画像1

【朗読】夏雲の舟

文月悠光
00:00 | 00:00
集まってきたのだ、ここへ。
わたしたち、この星に
集うために生まれてきた。
どこから来て どこへ歩いていくのか。
人生の行き先はわからなくても
ごらん、
夏雲は自らを帆にして進む。
真っ白な夢を引き連れて
青い風を越えていくのだ、
絶え間ない太陽の熱を宿して。

ちいさな芽が土をもたげて
この世界へ顔をのぞかせる瞬間。
わたしは初めて目撃するだろう、
沸き立つ雲、降りそそぐ光、
風をまとって伸びていく己の手足。
忘れないで、と祈りながら
葉先を精いっぱいに輝かせて。

からだを連れてくるのが難しいなら、
いま こころで集い、わらえばいい。
夏の空は鼓動して
遠い国へ 雲が渡る。
若い芽は空を目指しつづける。
空への尽きない憧れは
やがて 風を旅する舟となる。

詩「夏雲の舟」文月悠光

*「婦人之友」2020年7月号ミヨシ石鹸さん広告より。
毎月、裏表紙広告欄に詩を書き下ろしています✍☪️
写真:岩倉しおりさん

▶︎詩のテキスト・朗読のバックナンバーは
ミヨシ石鹸さんホームページにて公開中🎧🌠
https://miyoshisoap.co.jp/pages/medium

投げ銭・サポートは、健やかな執筆環境を整えるために使わせて頂きます。最新の執筆・掲載情報、イベントなどのお知らせは、文月悠光のTwitterをご覧ください。https://twitter.com/luna_yumi