【詩】道半ば
クロスバイクと風になる
見慣れた街を置き去りにして
見たことのない風景に飛び込む
迫り出すような山肌を横目に
曲がりくねる道の先に期待して
クロスバイクが重くなる
川から流れる冷たい風が
ペダルと全身を軋ませる
眼前に迫る急勾配は壁で
挑む前に気持ちをくじいて
クロスバイクが斜めになる
歪む視界でハンドルを立て直し
蛇行しながら刻んでゆく
心臓の鼓動が耳にうるさく
振り払うようにペダルを踏んで
クロスバイクが峠を捉える
途中で絶対に足をつかないと
窮屈な穴の中でもがくように
汗に塗れた身体で
愚直に気持ちを奮い立たせて
クロスバイクと風になる
苦しい道程は後ろに吹っ飛び
風景が狂ったように暴れる
叫び出したい喜びが全身を満たし
わずらわしい全てを笑い飛ばして
もうすぐ夏が終わる
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