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9.言いなり ビートルズ

学芸出版社営業部の名物社員・藤原が、書店での何気ないやり取りを手がかりに、自らのロック遍歴にまつわる雑感をつづります。

欠本調査とは今現在店にない本を調査するもので、10分前に売れた本で自動発注されていれば補充品が入って来るが、今は欠本である。
また、売れたのだが次の販売に期待が持てないので補充しないようにしている本も欠本である。
欠本の補充は担当者の力量が高くなければ、入れたけど返品というキャッチボールになるので僕は積極的に行わない。

しかしまったくしない訳ではない。ある店で棚を調査したら売行良好書と新刊で欠本11冊。この補充とこれから出る新刊を受注した。
当社の売れ行きはまずまずで、店長は「入れてもらった本は売れているようですね」と喜んでいるが、担当の店長は棚を触っておらず、バイト君が棚に本を差しているものと思われる。あらぬところにあらぬ本があったりして、棚はワンダーランド状態。訪問するたびに棚の整理をしてあげたりと、手間のかかる店である。

さらに「欠本しているので入れまっせ。」と僕が言うと「はいはい~」と番線印を押す。私のことを信用してもらっていると解釈しているが、もうちょっと本に関わって欲しいなと思う。欠本調査一覧表から補充中の商品を見つけて、「これは補充されてくるので要らない。」「それは失礼しました。さすがに棚をよく見てはりますなぁ」とう会話がしたい。

SGT.PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND/ THE BEATLES(1967)

ビートルズの「サージェントペッパーズロンリーハーツクラブバンド」はロックの名盤と言われている。
しかし僕が10代の頃聴いた時には「へーぇ、これがねぇ」と思った。優れたロックアルバムであることを、年を重ねるごとに感じるのだが、未だに「ロックの名盤」を素直に受け止める状態にない。

ビートルズでよく聴くのは「アビーロード」だ。これは名盤である。
評論家が「このアルバムはいい」というと何となくその気になるのは、評論家が確かな耳を持つ人だと思っているからだ。自分の耳を信じないと、あの店長のように人の言いなりに判を押すことになる。信頼は大切だけど、自分を信じることも大切だ。

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書店に風は吹いているか

「この20年で変らなかったのは、本への思い入れを読者に伝えようとし続けた書店員たちの存在である。彼ら、彼女たちがこれからも書店を支え続けるのである。・・・」 学芸出版社営業部の名物社員・藤原がお送りする、本と書店をめぐる四方山話。


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