ショートショート 『邪魔者』
スコープの中、岡島がこちらを見た。
気づいているわけではない。窓の外に広がる夜の街をあてもなく見渡している。ガラスに映っている自分の顔を見ているだけかもしれない。憔悴した無精髭の中年男。武闘派で知られた筋モノにしては生気に乏しい顔だ。
「大丈夫だ。任せておけ」
結崎はつぶやいた。
屋上のコンクリートに固定したAWMのスナイパーライフルのトリガーに指をかける。肘から冷気と都市の震動がのぼってくる。たてかけたスマートフォンの気象データを見た。狙撃の大きな変数になる風は、現