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【完全版】ミスiD2014詩集

私は今まで、若さによって少なからず優遇されてきた。でも、それは絶えず「年齢」と「賞」の皮を被って歩かされるということ。詩人なのに、たくさんの言葉を持っているはずなのに…
 https://cakes.mu/posts/17565

「自分の存在で救われる人がいるかもしれない」ってどうして夢見ちゃいけないんだろう? 一度くらいは夢見たことあるでしょう? 忘れたような顔しないでほしい。
https://cakes.mu/posts/17600

 cakesにて連載中のエッセイ〈臆病な詩人、街へ出る。〉より。
 詩人がアイドルに挑戦…!? 今回は、ミスiDのオーディションに参戦した経験を、前後編で書きました! 下記リンクからぜひお読みください◎
▶︎臆病な詩人がアイドルオーディションに出てみたら〈前篇〉
https://cakes.mu/posts/17565
▶︎臆病な詩人がアイドルオーディションに出てみたら〈後篇〉
https://cakes.mu/posts/17600

 エッセイの後編で言及しましたが、私はミスiD出場時(2013年夏)、当時のファイナリスト34人それぞれに、1人ずつの魅力から34編の詩を書きました! 最終選考までの2週間、Twitterで「#ミスiD詩集」のタグをつけて詩を投稿したのです。

 結果発表後のお披露目イベントでは、ミスiD詩集の詩に曲をつけ、本賞受賞者である寺嶋由芙さんに、サプライズで唄ってもらいました。作曲をお願いしたのは、特別賞を受賞した細川唯さん(細川さん、この記事にも登場しています。https://note.mu/fuzukiyumi/n/nd44c756b15ef)。

お披露目イベント(2013年10月)の様子

 すべての詩を冊子に編集し、『ミスiD2014詩集』として少しだけイベントで販売したこともありました。印刷して手作りでまとめるのには結構手間がかかるため、お蔵入りになっていたのですが、この機会に復活(?)させることにします。

 この詩集のファイルを発掘したとき、懐かしい気持ちになりました。詩の題材になっているミスiDの方の中には、現在もアイドルや女優として大活躍されている方もいれば、芸名が変わった子、別の活動に移行したと思しき子も。
 あの頃中学生や高校生だった方も、すっかり大人の女性になったんだなあと感慨深かったです。

 この記事では詩のテキストのみ無料公開します。冊子の完全版データ(PDF)が欲しい方は、この記事の下にある購入ボタンをお願いします。

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ミスiD2014のファイナリスト35名


真っ白なねぎの花、見落とさないで。
ほほえみは、あなたに向けた挑戦状。
逃げ場はないのよ。
「きみしかいない」とこの手を取って。
【No.2 新垣こづ枝】

光がぼくを誘うから、羽をひろげた。
水鳥、ひみつは湖に浮かべて
すぐさま裸足になれるかい。
青のしぶきを上げて、いま舞い立つ。
【No.15 木村仁美】

「あなたはだれ?」
キツネの瞳で問いかけて、
シャッターのまばたき ぱちりとひらめいた。
次は誰に化けようか、
金色の尾を振って遊んでる。
【No.9 小野口真央】

「見つけてくれて ありがとう」
そう言って、ぼくの手を握り返したかぐや姫。
「わたしには意地があるから」と
涙も見せずに、唇むすぶ。
ふたつくくりの髪をなびかせ、
月明かりの下、ぼくと踊った。
【No.10 加藤一華】

ひまわりになりたいあの子
立つとまぶしい花になる。
勝利を夢見てその茎は
ぴんと折れない芯になる。
【No.5 稲村亜美】

もっと自由でいたい と
旅を続けるペガサス。
短いたてがみは
何になびくこともない。
あらゆる雲をくぐってきたけれど、
降り立つ場所は、
この翼だけが知っている。
【No.11 金子織江】

気ままな猫みたいに
毛布の中で昼をむかえて
日曜日は晴れ。
きょうはどんないたずらしようかな。
薄日で顔を洗ってたくらんでいる。
【No.46 宮澤咲希】

しのげる雨など、
もはや濡れる価値もない。
雲を胸に引きよせて、
あたしが空を光らせてあげる。
浴びてよ、あたしの雷(いかずち)を。
【No.39 細川唯】

花のゆくえを追わないで。
わたしが散らした思いは
季節を気高くつらぬいて
朽ちない枝にかがやく。
夏に負けない青い葉を
入道雲に差しのべている。
【No.21 児山さくら】


音もなく降りしきっていた。
記憶のなかで濃くなっていく、

あの雪の日にしていた口紅の色。
【No.22 静麻波】

何者でもなかったあの子。
教室の机の中に置き去りの
手紙 きれいに封をはがして。
新月の夜、 ふたりでバスを待たないか。
【No.43 真山朔】

ちいさな探偵、あらわれた!
犬と話してアリバイ調査。
芝生のうえで、小犬といっしょに寝返り打って
「真犯人はキミ!」って夢の中
無邪気に笑って指をさしてね。
【No.16 京佳】

花陰にいても、隠しきれない。
眠っていたわけじゃないの、と
その顔を少しだけ起こしてごらん。
きみが持てあますそれは、
誰もがうらやむ花だけど
誰も摘み取ることなどできないんだ。
【No.45 水尻ユキ】


帽子を落とさぬようにおじぎして
お嬢さん、夏の電車に乗り込んだ。

森で出会ったくまさんと
一緒につくった子守唄
ぼくにこっそり聞かせてくれた。
【No.12 河内美里】

私の前でまばたきするな。
(私が目を閉じているのに、
世界がなくならないのはどうして)
まぶたに世界、
閉じ込めておけないのなら
あの太陽、まっすぐに見返してやる。
【No.51 レイチェル】

放課後、プールの裏で見ちゃった。
あの子、ほうきにまたがって
セーラー服の魔女になった。
「内緒だよ」とほくそえみ、
スカート、赤い夕日に染めた。
【No.14 木村葉月】

その毒が
美味しいことは保証つき。
たやすく口に運んではだめ。
あなたは手折れるかしら
砂漠育ちのアロエの牙を。
【No.20 小林リズム】

胸に心、とどめられない。
あふれ出るまま髪を乱して
今夜、闇に花をかざるの。
踊り明かす瞳の中に
まばゆい舞台が幕を上げたわ。
【No.31 中村インディア】

君の背中を落ちていく水。
土砂降りの最初の一滴を見た。
ちいさく固唾を飲んで、
ゆびさきで伝う。
【No.36 藤井さやか】
※現在のお名前は、寺田御子さん

青い炎のハネをひらめかせ、
その蝶は花々を冷やかしている。
南国から飛んできた
温室の女王に蜜をあげよう。
【No.19 小瀬田麻由】

確かな言葉を実らせて、
誰より先に色づきたいの。
虹をくぐって、ひとりだち。
陰日向の戦士に変わる。
【No.25 宗香里】

白い歯のあの子が
春の遠足で
一粒くれたゼリービーンズ。
【No.49 山崎春佳】

芽生えのときを告げるため、
笛に息を吹き込んでいる。
ここはきっと秘密の花園。
旅する風に音をたくして。
【No.47 本宮初芽】

お別れの電話ボックス。
受話器を置いてまっすぐに
歩き出したあの子を追って
街がしずかに灯りをともす。
【No.34 新田藍奈】

「心をいつも動かしていたいの」
この駅のホームに立つのは今日で最後。
彼女は振り返ることなく飛び乗った。
各駅停車で
会いに行きたい人がいるから。
【No.29 寺嶋由芙】

音にも色があるように
息にも色があったなら……
そう呟いて君が
白と黒の鍵盤の前、
祈るように呼吸をはじめる。
【No.8 小野紗也香】


この夜の彼方に宇宙があるの。

青い惑星に立つ
たったひとりのわたしのために、
星たちよ 降れ。
宙(そら)に気まぐれな口づけ。
【No.40 マチルダ】

血は巡り尽くして最期、
この皮膚の下で冷えていった。
わたしはよみがえる。
解いた四肢を躍らせて
赤い心臓の鹿よ 走れ。
【No.35 ひのあゆみ】

春の風を抱いているから、
きみの羽ばたきはやさしい。
目を開けてごらん、と
つま先で地に合図して。
【No.3 石崎日梨】

眼鏡の奥から見据えてた いくつもの空。
ゆずれない気持ち、胸にひそめて
花ざかりの荒野に立った。
【No.18 荒野もゆ】

彼女、白衣に袖を通して
黒板に元素記号の詩を書いた。
化学反応見届けたくて
理科室にぼくを呼んだの。
【No.32 奈々瀬】

生まれつきのクイーン。
きみは選ばれた巣の主(あるじ)。
名もない働き蜂たちを 統べる美しい針。
【No.24 末永唯子】

遊園地の人気者によく似た
大きな黒い瞳で
お城を見上げていたあの子。
おいで、ガラスのかかとを鳴らして。
【No.30 傳谷英里香】

見失うことのないように
遠く、さざ波を見ていた。
はじめて来たこの海は懐かしい。
どうしてか
生まれる前にも聞いた、波音。
【No.1 青波純】

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『ミスiD2014詩集』(2013年制作)の完全版には、下記の内容が含まれています。

●詩の題材となったファイナリストの解説、エピソード
●まえがき「詩人がミスiDを目指す3つの理由」
●エッセイ「女子と詩」
●詩「詩が書けないのなら……」
(ミスiD2次選考の自己PR動画のために書き下ろした詩。
既刊詩集には未収録です)
●表紙、見返し部分のデータ

『ミスiD2014詩集』完全版をご希望の方は、下記の購入ボタンをお願いいたします。
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