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優しい色の夕陽が目に染みただけ  (心が立ち直るまで)

心の一部が崩れてしまった私
その心を元に戻すため
春から病院に通い出した

病院までの道は街路樹の緑が眩しい
爽やかな景色の中
車を運転していると
何故か思い出す
辛かった日々のこと

私は一番信じていたかった人から
たくさん傷つけられていた
それでも「まだ大丈夫」と
自分に言い聞かせていくうちに
心の感覚が鈍くなって
本当の自分がわからなくなってしまった
そして体の不調

ちょうどその頃出会った人に
病院を勧められた

病院に通えるまで半年待った
長い冬を過ごす間
何度か消えたくなった
でも偶然の重なりで
消えることなく
春を迎えることができた

病院の先生はいつもニコニコ
穏やかに頷きながら
私の話に耳を傾けてくれる

私は時々、先生に質問をした
その質問は普通に考えれば
分かることなのに
相手から受けた傷と
歪められた認識で混乱し
判断出来なくなってしまった
情けない質問ばかり

それでも先生は優しく
教えてくれる
今までいた私の日常は
正常ではなくて
私が心の中に抱いていた 
違和感の方が正しいと
 

病院の帰り道は
車を運転しながら
いつも泣いてしまう

途中にあるスーパーの駐車場で
しばらく泣いて
落ち着いたら買い物をして
何事もなかったように家に帰る

家族が心配しないように
それが習慣になってしまった

今日も駐車場の端に車を止め
ハンドタオルを顔の上に置いて
静かに泣いた

自分が正しかったという安心と
ここまで自分が異常な世界で
当たり前のように
傷つけられてきたことへの
苛立ちと悲しみ

「少しずつ良くなってきてますね」
先生が言ってくれた
今日の言葉を思い出す

「あの時消えなくてよかったね」と
言われたような気がする

未来なんて今までと変わらず
暗闇のままだと信じてたけど

もしかしたら
今より明るい未来が
あるかもしれないと
少しだけ思えてきた

笑顔の私が存在していた
あの頃のように

「どうか、この空が
 私を守ってくれますように」

もう一度涙を拭いて
ハンドルに手をかける

「優しい色の夕陽が目に染みただけ」

そう小さく呟きながら
私が笑顔になれる家族が待つ
家路を急いだ

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