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トランプを好きな人は「レイン・メーカー」を見ない方がいいってぐらい気持ちいい

その理由はトランプそっくりの悪徳弁護士が出てきて、見事なまでに欺瞞や嘘に塗り固められた彼自身の人生を悪びれもなく堂々と生き、返り討ちにあうさまが映し出されるからです。

ヒーロー・ヒロイン系の映画を観ないぼくにとって、レインメーカーは多分「そんな奴にも楽しいヒロインヒーロー系の映画を見せてあげるよ!ニコッ」という文脈で書かれた映画でした。

勧善懲悪というには、そこは映画なので魅せ方が上手いのでしょうが義憤に燃える若手弁護士が戦う。現実のこの年齢の人だったら、きっと簡単にトランプに呑まれるんだろうかと思わされる。つまり腐敗の仲間入りをする。

若い弁護士の名前はルディで、マットデイモンである。ぼくはデーモンに対して何の思い入れもなければ興味もわかない。この前ディパーテッドを見た折には、デーモンとレオナルドデカプリオの違いがガチでわからなくなるレベルでこの二人の造形について認識できていなかった。

ぼくはデカプリオにも興味がないのだろうか?彼が出ている映画はなぜかいい監督があてがわれるというイメージがあるから避けることはないようにしているが本人に興味は持てないかもしれない。

レインメーカーは物語が同時進行することも楽しい。弁護士だから様々な件をひとりの人間が同時に抱えることになる。しかもそれをロースクール出たて&司法試験合格直後の人間が抱えるんだから、これをヒーローと言わずしてなんとする。

しかしながらそれでこそ物語だ。はたしてルディは先に、トランプとはまた別の悪徳弁護士に雇われることになり、当該事務所で今後の相棒となる背の低い男と知り合うことになる。

弁護士はいわゆる営業をしなきゃならないらしい。事故った男があられもない姿で入院している場所に不法侵入し(大体の面会が不法侵入だ)、これが俺たちの名刺だ相手から賠償金をいくらでもふんだくってやるぜ、と営業する。これはボスと相棒に無理やり行かされる。

かと思えばロースクール時代の研修先で出会った人々が裁判案件を抱えていることをきちんと記憶しており、力になりますという形で契約へ進む。

ある時は気狂いレベルのDVを受けた女に案件先&自習先の病院で会い、彼女の離婚手続きの相談に乗るとともに正当防衛で当該DV男をぶっ殺す。そこまでいくと、卒業したての弁護士がやってられる精神状態ではなくなるんじゃないか?とすら思わされる。でも映画ってそれぐらいあっていい。

で上記トランプ弁護士を始めとした、判事ぐるみで州法がガンガン腐敗している様を見せつけられる。ここで悪に染まるのは簡単だ。でも、弁護相談を続けるうち家族ぐるみで仲良くなり友人になった白血病少年と共に過ごす内、重大な手術の費用としての保険金を一切支払う義務を履行せず私腹を肥やそうとするカス保険企業のカスさを明るみに出そうとする。ルディは義憤に満ち溢れたヒーローになる。

この、新しい命をして腐敗の海に引きずり込もうとする悪辣弁護士たちの姿をぼくは「後からコミュニティに入ってくるなら当然それなりの覚悟をしとけよ?ニヤニヤ」感を持って見ることとなった。

以前書いたんですけど、先に社会に出たというだけで後塵には自分が受けたあるいはそれ以上の苦労を負わせようとする。回避策を教えるのではなく進んで与えようとする。

それをぼくは復讐バイアスと名付けた。

新たな場所に属そうとする者に対して、その場所へ既に属している側がさも当然のように、洗礼のように口出しをする。この悪習は日米変わらないと思えた。

それを物語として救うのは急な腐敗判事の死であり、ぼくの好きな腐敗企業を許さず公民権を尊重する黒人判事の新規着任だ。ぼくは黒人が映画に出るだけで嬉しくなる性質を持っている。

楽しい映画だったので思ったことがあればまた。

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