見出し画像

山は誰のもの?

【アナウンサー】
「こちらエベレストの、
 ベースキャンプに来ています。
 
 ご覧下さい。
 最早、収集がつきません。
 
 様々な国の人々が、
 押し寄せている状況です。
 
 事の発端ほったんは、
 大資産家マーロン氏が、
 ご自身の祖母マリンさんのために、
 エベレストにエレベーターを、
 実費●●で設置する
と発言したことから、
 この騒動が起こりました」
 
【キャスター】
「松本さん。
 そこにはどんな人たちが、
 来てるんでしょうか?」
 
【アナウンサー】
「はい。
 ほとんどが環境活動家や、
 その団体の人たちのようです。
 
 昨日、取材してますので、
 こちらの映像をどうぞ」
 
【VTR】
 
「あなた方は、
 どのような集まりですか?」
「俺たちは環境保護団体、
 グリーンウィル
だ!
 
 これは山の神への冒涜ぼうとくだ!
 
 俺たちはマーロンの暴挙ぼうきょに、
 断固として反対する!」
 
「私たちはエベレスト登山クラブだ!
 山は登ってこそ意味がある!
 
 誰もが気軽に登れるようになれば、
 どうなる?
 
 ピクニック気分の観光客が押し寄せ、
 山は間違いなく汚染おせんされる!
 
 その代償だいしょうを、
 マーロン氏は考えているのか!」
 
「私共は世界平等主義団体です。
 なぜ、皆さんは反対するのです?!
 
 誰もがあの山からの景色を楽しめる…。
 
 何がいけないのでしょう?
 
 老若男女、障害の有る無しに関わらず、
 全ての人が、
 あのいただきに立つ権利があります!
 
 ひとにぎりの人間が、
 独占どくせんしていいものではありません!」
 
「私たちは自然保護団体、
 アップサイクルズ
です。
 
 私たちは昔から、
 入山禁止うったえてきました。
 
 登山家は色々おっしゃってますが、
 山をよごしている張本人はあの方々です。
 
 後から回収に来るからと、
 山に装備を捨てて下山してきます…
 保身のために…。
 
 誰かが登れば山は必ず汚れます。
 
 登山家は自分たちの欲と名声のために、
 山に登っているんです!
 
 やりたい放題です!
 
 これ以上、この山への人の侵入は、
 今すぐ止めるさせるべきです!」
 
「あ~俺かい?
 俺はこの地元のものだよ~。
 
 エレベーター?
 いいんじゃないの?
 
 客が増えるんだろ?
 
 それにマーロンさんが自分で、
 金を出して造ってくれるんだから、
 反対する理由はないよね。
 
 俺はこの近くでホテルをやってるから、
 大賛成だいさんせいさ!」
 
「私?
 私はここで土産屋みやげやをしてます。
 
 エレベーターについてですか?
 大反対です!
 
 あれは私たち種族が守ってきた山です。
 
 それを他国の人たちが、
 面白がって登るようになって、
 山は汚れてしまいました。
 
 山は怒っています!
 
 信仰心のない人は、
 ここには近付かないでほしいわ!」
 
「世界の皆さん、こんにちは。
 マーロン・マントです。
 
 いやね、うちのばあちゃんが、
 今年で80になるんだけどさ。
 
 死ぬまでに1度でいいから、
 エベレストの頂上に、
 行ってみたいって言うのよ。
 
 でも年齢的に登山は無理じゃん?
 
 かと言ってヘリコプターや、
 パラシュート降下なんて、
 危なすぎて、もっと無理じゃん?
 
 で、どうするか考えたわけ。
 
 俺、金持ちじゃん?
 エベレストにエレベーター、
 造ればいいだけじゃねえ?
 
 これがひらめいた時、
 俺、超天才って自分をめたね!
 
 ばあちゃんのためだも…。
 200億ドルぐらいでいけるでしょ?
 
 そして完成したら、
 絶対、バズるよね?
 
 会社の宣伝にもなるし。
 
 でも、色々うるさいんだよ…
 周りに反対する人、結構いてさ。

 国?
 全然大丈夫。

 うちの工場3つずつ、
 誘致ゆうちするって言ったら、
 みんな良いよ良いよって。
 
 それにこのエレベーターって、
 頂上まで直通じゃないんだよ?
 
 途中に展望レストランとかホテル、
 コンビニも数店舗もうけるから。
 
 これでゴミ・トイレ問題も解決でしょ?
 
 かたくなに反対してる人いるけど、
 何がダメなのか、さっぱり分からない。
 
 そこに山があるから登る?

 今は時短の時代でしょ?
 
 さっさと頂上着いた方がよくない?
 ねえ?」
 
「ピャーハャーー!!
 我々は自然保護過激派団体、
 ブチコワーズ
だぁ!!
 
 とにかく反対だぁ!!
 よく分からんが断固拒否だぁ!!
 
 そしてここを我々が占拠せんきょする!!
 
 これでも喰らえぃ!!
 
 シュールストレミングニシンの缶詰攻撃!!
 ホンオ・フェ発酵させたエイ攻撃!!
 焼きたて、くさや攻撃!!

 
「くっせっ!!」
「ギャーー!!」 
「うおぇ!!」
「キャーー!!」
「やめろ!!おぇ!!」
 
【アナウンサー】
「ベースキャンプは大混乱です。
 私たちも巻き込まれるといけないので、
 退避たいひします」
 
その騒動そうどうを見ている子供たち。
 
「ねえ、兄ちゃん」
「何だい?」
 
「あの人たちは何してるの?」
「わかんない。
 お祭りみたいだけど…
 あんまり楽しそうには見えないね」
 
「そうだね。
 僕らもさっさと片付けて、遊ぼうよ」
「そうだな。
 さっさとゴミ拾い●●●●して、
 クリケットの練習しよう」


 このお話はフィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。  

この記事が参加している募集

山であそぶ

この経験に学べ

お疲れ様でした。