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地域おこし協力隊を始める方のために

(この記事は、無料で最後まで全部読めますが投げ銭設定します。状況に応じてリライトした場合、投げ銭してくれた方には更新通知が届きます。)
鳥取県で地域おこし協力隊の相談とか起業のサポート、行政から組立の相談までしているゲンヨウです。
僕自身は隊員OBではないのですが、学生時代から事業をやったり、大学生など若手を地域に関わらせる仕組みなので、結果的に協力隊みたいな事をやってる人になってます。

今回鳥取県の協力隊に講師で呼ばれました。そこでお話ししたこと、準備していたことを少しまとめてみました。(そしてその後追記していきます)

【注】あくまでも鳥取県内の協力隊の相談や全国に呼んでいただいた先で聞いた話を基に記述しますので、考えている地域の協力隊と100%同じということはないと思って読んでいただければ幸いです。

1.地域おこし協力隊という制度と可能性
2.地域おこし協力隊からよく聞く悩み
3.隊員×地域×行政
4.行政のお作法
5.地域のお作法
6.食っていく売上をイメージする
7.就職という地域への残り方
8.協力隊同士の連携
9.第三者機関の協力
10,協力隊という仕組みを活かすには

1.地域おこし協力隊という制度と可能性

 地域おこし協力隊(以下協力隊)とは総務省の制度で、都市部(主に3大都市圏)からやってきた人が任命されて、地域に関する事業を行ないます。単年契約の最大3年間、地域でチャレンジが可能です。

 ちなみに29年度は4830名の隊員が全国で奮闘しており、地方創生の一つのカタチとして紹介されることもあります。鳥取県内でも一時期100人近くの隊員が、県内19市町村のうち18市町村で入っていました(2018年6月現在は60名前後になっているようです)。

特別交付税という財政措置で、協力隊の予算は国から執行後に補填される仕組みになっています。人件費が200万、事業費が200万の最大400万円を1年間で使うことを自治体は選べます。
※途中で辞めてしまう場合、国から自治体に交付されないという話でしたが、11か月以上の任期があれば大丈夫だそうです。

 ただ、この交付税措置と言うのがやっかいもので、いくつかの自治体で直接聞いたのは、他の交付税と一緒にまるっと国から支払いが来るので、執行予算100%払われているかわからないモノだそうです。

例:A事業100万+B事業150万+c事業250万=500万(執行予算)
  国からの支払い→450万(内訳は不明)

なので、自治体によっては400万の満額予算を取ってないところもあります。これについては担当者に確認してみてください。 

一方で各自治体の予算として議会承認を受けて執行するので、比較的テーマ設定は自由なカタチで組まれています(あくまでも判断は各自治体)。

本質的な部分で言えば、地方自治体にとっては、都市に向いている若者の目が、一瞬でも地方にむいてもらえている状態がチャンスですし、若者にとっても、自分のやってみたいことを地域で挑戦させてもらえるものと捉えれば可能性が大きくなる仕組みではあります。
 総務省の地域おこし協力隊のページ

2.地域おこし協力隊からよく聞く悩み

協力隊から聞く悩みは
(1)卒業後の仕事について
(2)地域が困っていないこと
(3)行政と連携がうまくできない
(4)情報が多くなりすぎて整理できない
の4つが多いです。
悩む原因については、次にあげる3つの視点で考えるとわかりやすいかなと。

3.隊員×地域×行政

 協力隊制度は地域の人材だけではできないテーマを地域外の目線や繋がり、能力を活用して、いい感じに実行していくものです。なので、隊員と地域と行政の連携が不可欠になります。ここのミスマッチが悩みの原因になったりします。

 一点目の隊員によるものです。全体的には若い隊員(20代~30代前半)が多いですが、場合によっては設定テーマのレベルが高すぎて、隊員がやりきれないというものがあります。

 実務経験が足りなかったり、スキルが足りなかったりします。全国で5000人近くも任命されているので、すごい実績を持っている方もいれば、一つの就職先という感じで入ってくる人もいるので、テーマと能力があわない場合は悩んでいます。面接時にその辺を確認されると良いかと思います。

 また、自分のやりたいことへの思いが強すぎて、テーマから外れてしまう場合があります。後述しますが、あくまでも税金であるので、自由度についてはバランスです。活動的な人は辞めて好きにやった方が、収入面の不安はあると思いますが、意外とうまくいく場合もあります。

 二点目は、地域です。受入れ地域が、スーパーマン的な人が来ると思って丸投げしてしまったり、活動テーマが地域課題と結びついて無かったりすることもあります。

 「そんなに頑張らないで良いよ」なんて隊員が言われてしまったりします。そこにやりがいや意味を感じている場合、隊員はずっこけてしまいます。誰でもいいから、来て手伝ってくれるんだったら手を上げておこう、自分たちはお金の負担はしなくて良いし。という感じで隊員を募集している場合や、声の大きい人が役場に相談した課題が、実はそうでもなかったというものもあります。

 役場と地域には、どんな課題をどうして欲しくて、どういう人材が必要なのかを事前に仮説を立てるところ、下調べを行なうところまではやっておくことをおススメします。下調べは、その地域に先輩の地域おこし協力隊がいる場合はtwitterなどSNSでアポイントとって聞くのが一番良いです。

あと面接官に地域の方が入っているかを確認するのも良いです。地域の人と選ぶ場面で会っておけば、自分で選んだ人材という思いが出ますし、地域の方の責任感が増えますし、地域側にちゃんと役場が話を通していることもわかります。

 三点目は行政に関するもの。制度上は協力隊は公務員なのですが、移住して起業するなどビジネス要素が多く、副業も前提にしてもらわないと生き残るのは難しい。給与は年間200万(250万までは制度上は上乗せOK)なので、月額16万6千円です。手取りはもっと下がるので、公務員であって、公務員ではない感じです。

 でも、従来の非常勤職員、臨時職員のカタチで運用している場合があります。これは一般職と言って基本的に副業はNGです。最近は、それでも許可を出してもらうパターンが増えてきています。できれば特別職の公務員で雇用してもらう、もしくは任命しているけど、雇用関係は無いという委嘱契約も可能なので、事前に聞ければ確認したほうが良いです。
注)ここは国の非常勤職員等に関するルールが変わる予定なので、わかり次第更新させていただきます(2019年06月01日:追記)

 雇用されないパターンは自由度も上がりますが、自律できないと、けっこうグダグダになってしまう場合もあります。自分で目線をあげる努力は必要になります。

 あとは予算の執行の部分での担当者と隊員の理解の差もあります。これは僕がNPOの経営をしていてもぶつかる部分で、担当者の裁量がかなり大きいです。だから、いい担当者になったときにルールを明文化してしまうことをおススメします(それでもルール変更ある場合があるので泣きそうですが)。グレーなものは自腹でやった方が、手続き的にも気持ち的にも軽くなる可能性は大きいです。

予算に関しては、総額は400万(人件費込み)であり、そこから家の家賃、車のガソリン代(場合によっては公用車のレンタル代など)を出しますので、上限は決まっています。無理に隊員予算を使うよりは、別の予算や金融機関の融資なども意識したほうが良い場合もあります。

「人材、地域、役場」の3つが上手く組み合わさっている、地域の課題に即して、行政も柔軟な運用をしていて、隊員も人材像にあった人が来ているところがうまくいきます。一番のコツは最初の設計だと思うので、自治体の方でお悩みの方はご相談いただければ対応します。

4.行政のお作法

 制度上は公務員なのは先ほど書いたとおりですし、財源は税金なので、隊員の方は行政のお作法を知っておくべきものです。仕組みがわかればうまくやれることも多いです。

(1)予算の組立はスケジュールが決まっている
例えば予算の組立の時期が決まっていること(議会の承認が大前提)。年間の大枠が決まる当初予算に盛り込んでもらう方がうまく行きますし、補正予算として取るとなると難しい場合もあります。

 1年目の隊員の予算は既に組まれているので、入った年の9月~10月くらいには次年度の当初予算の組立が始まるので、担当者に相談しておくのが良いです。

また、担当者が予算をガッツリ取りたいと思っても査定(お金を管理する担当のチェック)があります。最初の方に書いたように、特別交付税という形式なので、渋い自治体(返ってこない可能性があるから、必要最低限にするところ)とそうでない自治体(とりあえず満額確保して考えるところ)があります。担当者とうまくやりましょう。

(2)稟議書で権限のある人に確認が必要
ハンコを押していくやつですね。課長でOKのものもあれば、部長、首長(市長、町長など)といろいろあります。そこを書類が上っていく必要があるので、時間がかかります。小さな会社のようにすぐに決裁が下りない場合もあるので、何か行動を起こしたり、予算を使う場合は時間的な余裕は欲しいところです。どれだけ良いことであっても、手続きをすっ飛ばしてはできないので、段取りが重要です。

(3)税金の使い道として問われる
 税金を財源にしているので、何にどう使ったかは説明できないといけないです。なので資料や写真など記録や事実確認のための書類作成が出てきます。これも議会・住民への説明が必要になるのである程度割り切って作業する必要があります。

 説明のための、説明のための、説明のための書類みたいなマトリョーシカみたいな、何のための書類かわからない製作物を出してと言われる場合もあります。そこはうまく作業量が減らせると良いので、担当者やその上司などと相談しながらうまくやりましょう。

うまいやり方は僕も10数年NPOをやってきているので、技や考え方のアドバイスはできます。そして、役場の中にもそういう技に長けた方がいるので探してみてください。

5.地域のお作法

 僕も農村集落にボランティア派遣して10年以上なので、感覚が薄れてきちゃったのですが、田舎ならではの地域のルールがあります。『郷に入れば郷に従え』とまではいいませんが、やっておいた方が、うまくなじめて応援者も増えます。

論理的ではない部分もあります。しかし、そこを抑えておくことで、なぜかわからないが急に自分への風向きが追い風になるなど、非論理的だから話が進むことも多いです。「よくわからんが、お前がやるなら応援する」みたいな感じです。

 もしくは自分を守ってくれる地域内のおじさん、おばさんが、地域の方から非難を受けないためのお作法と思ってくれたら幸いです。

相談とか乗ってくれる方が、見えないところで批判の楯になってくれていること実は多いです。

地域のお作法のために、やったほうがいいことは以下に記します。

(1)人が集まる行事には出ること(運動会、祭り、共同作業)
 入る地域にもよりますが、年始には年間スケジュールが決まっているので上記3点の日程は押さえておいたほうが良いです。運動会で頑張って走ってるだけで「あいつは頑張っている」と思ってもらえることもあります。地域外の人がいることが不安を生んではいるので、顔見せが大事です。祭りとか担い手不足なので、出るとありがたがられることが多いです。

 ちなみに、うちの会社は集落に住むようになった職員は、地域行事を最初の1年はすべて勤務扱いにして、平日に代休を取ってもらうようにしました。自分の時間を持つことも大事だけど、どの行事が重要行事なのか一年目はわからないし、断り方もわからないので、まずはリズムに合わせてみるって感じでやってます。

(2)挨拶と出張時の情報共有は大事
 移住イベントの担い手などで土日出張で不在にする人も出てくると思います。口には出しませんが、車のあるなしとかよく見ています。なので、空ける時は隣の家の人とかに伝えておくと良いです。
 若い人が地域に住む、しかも縁もゆかりもないのに。地域の人からすると大袈裟ですが、その決断の意味がわからないので、逆に心配になっちゃうんですね。でもシャイだから声はかけない。なので、先に情報提供しちゃうのが楽です。

(3)重要人物、味方になってくれる人を見つける
 声の大きい人が、地域の重要人物とわかりやすかったらよいのですが、実際は違ったりします。いつも静かでニコニコしているおじいちゃんだったり、活動的なおじいちゃんだったり。その地区の重要人物が誰なのかを見つけていくのは大事です。また、味方になってくれる(多くは無関心なので)人も早い段階で見つけるといろいろ教えてくれます。
 女性会の作業とかに行くのも良いかもしれないです。

6.食っていく売上をイメージする

 もし、任期中、もしくは任期後に起業を考えている場合は、どのくらいの収益を上げていけば良いのかをイメージしましょう。製造業なら、製品単価×年間販売量ですし、飲食とかゲストハウスなら客単価×人数になります。

 また、自分が生きていくのに必要なお金がどのくらいなのかを積算しておくのも大事です。協力隊は16.6万円(年収200万)なので、その金額あればと思っている方が多いのですが、住居費や車に係る必要を活動費(残りの事業費)から出している場合もあるので、同じレベルで生活する場合は、16.6万円+家賃分+αの収入が必要になります。

 その辺の任期後のお金、5年後あったら嬉しい金額などをイメージして、仕事づくりができたら良いですし、開発する商品・サービスの価格も、そこに連動します。

 これはネタ話ですが、「おばあちゃんの手作りおやきで稼ぎたい」という話を突き詰めると、1個100円(最初の想定売値)で売り続ける場合、年間数万個のおやきが必要な計算になり、おばあちゃんをロボット化することになりました。みたいなことになってしまうわけです。その辺のバランスは数字とにらめっこしてやる必要があります。

ちゃんと稼ぐということが、地域で認められる一つの指標でもあるので、まずは経済的な安定も考慮しましょう。

7.就職という地域への残り方

 実は、同じ地域もしくは近隣の市町への就職という任期後を送っている隊員も少なくありません。起業がテーマだったとしても、すべての人が起業して続けられるわけでもないですし、やりながら小商いの方が向いてるという場合もあるかと思います。

 それでも、地域に残って暮らしたい場合は、就職という手段も視野に入れてください。3年目に入った時点で、就職の可能性がある場合は、周りにドンドン伝えましょう。

 ハローワークにはない求人や、協力隊時代の動きを見ていて、一緒に働きたいと思っている人や紹介したいと思っている人も出てきます。目安は6月くらいから。遅くても9月くらいには話しましょう。年度末の2月とかに話を出されても、間に合わないことが多いです。

 その地域で、地域行事の担い手として残るということも、地域にとっては財産なので、就職という切り口も僕はありだと思います。

8.協力隊同士の連携

 協力隊同士の連携は、大きく分けると3つ。
(1)同一地区内の連携
(2)県内での他自治体隊員との連携
(3)全国の隊員との連携です。

 同じ地域内は純粋に労働力のシェアがあります。一人でやる作業よりも二人で取組んだ方が効率が良い場合があります。成果も大きくなるので、部分的でいいので連携する、もしくは先輩、後輩の関係性ができると良いです。

 同じ県で横連携を組んでいると、ちょっとした相談や合同企画などがやりやすくなります。孤独にもなりにくい。1自治体に1名というパターンもあると思うので、ちょっと距離を超えた気軽な相談相手としていいです。

 協力隊はテーマがバラバラなので、なかなか地域内で同じテーマがいない場合があります。情報収集や目線をあげていく機能として、頑張れる仲間として、全国の仲間を作ることをおススメします。

僕もジャンルは違いますが、同世代の地方のNPO経営者とのネットワークに励まされたこと、背中押されたことは何度もあります。

 協力隊として取り組むことは、地域では新しいことが多いので、自分の中の軸や、原点を確認する上でもそういう場があった方が良いと思います。

9.第三者機関の協力

 行政や、地域との間に立って客観的なアドバイスや、他地域の事例を紹介してくれる存在が地域にいた方が、抱え込まなくてよいです。第三者機関に相談できる体制があると良いです。

 例えばNPOセンターなのか、商工会なのか、中間支援と呼ばれる機関、近くの先輩事業者でも良いです。役場・地域に挟まれたときにHELPが出せる場を見つけておくと良いです。

 弊社も鳥取県からの委託の一環で、協力隊・地域・行政の間に立って調整したりしています。あとは、現状整理が多いですね。情報がたくさんで一人で考えるとわからなくなるので、そこの整理をお手伝いします。

全国に呼ばれる時は、客観的にお話しする役回りだったり、双方に気づいてもらうための講演だったりします。そこで出会った隊員の相談をskypeとかで聞いたりもしてます。

実はこの機能は役場や地域にも必要で、隊員とのバランスを取る存在として、移住者の団体やNPOなどに入ってもらうことをオススメします。特に基礎自治体は人員が足りてないので、協力隊担当を専任ではできません。事業費の中から、協力隊支援費用を別組織に出した方が、結果的には良い動きになります。

10,協力隊という仕組みを活かすには

 価値観が多様になって、地方に目を向けてくれる人が出始めている中で、協力隊と言う制度そのものは活かし方次第でうまく行くと思います。

解釈はいろいろですが、予算も国が出して、都市部の人も目を向けてくれている状況は地方にとってはチャンスです。

 例えば先日、総務省が発表していましたが、事業承継案件など、テーマと受入れ先、売上が事前に見えているものなどは、親和性も継続性も高いのではと思います。

 受入れ地域がまずは何のために活用するのかをイメージして、人材像と解決するべき課題のプロジェクトの設計をちゃんとすることが、成功へのカギかなと思います。

 今、入っておられる方は、協力隊の仕組みとして残るのが良いのか、逆に仕組みに縛られないほうがよいのかを考えるのも手です。ちゃんと動いている方には、それなりのネクストステップが見えてくると思います。

なんとなく、僕が認識しているものについて長文を書いてしまいました。参考になれば幸いです。投げ銭記事にしています。新しい情報が入ったりするので、リライトしながらパワーアップさせていきます。
あと、この話題で書いて欲しいというものがあれば、コメントとかくれればかけるものがあれば書きます。

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