見出し画像

「古代ギリシア発掘史」

「古代ギリシア発掘史」ロラン&フランソワ・エティエンヌ著 青柳正規監修 1995年 創元社刊

日曜日にちゃんとお休みできたので書籍のご紹介。いつもの石膏像記事は、じつは1月中に全部下書きを作ってしまっていて、普段はそれをタグ付けしてアップしてるだけなんです。告知ツイートするときにあれこれ写真を検索して添えてみたりするけど、基本的にはササっと終わらせます。普段はほんとに時間が無いのでそれで精一杯。5年前に比べると、ネットに何かを書く時間ってほんとに少なくなってしまった。今日はちゃんと今書いています。

ということでこの本。これおすすめ。というか創元社の「知の再発見双書」シリーズは全部お勧め!


①本のサイズが小さい
子供達が小さい頃は、家で本を読む時間なんてほとんど無くて、工房との往復の電車の中が唯一の読書タイムだった。だからサイズが小さいこと大事。

②図版が豊富

文章と図版の比率が3:7くらいで図版だらけ。画集のように図版だけの書籍はストーリーが見えてこないし、美術とか歴史の書籍で文章ばかり続くのはちょっと辛い。様々な分野の専門家ではないわけだから、自分にとってはこれくらいがちょうど良い。

③平易な文章
時系列で淡々と歴史的事実が綴られていく。高校の歴史の教科書を少しリッチにした感じ。ほとんど翻訳だけど、文章に問題はない。

④ほどほどの専門性
様々なテーマですでに100冊以上刊行されていて、それぞれのテーマに専門性があるので、内容自体はそれほど攻めてない。あくまでその分野の概要をざっくり説明。でも日本側の監修はその分野の大御所さんが担当。ギリシャー・ローマなら青柳先生だし、エジプトは吉村先生。ダヴィンチ、ロダンは高階先生。

⑤類書にはないテーマ・切り口
「都市国家アテネ」
「カルタゴの興亡」
「旧約聖書の世界」
「エトルリア文明」
「ローマ教皇」
「黄金のビザンティン帝国」
「ルーヴル美術館の歴史」
「カミーユ・クローデル」
などなど、なんか痒い所に手が届く感じが良いですね。
Wikipediaで表示される何かの検索結果を、一冊の本に仕立てるとこうなるかなと。本来ならその分野を研究している学者さんの論文を読むべきなんだけど、シロウトはなかなか近寄りがたいのでね。

「古代ギリシア発掘史」も素晴らしい。僕はこれもう7回は通読してる。どんだけアタマ悪いんだ!?って話だけど、何度読んでも発見があって面白い。その時々で自分自身の脳内もアップデートされてるから、以前は気づかなかった物事の相関関係が不意に見えてきたりして勉強になります。

「古代ギリシア史」とか、「古代ギリシア美術」とかなら他にもずいぶん書籍があるけど、「発掘史」だからね。考古学というのは18世紀以降に本格的にスタートする学問だし、古代文明というのはそういった考古学が発掘・発見したからこそ明確な概念として我々が認識できるようになったわけです。だから17世紀以降の発掘・研究の歴史的な流れを知ることはとても大切なんです。

当たり前のことなんだけど、ルネサンスの頃の人々にとっての「古代ギリシア・ローマ文明」という概念は、現代の我々のそれとはずいぶん違います。ギリシャとローマの区別はほとんど無い状態。キリスト教をベースにした社会にとっては異教徒の文明ですしね。それが様々な遺物が発掘されたり、ギリシャ(当時はトルコの支配下)に旅して遺跡を目にする人が増えてきたりして、徐々に情報がアップデートされ、やがて帝国主義による侵略とセットになるような形で発掘と略奪の嵐がやってきて・・・。

考古学とか古代彫刻に興味がある方で、あんまり難しいのはダメという方にはお勧めの一冊です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?