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子どもと「何をして遊ぶ」のが、親として正解なのか?

元テレビ局のアナウンサーで、NHKの「すくすく子育て」の司会も務めた天野ひかりによる連載です。 今まで5万人以上から相談を受けてきた親子コミュニケーションのプロが、実際によく相談される悩みをどうやったら解決できるか、自己肯定感を育てる会話のコツをお話します。

最近「子どもと何をして遊んであげたらいいのでしょうか?」というご相談が、立て続けにありました。
また、「子どもがちゃんと遊べるようになるのは何歳からですか?」というご相談も時々いただきます。
みなさんは、お子さんとどんなふうに遊んでいますか? そもそも遊ぶ時間なんてない……!という方も安心してくださいね。
今回は、子どもと遊ぶことについて考えてみたいと思います。まずは次のマンガを見てみましょう。

用意万端!でお母さんは遊ぼうと思ったようですが・・・。

■子どもには、子どもの都合がある

このマンガのように、やるべきことをちゃんと終わらせてから「さあ、遊ぼう!」という気持ち、よくわかります。「オンとオフを使い分けましょう」「メリハリをつけて生活しましょう」とよく言われますからね。
 
ではこの会話、何がNGなのでしょうか。
 
「〇〇しなさい!」と指示しているところでしょうか?
このnote連載で、親が指示して子どもができたとしても、あまり意味がないことをお伝えしているので、まさにその通りなのですが、
もっと大きい問題は、「親が主になって、決めている点」です。
 
起きる時間、ご飯を食べる時間、お片付けする時間、遊ぶ時間……。
親のスケジュール通りに進むと親は気分がいいし、逆に、思うように進まないとイライラしますね。
親が決めてサクサク進めなければ、いつまで経っても遊ぶ時間なんて取れないし!と思う方も多いでしょう。
 
でも、子どもには、子どもの都合があります。
 
起こされたらパッと起きられる日もあれば、もう少しママとスキンシップしていたい日もあるし、お布団の温もりに包まれていたい日もあります。
 
今すぐお腹を満たしたい時もあれば、初めての料理をじっと観察したり、指で感触を確かめたくなったり、香りの違いを比べたり、スプーンで潰すことが面白くて何度もやりたい時もあります。
 
つまり、何気ないお片付けの時間や着替えの時間も、子どもにとっては自分の知的好奇心を追求している時間。親にとっては何てことない日常生活も、子どものフィルターを通すと、まったく別の世界が広がっていると考えてみてください。
 
親からすれば、遊んでいる、ふざけているように見えるものが、のちの学習につながるのだとすれば、やはり子どもが決める遊びを尊重できるのがいちばんです。
それを踏まえてOKマンガを見てみましょう。

日常の中に子どもが楽しく成長する時間はたくさんあるようです。

■遊びの正解は、子どもの中にある

起こしているのか、一緒に遊んでいるのか、わからない時間になりましたが、お姉ちゃんも怖い夢から元気になりました。弟も、起こされたというより、自分から起きたと思えたでしょう。
起こして、その後、追いかけっこをして遊んでしまったので、結果、親が思う遊びの時間は取れなくなったかもしれませんが、子どもは自己肯定感を育てながら、生活の中で自分のやりたいことや、知りたいことを親と一緒にやり遂げています。こちらのほうが大事です。
 
生まれて間もない時期は、「寝ているだけなので、とくに遊びもできず心配になります。親として何かやるべきことはありますか?」というご相談もあります。
心配しないで大丈夫です。
 
確かに、親が思い浮かべるような遊びはできないのですが、
人生でいちばん脳が発達している時期なので、五感がフル稼働するような声をかけて、反応が1番良いことを遊びにして楽しみましょう。
 
例えば、「天井に光が映ってるね」「虫がリンリン鳴いてるね」「毛布はふわふわで気持ちいいね」などなど。
 
子どもが毛布に興味を持てば、毛布でそっとほっぺやおでこ、耳を撫でたり、手に握らせたり、放したりしてみましょう。毛布に飽きたら、タオルやガーゼ、ぬいぐるみなど、異なる触感を楽しむ遊びを繰り返すのもいいですね。
 
音に興味を持てば、ガラガラや拍手、唇を震わせて音を立てたり、水道の流れる音や空き箱を叩いて音を出したり、叩く箱の大きさによって音の違いを発見したり、グラスにお水を入れて音階を楽しんだり……。無限に遊びは広がりますね。
 
これが遊びであり学習です。
おもちゃや道具があっても、なくても、年齢も関係なく、何人でも遊べます。
遊びは、子どもの中にあるのですね。親はそれを引き出すお手伝いをさせてもらうだけです。

■親がほんの少し工夫をしてみる

親が「さあ、遊びをしましょう」とやらせるのではなく、
子どもが興味を持ったことに、親が工夫を加えて遊びに変えてみる。そして一緒に楽しむ。そんな習慣を、生まれた時から作っていけるといいですね。
 
子どもの興味をどう広げたらいいのかわからない場合は、まずは、子どものしていることを真似することから始めてみてください。

今日のコミュポイント
「遊びをさせるのではなく、子どもの興味を遊びに変えて楽しもう」

マンガ:とげとげ。

執筆:天野ひかり

上智大卒。テレビ局アナウンサーを経てフリーに。NHK「すくすく子育て」キャスターの経験を生かし、親子コミュニケーションアドバイザーとして 講演や企業セミナー講師を務める。子どもの自己肯定感を育てるため自身で立ち上げた「NPO法人親子コミュニケーションラボ」代表理事、一般社団 法人グローバルキッズアカデミー主席研究員。主な著書に『子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ』(サンクチュアリ出版)や『賢い子を育てる 夫婦の会話』(あさ出版)などがある。