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塩野七生の読み始め ボードゥアン4世から

塩野七生は膨大だ。
イタリアを中心にした膨大な著作で知られる作家だが、もはやとっつき難くすらある。そう思って手をまったく出していなかった。ようするにちょっと敬遠していた。読めば面白いのはわかっているけれど、それでも何となく手が出ない長編作のような気分で。
それが突然読んでみようと思ったきっかけは、映画キングダムオブヘブンを見たから。
みんな大好きリドリー・スコットの傑作映画。十字軍とサラディーンの戦いを描く大スペクタクル映画だが、これもまだ見ていなかった。これもきっかけがあって、非株式会社いつかやるというYouTubeチャンネルで十字軍の戦術解説を見たから。そして、そこで何気なく十字軍とか検索したときに、あったのだ。キングダムオブヘブンのボードゥアン4世の銀のマスクを被った姿の写真が。なんだこれは。こんな美しいものがこの世にあったのか。そう電撃が走った。引用していいものかわからないので見てない人は検索してほしいのだけれど、ほんとうにすごい。
そして、映画を見たらもっとすごい。まったくここで語る気はないのだけれど、今まで見た映画の中で、一番かっこよく美しく神聖な王だ。こんな王が実在したのか。演じるのはエドワード・ノートン。自分の中ではレッドドラゴンのグレアム役の印象だった。らい病を患い、銀の仮面に全身に包帯という王なのだが、これもまた実在の話らしい。ほんとうに居たのか?確かにいたらしい。そうなると、実際の王のことも知りたくなる。そうやって、長年開けずにいた塩野七生の扉を開けたのだった。たしか十字軍のことを書いていたなと。だから邪道なことにボードゥアン4世が出てくる二巻から読み始めた。案外、そこまで章は割かれていない。それは当然で、なにせその治世は短く、王もまた短命だからだ。しかしそこに描かれている姿は、ほんとうに映画のような王が実在したのだという力強さのあるものだった。その前後も読み進めると、キングダムオブヘブンの設定は様々なものを混ぜ合わせたものだというのもわかった。特に主人公のイベリンが要素を混ぜ合わせた完全創作人物なのだから。
しかし、そういう点も含めて、二巻の途中から読み始めて、その前後を読み始めるという変な読み方をし始めて、もしかして塩野七生の読み方はこれが良いのでは?と思い始めた。どこか興味をひかれた人物や時代を目当てに読み始めると、そのままその前後へと連れていかれてるのだ。なぜなら、その人物や事件には、それに連なっていく過去と、それが与えた影響が広がる未来があるからだ。そうして一か所どこかを読み始めるて広がっていく。そういう風に読んでいい作家なのかもしれない。


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