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読書感想 村上春樹 スプートニクの恋人

村上春樹さんの著作はどれも素晴らしいのですが、そのなかでもわたしはこの作品が特に好きだったりします。


何に魅かれるのかなあ、と考えてみたところ、相手には決して届かない思いが如実に表現されているからなのかなと思います。
村上春樹さん特有の「行き場のない思い」がとてもリアルに描かれているというか。

私自身が相手に思いを伝えることが得意な方ではないので、この「行き場のない思い」に共鳴してしまうのでしょう。
ははは。

物語の結末も非常に悲しいというか、せつないんですね。オチもないですしね……(これも村上春樹さんの作品の特徴のような気がします。伏線が回収されないことについて、モヤモヤする方もいると思いますが、私は物語のあらすじよりも登場人物に感情移入してその表現力を心のなかでなぞるのが好きみたいなので、あんまり気にならないのですが)
作品を読み終えたとき、はあー、とため息が出ました。
これは言葉に出来ない胸の奥の感情の欠片がうっかり出てきちゃったような感じですね。
(意味わからん)

言葉に出来ない「胸の奥の思い」を揺るがすような作品て、そうそう出会えるものではない気がします。

村上春樹さんが使う文章の魔法は、
読む人間の胸の奥に宿っている(普段は眠っている)魂を揺るがす作用があるように思えてなりません。
そうでなければ、こんなに本が売れるわけないですもんね。

さて、「スプートニクの恋人」ですが、
恋愛小説なんでしょうね。
小学校の教師をしている主人公は、作家志望のすみれに恋しています。
一方すみれは、いとこの結婚式で出逢った韓国人キャリアウーマン、ミュウに恋をしてしまいます。
主人公のすみれへの思い、すみれのミュウへの思い、ミュウの過去……
さまざまな思いが錯綜します。


最後は、主人公のすみれへの思いだけが残ります。でもその思いは行き場のないものとなってしまうのですね。

なんていうか……とてもせつない印象的なラストです。

 ぜひ一度読んでみて下さいね。





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