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記事一覧
小説 フィリピン“日本兵探し” (19)
マサからの電話を終えた後、受話器を置いた宮田は、東京の本省の援護局事業課長である本郷にすぐ電話を入れた。
「本郷課長、旧日本兵が生きているという情報が、フィリピン・サマール島で流れているようです。日本の慰霊団からの情報です。指示を仰ぎたく」
厚生労働省は、戦没者の遺骨について、発見現場の周辺に遺留品などがあって遺族が推定できる場合は、遺族からの申請に基づいてDNA鑑定を行って、関係が明らかになった
小説 フィリピン“日本兵探し” (18)
フィリピン・サマール島のカルバヨグにあるレストラン。そこに、共産ゲリラのジュンは、客であるマリアを招き入れた。
「ここに、その若者はいるのか?」
「アウアウのことですね。すぐに連れてきますよ」
別の男が、奥から小柄な若者を連れてきた。
黄色いヨレヨレのシャツを羽織って、濃いグレーの短パンをはいている。顔には、殴られたような複数の傷があり、左のまぶたは腫れて黒ずんでいた。
最初は、マリアが分からない