見出し画像

「街とその不確かな壁」The City and Its Uncertain Wallsを拝読


「きみが教えくれた街。」
冒頭から、瑞々しい文章と物語に惹き付けられた。
そして、街の成り立ちと図書館での出来事。
不幸な事故とそれを背負った、妻のある夜の行動。
妻の想いの詰まった二本の葱の謎。
子易さんの奇妙な服装と死。そして、ふたたび図書館に姿を表す。
伏線は回収されなくとも、読者が回収する。

これまでの、村上春樹さんらしい考えさせられる奇抜な比喩から、ストレートな比喩に変化した文章構成。
不幸と喪失から立ち直る主人公の物語ではなく、喪失から立ち直るすべは、読者に委ねられているようなストーリー展開だ。

素晴らしくスビリチュアルで、何か物足りない、不確かで不完全な世界が広がり、イエローサブマリンの少年が引き継ぎ終結する。

何かを暗示しているとすると、なんだったのだろう。

分厚い本だが、何度も読み返してしまいそうで、読み返しても新しいメッセージをもらえる本だ。

ドーナツの穴に哲学があるとする。
穴は無なのか有なのか。そんな話を思い出した。


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?