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あなたへ。

いつかの花火を想って、手紙を綴ります。


発電機と揚げ物の香りが充満する路地を横目に、人混みを縫って歩く。「あゝ夏だな」と心の中で呟いた。

仕事終わり、近くで祭りがあるということで1人歩いていた。目的は花火。

道を歩きながら打ち上げの時刻まで時間を潰す。

今年の初花火は手前にある木々に遮られた。
まあ僕らしいと言えば僕らしい幕開け。

そんな僕を横目に夜空に花が咲いていく。

この花火はいったいどんな表情で僕たちを見ているんだろうか。
考えてもどうしようもないことを反芻しながら花火を眺める。

近くの家族から、「あ、私このタイプ好き!」という声が聞こえてきた。その時、花が開いてからジュワジュワ〜と追撃がある花火が好きだと言う君の笑顔を思い出した。1人見上げる花火はどこか寂しくて、君と一緒に見れたらな、なんて思いを馳せる。

つい昨日、燃え殻さんの『ブルーハワイ』を読んだ。そこに書いてあった「花火って意外とすぐ飽きるよね」という言葉を思い出す。

強ち間違いではないのかもしれないと思ってしまった。


1人で見る花火は。


君と一緒にいられたらそんなこと思わないだろう。来年の夏は隣で夜空を見上げられたらいいな、と思う。

外はもう秋の顔をし始めていた。

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