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大学講義ノート

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2019.6.24 和歌山大学観光学部での講義ノート。 テーマは「地方における観光」
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いくつかのサンプルをお持ちしました。

はじめまして。

本日は特別講師として試験前の貴重なお時間を拝借いたします。

大分県は宇佐市、安心院町というところからきました。
現在、地域おこし協力隊として「まちづくり」を仕事としております。
安心院に移住してようやく1年が経ったところです。
みなさんは「地方創生」などに関心をもってらっしゃると本講座の先生から伺っています。
先生に聞いたところ、この特別講座の内容は試験にふくまれないということ

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Tourist or Traveler

さっそくですが、ひとつ質問をさせてください。
みなさんは「ツーリスト」ですか?それとも「トラベラー」でしょうか?
「ツアー」と「トラベル」の違いについては本講座の第1回(※本特別講義は第8回にあたる)で先生がお話されたそうですが...。みなさん覚えてますか?

(学生から「ツアー」と「トラベル」の定義について説明)
はい、そうですね。「ツアー」は日程、目的地、予算が決まっていて、
安全第一、無事に

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自己紹介〜Traveler型のキャリア?〜

「ツーリスト」か「トラベラー」か。
この話はもっとしたいのですが、さきに自己紹介をさせてください。
わたしは福岡県のある小さなまちに生まれ(いま働いているまちよりもっと小さいです!)
長崎大学の経済学部を卒業しました。
多くの経済学部生と同じく(?)、「つぶしがきくから」「メシのタネ」と、
知的好奇心をあまりともなわない選択だったのですが、
専攻の「会計」と「経営」は成績関係なくわりと熱心に勉強し

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Traveler型の心のありよう

しかし、履歴書的な捉え方ではなく、わたしは「予期せぬできごと」に対する、
「心のありよう」こそがより重要だと思うのです。
思いどおりにものごとが進まなかったとき、予定調和がくずれたときに何を思うのか。

たとえを旅に戻しましょう。
旅先でパスポートをなくしてしまった。
「明日から仕事なのに!」とイライラするか。絶望するか。
「何かおもしろいことがはじまる!」とわくわくが勝るのか。

これも旅の楽し

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まちづくりとはなにか

前置きが長くなっていますが、わたしが
・どんなところに住んでいるのか?
・具体的に何を仕事としてやっているか?
の紹介をしたいと思います。

大分県の安心院町というところ。本来は合併して、宇佐市となっていますが、
活動のフィールドでもあるので、安心院に絞って簡単にご紹介します。
ふるくから農業がメイン産業で、人間関係が濃密です。
過疎化が進んでおり、特徴的な小中高一貫教育が行われています。
観光と

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「草刈り仕事」について

わたしはいまの仕事はおおきく2種類に分けられると考えています。
ひとつは「草刈り仕事」。地域のかたの要請で行う仕事です。
もうひとつは「自分しかやらない仕事」。頼まれないのですが、やったほうがよいと思える仕事。特に自分のスキルや知識が地方において「レア」だと思える分野が好ましい。
経済学でいうところの「比較優位」というやつです。
ざっくりいうと「適材適所」です。気になるかたは調べてみてください。

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まちづくりにおいて考えておきたい2つのこと

それでは本講義でみなさんと話し合いたいトピックをお伝えします。

・地域においてどうやって「価値」を発揮するか?
・地域の「幸せ」とはなにか?

このふたつは「まちづくり」において必須の問いでありますし、
わたしのなかで正解がはっきりしていないところもあります。
ぜひみなさんのお知恵をお借りできれば幸いです。

とはいえ、ざっくりとした問ですので、わたしのほうで、
例題を用意いたしました。すべて実

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ケース(1)「価値」について

わたしが新卒入社した会社の最初の営業会議。
わたしはわからない事柄も多く、とにかくメモに終始しました。
会議後、上司から「なんでひとことも発言しなかったの?」
「議事録をとるので精一杯でした」とわたし。
「どうやって組織に”バリュー”を発揮するか考えなさい。ちなみに会議で発言しないものはバリューを出してないよ」
チームの一員として、新入社員であれど、頭を絞って意見を述べるべき。そのためには臆せず質

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ケース(2)「幸せ」 について 〜地域で学んだこと〜

これはわたしにとってパラダイムシフトというべき体験です。
まちづくり組織では、公民館を利用したサロン活動を支援しています。
そもそもまちづくり組織は「市町村」という区分けから「小学校区」というミクロな地方分権を目指し、設立されたものですが、サロン活動はさらに小さな「居住区」レベルで行われます。隣近所といえばわかりやすいでしょうか。顔が見える範囲での活動ですので、地域住民のかたのニーズがより反映され

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ケース(3)幸せについて 〜more tourists = more happiness? 〜

次の例も地域から学んだことですが、わたしの立場は批判的です。
安心院では定期的な地域活動として「美化活動」が行われます。
年に4回。ゴミ袋や参加者への飲み物、告知などまちづくり組織の負担もありますが、
ボランティアのかたも毎回、多く参加されます。
それほどの労力をつかって、どんなときに清掃を行うのでしょうか?
答えとしては、年4回のうち2回を「観光客が多く訪れるイベント」の「開催前」に清掃を行いま

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構造的にものごとを捉えること

・地域においてどうやって「価値」を発揮するか?
・地域の「幸せ」とはなにか?

ここから、ふたつのトピックに対するわたしの解釈と意見をお伝えいたします。
まず、「システム思考」、つまりものごとを構造的に捉えることの重要性です。
まちづくりの現場において、どうも「企画先行」というか「小手先」の部分で、
ものごとを進めてしまうことが目立ちます。
どうなるか。目的が見えないので、正しい目標設定ができず、

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受益者負担の原則から 〜誰に幸せはもたらされるべきか〜

ふたつめはお金や地域資源の使い方について。
これは海外のDMOの事例から学びを得ました。
例えばハワイのDMOはホテル税から運営資金を多く得ています。
これはハワイのDMOによるプロモーションで、ホテルが益を得ているという考え方からです。
税法には詳しくないのですが、この原則はどの領域でも当てはまる、当てはめるべきではないかと考えております。
利益を得る人が負担をする。日本の観光協会だと、地域の税

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Pay it Forward 〜持続可能なまちづくりのために〜

しかし、”Pay it Back” 、つまり税金やボランティアで負担してくれた大人にだけ、
お返しをするという発想では「持続可能なまちづくり」を成り立たせるうえで、
不十分な構造だと思うのです。

消費ではなく投資の発想。

福祉だけでなく、教育にもっと目を向けるべきだと思います。
これまで安心院において、まちづくり活動の一環として英語やプログラミングなどの教室を行ってきました。
プログラミングに

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ロールモデルになる 〜大人は何ができるか〜

最後に、地方における大人の役割についてお話したいと思います。
まちづくり活動を通して感じます。トップダウン型の命令系統がうまく機能しなくなっているのではないか、と。
もう、ひとは「こうしてくれ」といっても基本的には「動いてくれない」と念頭においていたほうがよいのではないかと思うのです。
それぞれの立場も生活もあります。そうなると、よほどの「何か」がなければ、
まちづくり活動に参画したくないというの

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