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【書評:0003】イナカをツクル-嵩和雄著-

久々に書評を書くゲンヨウです。今回は地域おこし協力隊の研修のお仕事など一緒にさせていただいている、認定NPO法人ふるさと回帰支援センターの嵩さんの書籍です。監修もこれまたお世話になっている鳥取大学筒井先生です。献本いただきありがとうございます。

この本を読むべき人々は
・地域おこし協力隊など若者で地域でチャレンジし始めた人
・これから地域で何かやろうと思っている人
・地域おこし協力隊の受け皿などになっている地域の人や行政マン

非常に参考になる情報が載っていると感じました。もともと新聞のコラム記事をベースに作っているので、読みやすいです。

(1)個人・事業体・コミュニティと段階的に書かれている
(2)施策について、表などが載っていて全体像やポイントがわかりやすい
(3)産業振興、地域おこし、移住、教育などジャンルが幅広い
(4)事例に基づいたお話しと関わっている案件では舞台裏の部分も
(5)こんな人はこんな風に読んでみては?

(1)個人・事業体・コミュニティと段階的に書かれている

 個人としてどうしたか、事業体としてどうしたか、コミュニティとしてどうしたかと、事象によって対象を分類して書いてくれています。地方では、そこが明確でないままに話が進んでしまうこともあります。事例なども、個人の頑張りなのか事業者の頑張りなのか、コミュニティとしての頑張りなのか、その辺の切り分けができてない情報媒体は多いので、初めて地域に関わる人にとってはわかりやすい切り分けだと思いました。

あなたに降り起こる事、事業体として考えた方が良いこと、更に広い地域のコミュニティで起こる事。この意識は大事です。

(2)施策について、表などが載っていて全体像やポイントがわかりやすい

事例集的な要素がありながら、施策の流れを年表にしてくれていたり、既存施策を表で比べ安くしてくれたりなど、自分で取組むときの資料としても使いやすいですし、概念的に抑える上でもわかりやすい情報に加工してくれているのが嬉しいです。

こうやって施策や仕組みの歴史などもまとめてもらっているので、制度の背景や狙いがわかりやすいです。初心者には施策を作った”なぜ?”が見えるのがありがたいと思いました。

(3)産業振興、地域おこし、移住、教育などジャンルが幅広い

地域で起こっている、あらゆる分野の事例を紹介してくれています。地域は狭いので、僕は○○だけってのはなかなか難しく、各ジャンルの優良事例や止まっている原因を認識しておくだけでも、地域に入る若者としては、普通に入るよりも地域住民の信頼を得ることができるので、ここもありがたい設計です。

何でもかんでも前例主義は良いとは思いませんが、地方自治体としては、まったく新しい企画をやるよりも、別場所で成功のイメージがつかめているものに予算は投下される傾向はあるので、提案をする側としては、類似情報や先行研究を押さえる第一歩としては1冊に情報が良くまとまっていると思いました。僕も読んでいて、「おーっ」となったり、「あの話なのか」なるほどね、となったりしています。

また、この広いジャンルを嵩さんもちゃんと押さえているところがさすがだなと思ってしまいます。何か地域でやってみることが見えない人も、一読すると自分の中でピンとくる、プロジェクトに出会える気がします。

(4)事例に基づいたお話、そして関わっていた案件では舞台裏の部分も

ただ事例を並べているだけでなく、その地域で聞いてきたエピソードや関わって来られた舞台裏の話なども載っています。それだけ、全国飛び回っているんだなということと、NPOに全国の情報が集まっていることなんだろうなと思いました。

既存施策についても、自分なりの見解もうまく入れながら、地域側として選ぶべき視点や考え方も書いてくれていると思います。長期的な視野が入っているので、なかなか理解されづらいことをしている方々も勇気づけられるのではないでしょうか。

(5)こんな人はこんな風に読んでみては?

○地域に入ったばかりの人の読み方

地域に入ったばかりの人は、まずは地域のお作法やルールの部分から読むことをおススメします。都会暮らしが長いと謎なルールが地域ではあります、その辺の謎だと認識してもらうには良いかと。そして、自分の事業の方向性などが見えてない人は目次でピンと来るところから読んでみてはと思います。事業のヒントが載っています。

○地域に入ろうと思う人の読み方

これから地域に入ろうと思う人は、目次の中でも事業に繋がりそうな部分から読むと良いかと思います。地域でやりたいことがある程度意識していることが最初のモチベーションになりますし、地域に入っても聞かれることになるので、ピンとくるジャンルは、飲食系なのか、事業承継なのか、空き家活用なのか。イメージは大事です。もちろん、現場に入って師匠に出会ってやることが変わることはありえます。それはそれで良いと思います。都市部出身者でこれから入ろうと思う方は、準備体操的な感じで、暮らしの部分についての記事を読んでおくと良いかなと思います。

○地域で受け皿になる人(地域組織や行政の人)

受け皿になる人は、まずはルールの部分を読んでおいて、自地域のルールを書き出しておくと良いと思います。入ってくる人とは早めに共有しておきましょう。田舎の当たり前は都市部住民にとっては当たり前ではありません。

あと、事例の部分に書かれていないことを想像しましょう。うまくいっている地域はその何倍も失敗してたり挑戦していたりします。すんなりはいきません。模倣したい地域があれば、そこに訪問して失敗部分も含めて情報収集することをおススメします。

行政の方は、うまくルール(条例など)を読み解いて活用できるように動きましょう。柔軟な対応が結果としてイナカをツクル人材のチカラが活かされる可能性が高くなります。地域おこし協力隊は制度としては、かなり柔軟に使った方が良くて、固い運用は制度や若者のチカラを削ぐことになります。

そんな感じで、地域に入ろうと思っている人、地域に入ってきた人を受け入れる立場の人。様々なコツや事例がちりばめられていて、1テーマ数ページと読みやすいので、どこからでも読み始められるので、是非手元に置いてもらえたらと思います。

余談・・・僕が一番ビックリしたのは、嵩さんのお父さんが”太陽の塔”の制作に関わっていた人だった部分です(笑)

twitterもやっています。インプットしたものをアウトプットするのも大事ですね。書評はどこまで書いていいのか難しいなと思いつつ、おススメです。フォローいただければ嬉しいです。




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