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ニュービジネス/シノギについてあるいは新「三業地」産業論

むかしの「シノギ」にはニュービジネスのヒントがある
●現在のさまざまなニュービジネスも、じつは日本にふるくからある仕事(いわゆるシノギ)だったりするのではないでしょうか。例えば
アウトソーシング→下請け
これは有名。このアウトソーシングという概念は、じつは1970年から80年代にMITに留学したゼネコン社員が、日本固有の設計施工一貫の総合建設業(もとは江戸時代の総合請負から発展してきた)の建設システムについて博士論文を仕立てたときに、向こうのビジネススクールの先生が大いに感心して取り入れ普遍化して、それが日本に逆輸入されたという「都市伝説」があります。(これ自体も面白くて、アメリカのことを学ぶのではなく、むしろ日本のシステムが先進的であったというわけです。当時Japan as No.1だったからなー。逆に言うと、当時流行のTQCでロジカルにも整理された日本のゼネコンシステムの紹介で、博士号をとれたというじつに手抜きで痛快な話でもあります。)(余談ですが、欧米では建築家が各工種の業務を監督して建設するほうが一般的で、日本のようにゼネコンがすべてやってくれるのは世界でも珍しいらしいです。だから日本の設計者は楽だけど設計料も低い?)
人材派遣(テンポラリースタッフィング)→口入(くちいれ)業
ふるきよきヤクザ映画での組の稼業がだいたいこれです。関西の有名暴力団も、もとは神戸港の荷役人の派遣業でありました。近年の非正規雇用普及への制度改正の最大の障壁は、じつはそうした労働者派遣のピンハネを禁じてきた法律だったらしい。(いまの人材派遣業もビジネスのルーツはヤ……?と思うけど、それなりに経済合理性はあるわけです。)家政婦や料理人の派遣組合がそれぞれ地域にむかしからあったようです。
公共事業PFI、コンセッション、行政サービスの民間委託→
 御用人制度、徴税請負人制度

江戸時代、北海道の開発は松前藩が自前で行って失敗して、御用人に権利を与えて商売をさせて利益を得ていたという。これは今でいう民間コンセッションの委託事業となんら変わりありません。最近流行の行政サービスの民間委託も、古くは税の徴収を代行させていた中国やヨーロッパの徴税請負人と似ています。いまはやりの「ふるさと納税」では、あれだけのTVCMを流すだけの利益がその仲介業者たちに流れているわけで、彼らもまた一種の徴税請負人といっていいでしょう。(現在においてこのような税金のピンハネが合法的に許されていることに驚きます。だいたい、返礼品をつけて税金を集めるってそもそもおかしくないか?)つまりは、民営化した瞬間から問われるのが、適正な手数料かピンハネかの線引きであって、公共インフラの民営化は、仙台市の水道や電力でいろいろヤバくなってきたように、インフラの公共性と民間の営利追求とはやはりそもそも原理的に矛盾するのではないょうか。それを糊塗するためには、結局、公共性を担保するためのチェックが膨大に必要になってきて、逆に非効率ともなります。(道路や橋の管理・修繕を民間に委託した場合、それが適切に管理されているかの公共側からのチェックに、結局手間がかかってしまって、民営化のうたい文句のような効率化やコスト削減がトータルとして本当に実現するかは疑問です。)
まちづくりやエリアマネジメントのイベントの出店者(フリーマーケット・屋台村・軽トラ市)→テキヤさん
いまのエリマネイベントお祭りのときに、広域でイベント・屋台・カフェ飲食をデリバリーするシステムやノウハウが、テキヤとしてむかしからしっかりと確立されていました。しかもきちんとマネジメントされていました。
サブスクリプション→富山の薬売り(配置販売)
これに関しては、別の記事で論じました。(「サブスクリプションについて考える」2022年5月4日
クラウドファンディンング→勧進
コモン→共有地
スモールビジネス→小商い
この上の3つは、並べただけで、平川克美さんの本を読んでこれから勉強したいと思います。
ウーバー→白タク
個人営業による配送は、やっぱり日本では禁止されたままです。
ケータリング→仕出し屋さん

新「三業地」産業論
●ケータリングに関連して話が少しとびます。
赤線すなわちエリアを限定した公認の売春業がまだあったころ、渋谷の円山町などは「三業地」と呼ばれていました。3つの「業=ビジネス」とは
 ①場所提供(待合:いわゆる旅館みたいな場所)
 ②人材提供(芸妓屋:置屋:娼婦の派遣)
 ③料理提供(料理店:仕出し屋)
それらの業者が組合をつくって、その許可されたエリアでビジネスをマネジメントしていたわけです。広義の飲食+エンターテイメントサービスにおける場所・ひと・料理の提供を、単一の主体ではなく、3つの主体、ビジネスにわけてそれぞれリスクを分散するという、じつに賢いモデルが成立していたわけであります。(ついでにいうと、夜のエリアマネジメントといってもよいかもしれません。)
●こうしたビジネスモデルは、いまふたたび見直されるべきではないでしょうか。もちろん売春というビジネスではなくて、あるイベントにたいして、空いている使えそうなスペースが常時登録してあって(エアビーのように)、それをマッチングして、ふさわしい料理をケータリングして、人材(たとえば登録してあるきれいなお姉さん)をササっと派遣するものです。場所・人・料理をいったんは分割して個々の主体が担いつつ、その都度、ふさわしいものをコーディネートして提供するビジネスは、ひとつの飲食エンタビジネスのジャンルとして成立する可能性があるではないでしょうか。
言い換えると「飲食をメインにしたマッチングサービス」であって、すでに、会場を自前で持たないウェディングビジネスグやパーティのイベントでは実施されているかもしれませんが、それがもっと小さなスケールで気軽に実施されるというイメージです。主体とリスクの分散がカギだと思います。
●下請けをアウトソーシングと呼び変えたように、この「三業地」システムもなにかうまい言い換えができれば、ヒットしそうなんですが。「トリプルビジネス?」「スーパーケータリング?」「テンポラリーパーティレストラン?」「サービスマッチングビジネス?」、、、これではまだ駄目でしょうけど。とりあえず「三業地」産業とでも呼んでおきますか。
●ICT技術の進歩によって、逆にいままで見落とされてきた古いビジネス(シノギ)がまったく装いを新たにして、大きなビジネスになる可能性を秘めています。そしてなによりも、江戸時代にすでに今も通用するような高度なビジネスモデルができていて、もっというと、人間のやることはじつはそんなには変わっていないということが、ぼくにはとっても面白いと思います。

sponge 2017


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