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ずっと…モジモジ

映画館。
 
【タイトル】
MOJI✕2
 
【プロローグ】
二学期終わりに親の都合で、
転校することになった美希みき
 
新生活への緊張と不安。
何より新しい学校に馴染なじめるのか。
 
そのことが常に頭をよぎり、
並木道の美しく紅葉したハナミズキなど、
彼女の目には映っていなかった。
 
「あのう」
「……」
 
「ちょっと!」
「…え?!」
 
これ、落ちたよ
「ご…ごめんなさい。
 すい…すいません。
 ご…ごめん…なさい」
 
あれ?ニ年生?
 見ない顔だけど

「あ…あの…わ…私、
 今日…転校し…
 お世話…なります」
 
あ~転校生ね。
 俺も同じニ年だからよろしくね

「よ、よろし…くぅ…」
 
「おい!れん
 なに朝から、ナンパしてんだよ!」
してないよ!
 それじゃね

 
「は…はい……
 …あ…ありが…」
 
「……あの子、誰?」
「……転校生だって
 
(……
 蓮くん…優しい…
 
 さわやか…
 
 あんな…
 
 無邪気な…笑顔…)
 
キュン!
 
(え?!
 なに?!
 
 やだ…私…
 
 転校して…
  まだ5分しか…
 
 でも、蓮くん…いいなぁ…
  同じクラス…なれたら…
 
 ……)
 
教室。
 
「はい、おはよう。
 休みボケしてないかな?
 今日から新学期ですからね。
 
 そして今日から、
 みんなと学園生活を共にする、
 新しいクラスメイトを紹介します。
 
 どうぞ」
 
ザワザワザワザワ
 
「はい!
 じゃあ、自己紹介して」
「…はい…。
 高橋美希です…。
 佐賀から…来ました…。
 趣味は………読書…です。
 よろしく…お願い…します」
 
「わからないことがあるだろうから、
 みんな積極的せっきょくてきに教えてあげて下さい。
 委員長も中心になってお願いね」
「はい」
 
「え~と、
 じゃあ座席だけど、
 後ろいてたよね?」
先生!
 ここ空いてます!

 
「あっ、高嶺たかみねくんの隣ね。
 でも高橋さん、大丈夫?
 後ろで黒板見える?」
先生!
 俺は見えますよ!

 
「アハハハ」 「アハハハ」
「アハハハ」 「アハハハ」
 
「あなたの話じゃなくて、
 高橋さんの心配してるの。
 前の人が邪魔で見えないんじゃない?」
「…大丈夫…です…。
 私……あそこの…席で…」
 
「まあ、本人がいいならそれで。
 席替えも定期的にあるし。
 じゃあ、みんな拍手!」
 
パチパチパチパチ
 
「…あっ……どうも…
 どうも……」

拍手の中、席に着く美希。

やあ。
 まさか同じクラスとはね

 「…はい…
 あのう…」

「なに?」
「…さっきは……
 ありがとう…ございました…」

いいよ、そんなに。
 落としもの拾うのって、
 当たり前のことでしょ?

 
(高嶺…蓮くん…
 
 物腰ものごしも…爽やかだけど…
 
 心まで爽やかで…清々すがすがしい
 
 ……)
 
キュンキュン!
 
 
(あっ…どうしよう!
 
 顔……大丈夫?
 熱いんだけど…
 
 火照ほてってる?…
  赤い?…
 
 ダメ…まともに…顔が見れない…
 気持ちが…おさえられない…)
 
ねえ、美希ちゃん
「は、はい!」
 
君のことが…好きなんだ
「え?!」
 
…付き合ってほしい
「ええ~~!!」
 
そうして、
二人の恋は…はじまった。

【完】
 
【エンドロール】

「ちょっと、みじかっ!!

 なに、この映画!

 しかも、文字だけじゃない!
 音と映像は?!
 
 こっちはずっと、
 女の子のじらう感じを、
 見させられただけだよ!!
 
 何よ、あの胸のトキメキ!
 あと、拍手と笑い声!
 
 全部、文字説明じゃない!
 
 最初っからずーっと、
 モジモジモジモジって……ああっ!!
 
 まさか!!
 
 MOJI✕2って!!
 
 文字文字?!!


 このお話はフィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。 

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