見出し画像

帝都に咲く花4 ~立志編~

以下の文章は戦争小説です。基本的に一般的な世界線とは異なり、
著者の趣味、妄想、思想も含まれますので諸々のデータは
史実のものとことなる場合がございます。
その点を理解したうえでお読みくだされば幸いです。




雨の中歩きながらさっきのことについて考える。

あの男は素性を知られたくないように思われた。
そして、私を待っていたことも口ぶりからしてわかる。
私に何を伝えようとしたのかは、あまりよくわからなかったが、
あの言葉は覚えておいて損はないだろう。
あの男へとつながる道を開くことになるかもしれない。
ただ、一つわかることがある。
男は歩幅が一定だった。よく訓練された歩き方だ。
軍属か、軍政完了か、はたまた後衛陸軍士官学校の関係者か。
兎にも角にもわかることはあまりにも少ない。
その事実が一般人でないことを証明していた。



家に帰ってから遠藤には意外なほど心配された。
彼女にも人間の心があったという事実に驚きを隠せないが、
あまり怒られることはなかったので安心した。



夏が来た。
あの手紙が来た梅雨から一ヶ月程度しか経っていないとは
自分で考えてみて意外だった。
夏が来てからはとにかく毎日勉強というわけではなくなった。
なぜか遠藤はあの日以来、以前のように非人間的な様子は
なくなったし、私になにかと気遣いをしてくれている。
まぁ、あまり深くは考えずに受け入れてみようと思っている。
なんにせよ害はない。
夏の間はあいすくりんなるものを食べたりもした。
あまくて美味しかったが、本場のものはもっと滑らかで美味しい
という。ぜひ食べたいものだ。どうも私は甘いものが好きなようで
男のときはあまり食べさせてもらえなかったからだろうか、
ちょこれーとやかすていらがとても美味だ。これは以前にも
食したことはあったが金平糖などは久々に食べてその美味さを
再実感した。
ちょこれーとは口の中でころころ転がしてもよし、
バリンと豪快に食べて食感を楽しむのもよし、
起床後に人かじりして目を覚ますのにも血糖値を上げるのにもよし、
まさに万能、パーフェクトフードではないだろうか。
他の甘味も言うに及ばずだが。




そうして充実した日々を過ごしていたら夏はすぐに終わった。
もう十月だ。紅葉が美しい。
暁月邸には春夏秋冬美しく変化する木が植えられている。
もみじなどもさいているため、非常にきれいだ。
そう思って、最近は自発的に始めるようになった勉強の休憩時間として
紅葉を眺めながらティータイムを、と考え、遠藤に紅茶を
用意させる。
背景音楽としてラジオをつけると雑音が聞こえてきた。



「――――――――――――――――――――――――――。
以上を理由として、我が近衛内閣は、国民精神総動員中央連盟を
中心として、国民精神総動員運動を策定致します。
理由としましては日中戦争の拡大に伴いまして国民の皆様には
より一層の国家への協力をお願い致します。『挙国一致』
国の総力を挙げてさらなる繁栄を大日本帝国にもたらすのです。
また、それに際して国民の皆様には国債の購入をご検討いただきたく
今こそ国に尽くすべきときではないでしょうか。国債をご購入
いただきますと我が大日本帝国は著しく―――――――――――。」



遠くでチャイムが聞こえた。
前回と違うのは国民精神総動員運動が策定された後だということだ。





「帝都に咲く花」立志編第四話は以上となります。
今後もこのように趣味全開で定期的に投稿してまいります。
小説以外にも情勢解説や、個人見解なども公開して参りますので
ぜひフォローも宜しくお願い致します。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?