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なぜ抽象画にするの?言葉の限界を突破するグラフィックで「意味を探索」する理由

Service Design Camp2024で、グラグリッドは「意味を探索するビジュアライズ実験〜抽象画で意味を描こう!〜」というワークショップを実施しました。その中で「抽象画で意味を描く」ワークがあったのですが、多くの反響をいただきました。
そこで、今回は、なぜ抽象画で考えるのか?その理由に迫っていきたいと思います。


「意味を探索する」ことは
デザインの重要な活動のひとつ

ワークショップレポートでも解説されていますが、このワークの大きな目的は「意味を探索する」ことにありました。
広義のデザインには、表現したり作ったりするだけけでなく、リサーチをしたりコンセプトをつくったりすることも含まれます。その中で「本当に大事なものは何か?」「この文脈で重要視されていることは何か?」「この人にとって大事な価値観は何か?」というように、その文脈にあった意味を見つけ出すことがとても重要です。

ワークショップの狙いは、固定観念を壊すような「意味の探索」の体験をすること

より、本質的な意味を見つけ出すために、新しいアプローチとして抽象画を用いる方法が実験的に行われたということになります。

なぜ抽象画をもちいるのか、理由を聞いてみた

意味を見つけ出すために抽象画を用いると聞いて、「なぜ抽象画なんだろう?」と疑問に思った方も多いと思いいます。

私、小森も、実は最初は理解できませんでした。とてもおもしろいと感じると同時に、その理由をもっと知りたいと思い、ワークショップを企画したグラグリッド三澤さんにインタビューしてみました。そこで、見えてきた3つのポイントをまとめます。

理由1:言語を超えた意図を表現できる

「意味の探索で抽象画を用いる3つの理由」その1は、言語を超えた表現ができること、です。

言葉での表現には限界がある

ここでの意図とは、自分は「こう考えている」と思っていること。
きっと他者からどう思っているの?と問われれば言葉で自分の考えや感情を他者に伝えることができるでしょう。それは、予め意図を持っていたから。しかし、意図が明確でない場合はどうでしょう。

「なんと言えばよいのか分からないけど・・・」

と、うまく言葉にならないことも多いのではないでしょうか。自分にとって未知のものを伝えようとする時はなおさらです。

この言語化を支援してくれるのがグラフィック、しかも今回のワークショップで用いた「抽象画」なのだと気づきました!

抽象画は曖昧なコトを表現しやすく、意図や意味を後付けもしやすい

抽象画は「なんと言えばよいのかわからない」ものを表現していくことができます。何らかの形や色を描き、見えるようにしながら探していくことができます。

そして、描き始めは自分が何を描いているのかわからくても、表現されてきた絵を見ながら、後から意図や意味を見出していくことができます。

「こういう意図が、あったように思う。」
「あの時こんな風に感じていた、と今になって気づいた。」

色や模様をメタファーとして用いることは、その人のもつ経験や文脈を紐付け、引っ張り出すことができるのだと思います。これは、抽象的で視覚的な特徴をもつ、抽象画の特徴とも言えるのではないでしょうか。

言葉で表現すると、その表現の正しさに注目していまいがちなビジネスマンにとっては、個々の感性に注目していくことができる、面白いアプローチだと感じました。

抽象画は意図が先になくても表現しやすく、描いている最中や描き終わってから、「何を表現したかったのか」、「この色や模様の意味は何だったのか」と考えることができる。


理由2:高速でプロトタイピングができる

いろんな画材を使って、描いたり擦ったり、試行錯誤を楽しむ参加者

「意味の探索で抽象画を用いる3つの理由」その2は、高速でプロトタイピングができることです。

曖昧な感覚を可視化しながら具現化させる

参加者は、目の前の画材を手にとっては、適な色、最適な模様を、探しながら描いていました。
「もっと、ぱ〜っとする色ないですかね?」
「なんかこの表現って違う気がする…」
色を重ねてみたり、手でこすったり、点を打ってみたり。
画用紙の向きを変えてみたり、紙を貼ってみたり。
納得がいくまで、表現を探究している姿が印象的でした。

言語にならない感覚を表現するために、何度も何度も試行錯誤しながら、表現を探究していたのです。まさに超高速でプロトタイピングしているような状態です。
これができるのも、変化を許容できる、抽象画の特性ではないかと考えました。

理由3:思考の枠組みを解き放ち、
直感力や想像力を最大化できる

「意味の探索で抽象画を用いる3つの理由」、最後は、思考の枠組みを解き放ち直感力や想像力を最大化できることです。

思考するよりも、まず描いてみることから始める

体を使うことで思考を手放す

抽象画は、意図を手放した状態で、先に体を動かして表現することを可能にします。色や模様で表現するときに、思考を手放して、自分の感覚と身体感覚つなげて、「あ、この表現自分の感覚に近いかも」という状態を探っていくことができます。

つまり、考えるより、目の前のものに体の感覚を使って体の反応を感じながら向き合うことで、自分の直感を最大化させることができるのです。
身体性を使うときに、この表現にはこんな意味があったのか、と後から意味が紐づけられるのです。

未知のものと向き合うときは体を先に動かす

すでに知っているものは、言葉で考えることができます。しかし、サービスデザイナーのように未知のものと向き合うことが求められる人々や、そういった場面では、体を先に動かすことが重要です。そうすることで、思考を超えたところで、体からの本能のような「こうした方がいい」という反応が返ってきます。

対話によって気づきを得る

対話によって描いたものに意味づけをする参加者

身体性を使って、まず体を動かして抽象画に表現していくことで、自分の気づかない深いところまで表現することが可能になります。
そして、その場にあるものを使って瞬発的に抽象的に表現することで、描いているものに無意識に意味づけをしていることがあるのです。

しかし、描いた本人が気づかないぐらい本当に深いところまで潜って表現しているので、それだけでは表現した全てのものの意味を明らかにすることは難しく、対話によって初めて、そこに込めた意味を発見することができます。

「なんでこの色にしたの?」
「難しい問題に向き合うときのワクワクした気持ちとモヤモヤした気持ちを表しています。」

対話をすることで、そこにどんな意味があったのかを考えていき、自分でも気づかなかった意味を掘り起こしていくことができるのです。

未知のものと向き合える抽象画の可能性

この、抽象画を用いた意味探索のワーク「意味絵画(イミカイガ)」では、言語では表せない曖昧な感覚を拾い上げ、ひとつの抽象画をつくりだしました。そして、この参加者が描いた絵の色や形の一つひとつについて、対話を通して深層心理を表出化させることで、自分たちも気づかなかった意味を発見することができました。これは、まさに、未知のものを探索する思考法とも言えると思います。

無我夢中で表現を探究する姿

何よりも、無我夢中で描き、試し、驚き、喜んでいる参加者のみなさんは、発見を手にして輝いた顔をしていました。

ビジネスの世界ではどうしても効率が求められ、ロジカルさや効率とは対極だと思われる抽象画のようなものが遠ざけられてしまいます。しかし、新しい意味を形成していく状況でこそ、枠にとらわれず、自由に世界を探求し、それまで気づかなかった意味を発見していくことが必要となると思います。

無意識につくってしまっている制限を外して、子どものような自由さを発揮させていくためには、もっともっとアートのちからが必要だと思いました。

著・小森 / 支援・三澤


■関連リンク
サービスデザインキャンプ2024

グラグリッドのクリエイティブ人材開発


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