じゃじゃ②
その人はいつも昔話をしてくれた。
自分の幼かった頃の話。
その人は裕福な家庭で育った。
港町の問屋の娘。
商港だったので珍しいものが、
よく荷揚げされたそうだ。
西洋文化が一般家庭にも広がった頃で、
来航者も見たことのない洋装で、
それが娘には新鮮で、
好奇心をくすぐるものだった。
二月のある日。
娘の大広間には立派な雛飾り。
娘は雛人形を大層気に入り、
ずっと眺めていました。
娘の大のお気に入りは女雛。
顔立ちもそうだが、
特にあの髪型に憧れた。
娘はどうしてもあの髪型がしたい。
その好奇心は止まりません。
鏡の前に立つと持っていたハサミで、
前髪を生え際から切ってしまいました。
その髪を見た母親は涙ながら娘に、
「後生だから、一緒に死んでくれ」と
頼んだそうだが娘は自分の髪型にご満悦。
そこに居合わせた使用人のおかげで、
今も生きているとのことでした。
おしまい。
前作も一話完結ですので、
よろしかったらどうぞ。
お疲れ様でした。