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自分の症状を知らない患者さん

小さいころから悪かったものは本人が気づいていないことが時々ある。
と言っても何のことかわかりませんよね。
実は過去にこんな患者さんがいました。

腰痛で来院。
発症して数年たつという。
どこに行ってもその場は少し良くなるが、すぐに戻ってしまう。

私の見立てでは、腰痛の直接の原因は大腰筋の筋硬縮。でも、体力がないということが根本的な問題。なので活力核酸(体力をつける食品)で体力を付けながら大腰筋の治療をする。
こういう患者さんは体力をつけないと戻りが極端に早い。場合によっては症状自体が改善しない場合もある。
数回の治療で腰痛は完治したが、腰痛になる前よりも良くなったので定期的に通いたいという。
もちろんその方がいいので通ってもらった。
その甲斐あってだんだんと体力もついてきた。

ある時「私って怠け者じゃなかったんですね」と言う。
何のことかわからないので聞いてみた。
するとその患者さんは子供のころからずっと根気が続かず、少し長く立っていると腰がつらくなってその作業が続けていられなくなる。周りのみんなはできるのに私だけできないのは私が怠け者だからだと思っていた。
子供のころからずっとそうなので、何も疑うことなくそう思い込んでいたらしい。

体力が無いというのは目に見えないことなので他人との比較ができない。
なので私が辛いのと同じようにみんなも辛いと思ってしまうらしい。それなのに私だけができないので私は怠け者だという風に思うらしい。
ご主人が定年退職でずっと家にいるようになり、時々食事の支度が辛くて出来合いのものを出したり出前を取ったりしていた。するとご主人から「定年してまでこんなものを出されるのか」と愚痴を言われていたらしい。愚痴を言われても自分にはどうすることもできないので謝るしかなかった。
それが今は平気で料理が作れる。「あぁ私は怠け者ではなかったんだ!体が弱いだけだったんだ」と初めて気づいたらしい。

ご主人が定年退職するまで 自分はずっと怠け者だと勘違いしていた人生はとっても残念だと思う。
こういう人の人生が1人でも多く、そして1秒でも早く良くなってもらいたいとつくづく思う。
そしてこういう仕事をしていられることが私の幸せなのだと常々思う。


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