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読書感想 村上春樹 世界の終わりとハードボイルドワンダーランド

村上春樹さんの長編小説です。
5年くらい前に図書館で借りて読んで、そのあと文庫本を購入しました。

新潮文庫は上下巻にわかれているのですが、私は下巻しか持っていません。

なぜ下巻だけ購入したかというと、
多分、手元に置いてラストの部分を読み倒したかったのでしょう。

(私はミニマリストっぽいところがあり、物が増えるのが嫌なので、紙の本は本当に何度も読み返したいものしか購入しないのです)

この作品のラストが好きで、本当に読み倒しました。

物語終盤の、「私」の感情の表出といいますか、一人称の心理描写がすごーーく村上春樹さんらしくて好きです。

以下引用
「もっと若い頃、わたしはそんな哀しみをなんとか言葉に変えてみようと試みたことがあった。しかしどれだけ言葉を尽くしてみても、それを誰かに伝えることはできないし、自分自身にさえ伝えることはできないのだと思って、私はそうすることをあきらめた。そのようにして私は、私の言葉を閉ざし、私の心を閉ざしていった。深い哀しみというのは涙という形をとることさえできないものなのだ」

私も同じような感覚を持つ人間です。
私も、心の地盤には孤独しかないのです。
そういうものを持って生まれたのだと思います。
肥料をやっても水をやっても希望の根が育たない、希望の芽が出ない、やせ細った土なのです。そんな地盤を持つ人間は、どうにかして自分を騙しながら、上物を建てるしかありません。
でもそれって薄っぺらいな、すぐに倒れちゃうな、と感じることがあります。

村上春樹さんの作品を読むと、自分を肯定してもらえたような、不思議な気持ちになります。

水を張ったバケツのなかに、水彩絵の具を少し垂らして、その色がバケツ全体に広がっていくような、(その絵の具は希望の色です)
なんともいえない感覚が胸に残ります。

 「世界の終わりと」と「ハードボイルドワンダーランド」、
同時進行する二つの物語を結ぶ以外な結末は、後ろ髪を引かれる、不思議な余韻の残るものでした。

自分の心の地底部に潜む核について、掘り下げて考えてみたくなるような、不思議な余韻です。

これをぜひ実際に読んで確かめてみてくださいね。












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