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本を読むこと。 ~ インターネット的な未来のお話 ~

ほぼ日(ほぼ日刊イトイ新聞)でおなじみの糸井重里さんの「インターネット的」を読みました。

こちらの本は2001年に書かれたもので、インターネット黎明期に書かれた「インターネットのあるこれからの生き方」を描いた本ですが、これがかなり示唆的で、多くのビジネス本や自己啓発系本に引用されていたので以前から気になっていた本です。

先見の明というか予言の書というか、この本に書かれたこれからの「生き方」はまさに今の時代を生きるために必要な考えた方であり、20年以上たった今でもその思想は色褪せることはありません。

今回は糸井 重里さんの著書「インターネット的」についてのお話を消化しながら未来について想像してみたいと思います。

インターネット的とは

インターネット的な空間は「人とつながれる」「乱反射的につながる」「ソフトや距離を無限に圧縮できる」「考えたことを熟成させずに出せる」など人の思いが楽々と自由に無限に開放されていく空間であり、このインターネットの空間で豊かになっていくかどうかは、それを使う人が何をどう思っているのかが重要になります。

糸井さんがいう「インターネット的」であるというのはインターネット自体がもたらす社会関係の変化、人間関係の変化みたいなものの全体を指し、インターネット的であるための鍵は「リンク」「フラット」「シェア」「グローバル」だといいます。

以下にそれぞれについて説明していきます。

・リンク

複雑な情報のカタマリどうしが互いに繋がっていることが、インターネットの仕組みそのものであり、以前の繋がり方は有用な情報同士が互いに機能で繋がっている「ジョイント」的な繋がりでした。

「リンク」的なつながり方は一見不要な情報からの繋がりに可能性を見いだせることができます。

つまり「風が吹けば桶屋が儲かる」的なはじめからは想像もできない連鎖ができるのが「リンク」的なつながり方にはあるのです。

・シェア

自分ひとりだけでできる趣味や快楽などはほとんどなく、他人からはいかにも孤独そうな趣味に思えても、本当に孤独に満足できることなどほとんどありません。

インターネット的にはこうした趣味にリンクしていくことでその楽しみを「分かち合う」ことが容易にできるのです。

youtubeの成功はまさに「シェア」の発想によるものであり、楽しみや情報の「分かち合い」が背景にあると思います。

インターネット的には経済においても情報が多様化して変化しやすい市場を「独占」することは企業にとって「うまみ」は少なく、むしろ「シェア」をうまく利用できる企業が市場において信頼を得ていくことになるのです。

・フラット

フラットというのはそれぞれが無名性で情報をやりとりするということです。

つまり「情報のやりとり」自体に意味があるので、そこではそれぞれのポジション、年齢、性別、価値などの意味は失われています。

ですから、情報のやりとりの相手が医者であろうが大学の教授であろうがまったく関係ありません。

ハンドルネームは一種の仮面舞踏会であり、みんなをフラットな状態にする発明です。

そういったフラットな空間では情報の「価値」と「常識的な態度」に基づいた「信頼」だけが大切になります。

・グローバル

グローバルというのは、国や民族の枠組みを超えた全世界規模の視点で考えることです。

インターネットは国境をいとも簡単に超えて、言語や文化に囚われず、個人の価値観や思想で繋がることが可能になります。

また、多様な意見や情報を集めることで、いままでの視点とは異なった方向から物事を捉え、新たな発想を創発することが可能となります。

以上の4つが「インターネット的」社会の要素であり、これらの社会で成功する(豊かになる)ためには、これらのキーワードを含んだサービスの創出が大切だと2001年の時点で言われていたのです。

いま、世界的に成功を収めている企業、たとえばGoogleやAmazon、Uber、楽天などのサービスを見てみるとどうでしょうか?

まさにこれらのキーワードを多分に盛り込んで成功を収めた企業と言えると思います。

そしてこの4つの鍵をつなぎ合わせるのが、"Only is not lonly"という言葉(考え方)です。

つながりすぎないで、つながれることを知ること、「ひとりぼっち」と「ひとりぼっち」がリンクして、ときには共振して、ときには矛盾して、ときには協力すること、それが当たり前のようにできる世界が「インターネット的」世界なのだと糸井は指摘してます。

インターネット的な世界での生き方

①熟していない考えも出す

インターネット的な世界では未完成な考え方も臆せず、怖れず、早く出していくことが大切です。

自分一人では完成できないことも、受けての力に手助けされて、すばらしい現実を生み出すことができるかもしれません。

まずはアイデアを臆せず出してみて、ポテンシャルを感じてもらえれは自然とリンクして繋がっていくのです。

変化の早い世界ではどんどんアウトプットしてフィードバックを得た方が早いのです。

②異邦人の目でみる

グローバルに繋がっていく世界では自分の視点だけ、日本人の視点だけみていても良いサービスを生み出すことができません。

意識して自己分裂させ、自分の中の他人成分を立ち上げることで、いままで見えなかったことがクリアになっていきます。

③価値の中心はアイデア

生産中心(資本主義経済)の経済の限界によってミニマリズムに回帰していく中で、求められるのは消費者のクリエイティビティです。

消費者自身がこの世の中の楽しみ方を知らなければ、良いアイデアが生まれてきません。

日本人は特にこの点を苦手としています。

以前読んだ新聞の記事で、外国の日本ガイドには「日本人は忙しいから立ち食い文化が育った」と書かれているとありました。

インターネットが発展してますます人の仕事が少なくなり「余暇」ができるはずが、逆にいつでもどこでも働けることがになってまじめな日本人は朝から晩まで働くことが当たり前になってしまいました。

ブラック企業はまさにインターネットが生み出した企業かもしれません。

「遊び」や「経験」が大切なことは今もなお、多くの文化人が語っていますが、その本質は消費者のクリエイティビティを鍛えることであり、それが新しいアイデアを作り出すことのだということを、2001年の時点で糸井さんは述べています。

また、新たな問題を発見する方法として「寝返り理論」というのが本書で紹介されています。

人は寝返りを打たなければ血液がたまり、循環が悪くなってしまいます。

そのため無意識でも寝返ることで循環を維持しています。

これは「考え方」も同様であり、「考え方」を固定してしまうと循環が悪くなり「不快」が生じてしまいます。

例えば、
いつも食べているものがまずく感じるようになった。
恋人との間に、なんとなく楽しさがなくなった。
毎日の通勤が疲れるようになってきた。
など。

これらの「不快」を解消するために定期的に考え方を「寝返り」させることで循環を促し、新たな価値を創造することが「寝返り理論」となります。

④共感と信頼が大切

インターネット的な世界ではフラットな分、共感や信頼が大切になります。

人が作者やチーム、企業の提示する「世界観」のファンになることで「消費者」となるのです。

つまりインターネット的な世界ではそれぞれの人や組織が、それぞれに何を考えているのか、自分の生き方や幸福論を明らかにしなければいけません。

良い作品には必ず作者の「幸福感」や「生き方」が現れています。

ブログサービスやSNSでもそうですが、良いコンテンツや発信には必ず、発信者の思想が表現されており、その思想に対して共感する方々がファンとして発信者を支えていきます。

つまり、企業にしても個人にしても、信頼を軸としたファンを増やしていくことがインターネット的社会では大切になり、この世界で生き残っていくためには必要な要素になるのです。

もう一度いいます。
これは2001年に書かれた本です。
私がiモードを初めて使った頃に、このような未来が来ることを示唆していたとは、本当にその観察力・洞察力の鋭さに驚きを禁じえません。

まとめ

インターネット的な世界はではリンク、シェア、フラット、グローバルな視点で物事を考えていく必要がある。

今までは情報自体に価値があり、情報を保有していることがその人やその企業の価値を高めてきたが、インターネットの発展によって情報自体に価値よりも情報を「シェア」して必要としている人と「リンク」して繋がっていくことで新たな価値を創造することが大切となる。

それを「グローバル」な規模で行うことことでより多様な視点を獲得することができる。

繋がった人達や企業は「フラット」な関係を構築し、共感を得て、「ファン」を増やしていき、そのファンによって「信用」が構築される。

ぼくとしては、インターネット自体よりも、それがもたらす
“インターネット的であること”に、より可能性を感じています。
糸井 重里 著「インターネット的」より

本書で書かれた著者の考え方は、今もなお、インターネット的な世界で生きる私たちや多くの起業家の指標となるのではないでしょうか?

そして、同時に私たちの目の前には「暗号通貨的」や「AI的」、「Web3.0」、「メタバース的」な世界が現れています。

このような世界の扉を開けるためにはどのような鍵が必要なのか、そしてその世界で「豊かに」生きるためにはどのような考え方が必要なのか、本書を参考に考えてみるのもいいかもしれません。

最後までお読みいただきありがとうございまし


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