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『カーマ・スートラ』から学ぶ、人から好かれる技法・嫌われる技法

古代インドの人生観で大切なのは、「利」(稼ぐこと)と「愛」と「法」(解脱を目指すこと)だそうで、アーシュラマ(年齢区分)によって、それぞれ目指すべきことは異なるそうである。

このうち「愛」というのは、人生の一大事にされてきたテーマで、たとえば釈尊が五支縁起の中で、渇愛(カーマ)から生老病死へと繋がっていることを示した一方、『カーマ・スートラ』と呼ばれるヒンドゥの恋愛指南書では、渇愛(カーマ)をテーマに人間の心理を細かく分析している。

『カーマ・スートラ』では、全体的に、愛は推奨すべきことであり、家族や仲間も協力して、恋愛成就するよう勧めている。それは一族繁栄に繋がり、素晴らしいこととされている点で、釈尊の仏教などとは異なる性質を有している(インド仏教も発展に伴い、その考えの見直しは行われてきた)。

いかにせん古代の文献があるから、現代には説明しづらいこともあるが、内容は非常に優れているものであるから紹介したい。(例えば、『カーマ・スートラ』では分類として、「処女」、「人妻」、「遊女」と分類されているが、ボーイフレンドがいたことがあるか、男友達は多いかといった理解をすると良いだろう)


1.人に好かれる技法

「凡ゆる場合、可能である限り、自ら試みるのが一層優れている。自ら行うのが困難である場合には、媒介をなす女を用いるべきである。」(ヴァーツヤーヤナ著、岩本裕訳『カーマ・スートラ―完訳 (東洋文庫、1998)』)

自ら告白して成功する男性は羨ましいが、多くの場合、そうではない。この場合、最も成功する事例として、「媒介する女友達」を活用することを推奨している。

最も良いパターンとしては、対象の女性と共通の女友達を作るのがベストである。それができない場合、古代インドでは、家政婦とかもいたようで、家政婦などにプレゼントなどを試みるのもテクニックだったよう。

対象の女性は、女友達や使用人を信用しているであろうから、対象の女性に好きな男がいたとしても、「そんな男やめときなよ」とか、「〇〇さん(自分)はいいところ多いよね」といった売り込みをされれば、そのうちに、ちょっといいかなと思うこともあるかも知れない。そういったときがチャンスなのだろう。


2.人に嫌われる方法

『カーマ・スートラ』には、女性が、好まない男性を遠ざける方法も述べられている。そのうちの一例をあげれば、

男の全然知らない事柄に就いて話をする。男の知っていることに就いては、興味を示さず、またそれを軽蔑する。
彼の言葉を曲解する。
笑うことは何もないのに笑う。可笑しなことのある場合には、他のことにかこつけて笑う。
彼の話の腰を折り、他のことを話し始める。(ヴァーツヤーヤナ著、岩本裕訳『カーマ・スートラ―完訳 (東洋文庫、1998)』)

といったトーク術を示している。確かにこの通りにトークを勧められたら、面白くない男性はきっと多いだろう。


このように『カーマ・スートラ』では、男性・女性・あるいは、その他(古代インドでは様々な性的嗜好が考えられている)の身体や心の特徴を分析されている。

とても惜しいことは、共通の友達を作る方法が示されていないことである。おそらく、そこで挫折する人も多いだろう。

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