたら、彼の魅力も地味ながら充分伝わります。でも13歳の少年目線で見ると憧れるかというと少し違うかなと。

次にルーベンは?最初の頃の「お礼を言うなんてダサい」とかイキる姿はこれまた30代から見ると可愛いもんです。ですが、そもそも作品内の描かれ方をみるに彼はお兄ちゃんポジには含まれないのかもしれません。

じゃぁなぜファックシットが好きかというと、もうあのふらふらヘラヘラしたあの空気感。ファッションも何気に一番センスあるんじゃないですかね。それに加えてあの金髪うねうねヘアーですからね。危なっかしさとカッコよさが表裏一体です。ひねくれ者で目立ちたがり屋の自分からしたら、魅力の塊に思えて仕方ありません。

小学校が一緒で中高離れたけれど腐れ縁でずっと仲のいい近所の友達、そんな距離感で付き合いたい男です。(彼を真似して私生活でもふざけて「ファックシット」を使うようになってしまいました。とんだなんちゃって野郎ですね笑)

4人のお兄ちゃんといった割りに、ルーベンは含まれないと言いました。じゃぁ3人じゃないか?いやいや、大事なひとりを忘れていませんか。そう、実のお兄ちゃんです。

一見意地悪でクールではない彼は、レイと同じくらい主人公に寄り添って接してくれていたように思います。それは街で遭遇したシーンや、荒れている時期の主人公とケンカをするシーンにも表れています。スケーター4人も素敵ですが、本当の家族の愛情というものはやはり強いと改めて信じさせてくれる彼もまた素敵なお兄ちゃんです。


何でもないようなことが 幸せだったとおもーう♪


冒頭で「自分の幼少期が薄っぺらいものに思えた」と言いました。だけど、きっとそれはそれでよかったのだと思います。

なぜか?終盤レイが「お前は俺たちよりマシな人生を送れている」と諭すシーンがあります。その通りで、大したことない人生かもしれませんが引きでみるとそれなりに幸せなんですよね。

おかれた環境から抜け出す為だったり逃避するための日々を過ごす必要がない、というのは既に高い下駄をはいて人生スタートしているようなもんなんです。

でもそこに気が付けないんですよ、思春期、特に男子は。主人公もレイの忠告の後も相変わらずの生活を送ってしまいますよね。スリルや危険をクールだと勘違いしまう、素直に周りの愛情を受け止められない。

だけど、幼いうちはそういうものなのかもしれません。
特撮ヒーローやプリンセスに憧れる時期が誰しもあります。中には彼らのように特別な人生を送ることができる子もいて、そんな人生はオンリーワンなものだし最高なものです。

だけど、その次にクールな人生って何だろう?と考えた時に浮かぶのは「平凡だけど振り返れば幸せだったなという人生」なんじゃないでしょうか?

もちろん「あがいてあがいてのし上がった人生」も素晴らしいですし、何にも代えがたいものだとは思います。ただ、本人から見て楽しく明るい幸せな人生だったかというと一概にそうとは言えないのではと思います。



自分はこの映画を観て、「もっと若い時にこの作品に出会っていたらよかった。自分の子ども達には思春期の頃に絶対に観てもらおう」と感じました。

それは、若いうちの特権である「理想や夢を追い求める」「人生における仲間を見つける」事の大切さを知ってもらいたいからというのが基本としてあります。

それに加えて、若いうちにはなかなか気が付けない「意識していないけど身の回りにある幸せ」にも気が付いてほしいというのが裏にもうひとつあるからです。

主観で過ごす自分の人生ではなかなか気が付けませんが、こうしてスクリーンを通して13歳の人生を疑似体験することで見えてくる、人生におけるコツを教えてくれたこの作品。ブルーレイを近いうちにゲットすることでしょうという事で、☆4.2/5.0を付けたいと思います。

童心にかえるのを手伝ってもらうべく、小さい時に好きだった駄菓子を手元に用意してポリポリもぐもぐしながら観るのをおすすめ致します。


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